施設で介護士として働いている波子の前に、幼い頃自分を虐待し捨てた母親が認知症となって現れる。過去の記憶を全て失った母を介護する日々が始まる。現在と過去が交差する毎日に、波子の心は少しずつ疲弊していく。そんな波子を同僚の尊が優しく支えるが、波子は心を閉ざしている。そんな中、華絵の義理の娘聡子が病室にやってきて、華絵に離婚届にサインするよう迫る姿を見てしまう波子。咄嗟に聡子の暴力から華絵を守ろうとし、波子は母に愛されたいと思っている自分の気持ちに気づく。波子は尊に支えられながら華絵の介護を続ける。尊に愛される事で波子の心は少しずつ癒されていく。しかし華絵が突然施設からいなくなってしまう。必死で探す波子。歩道橋の上で寂しそうに立っている華絵を見つけ、波子は思わず自分の家に連れて帰ってしまう。華絵が幼い頃の波子の写真を今でも大切に持っている事を知り、波子は泣きながら「おかあさん」と呼びかける。その瞬間、華絵の記憶が過去に戻ってしまう。「あんたなんか産まなきゃ良かった」と言われ、波子はカッとなって華絵の首をしめる。波子はその場から逃げ出すが、脳裏にたったひとつだけの母との記憶、幼い頃、たった一度だけ母と手を繋ぎ海辺を歩いた幸せな記憶が蘇る。
副島新五