埼玉県秩父の山深い村に暮らす小林ムツさんは、60歳を過ぎた頃から、夫の公一さんと共に丹精込めた段々畑をひとつまたひとつと閉じ、そこに花を植えてきた。毎日コツコツ、その数、1万本以上。ムツさんは言う。「長い間お世話になった畑が荒れ果てていくのは申し訳ない。せめて花を咲かせて、山に還したい」「いつか人が山に戻ってきたとき、花が咲いていたらどんなにうれしかろう」暮らす人が年々いなくなるその村は、春、色とりどりの花に包まれるように。でもやがて、ムツさんにつらい出来事が――。NHKの人気ドキュメンタリーシリーズ「秩父山中 花のあとさき」の映画化。
長谷川勝彦
百崎満晴