東京都豊島区にある木造アパート「トキワ荘」。そこには“漫画の神様”手塚治虫が住み、日夜、編集者たちが彼のもとに通いつめていた。向かいの部屋に住む寺田ヒロオは、その様子を眺めながら、こつこつと出版社への持ち込みを続けていた。やがてトキワ荘を去った手塚治虫と入れ替わるように、若き漫画家の卵たちが次々に入居してくる。藤本弘/藤子・F・不二雄、安孫子素雄/藤子不二雄 A、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、森安直哉、鈴木伸一。また近所に住むつのだじろうもトキワ荘に入り浸っていた。揃って『漫画少年』の投稿仲間だった彼らは、寺田を中心に“新漫画党”を結成。貧しい生活のなか、互いを励ましあい、漫画の未来について熱く語り合う日々が続く。なかでも一番年上の寺田は兄貴分的存在として若き彼らを静かに見守り、その視線は、赤塚の友人であり自分とはまったく異なる作風のつげ義春にも向けられていた。そんなある日、『漫画少年』の出版社、学童社が突如倒産。これを機に、8人の仲間たちの進む道も少しずつ変化していく――。
市川準