若くして、海辺の町にある旅館・中島荘を営む中島奈々。中島荘が休業中の9⽉上旬、ひとりの⻘年・藤井俊太郎が「どうしても泊めてほしい」と訪ねてくる。彼は⼀年前に愛する⼈を失い、その恋⼈が亡くなる直前に、この旅館に宿泊していたと語る。奈々は亡くなってしまった俊太郎の恋⼈のことがすぐに思い当たり、彼⼥について、「笑顔が印象的でした」とふり返る。俊太郎は恋⼈の⾜跡を辿り、彼⼥の死を理解するために、昼も夜も町に海にと彷徨い、歩き回る。そんな俊太郎の姿を⽬にしていた奈々は、この⼟地の案内役を買って出て、いつしか彼と⾏動をともにするようになり――。
井樫彩
井樫彩