800年前の景観とほぼ近い姿で奇跡的に守られてきた岩手県一関市に実際に住む14歳のユナ。おばあちゃんの葬式で、臼と杵でつく昔ながらの方法でどうしても餅をつきたいと言い張るおじいちゃん家族はそんな面倒なことをしなくても、餅つき機で同じように美味しいものができると説得してみるが頑なに餅をつくという。ユナは敏感におじいさんの心の機微を感じてそっと寄り添う。生徒の減少から中学校の閉校が決まり、最後の1年を終えると学校もなくなる。ユナの世界も刻々と変化をしていき、自分の周りから色々なものがなくなり、離れていくことへの不安を抱えていく。この土地と人々によってまれた言葉、伝統、そして感情をありのままに残すため、限りなくノンフィクションに近いフィクションというハイブリットな形で製作し、出演者は全員住民という本作は、思春期の主人公が放つ「いま」を生きるみずみずしさが心を揺さぶり、深く強い文化と歴史の残る土地での生活は我々に大切な「何か」を問いかける。
小松真弓