1948年、『ニューヨーカー』誌上に発表した短編「くじ」が⼀⼤センセーションを巻き起こした後、新しい⻑編⼩説に取り組んでいたシャーリイだったが、なかなかスランプから抜け出せずにいた。⼩説の題材になったのは、ベニントン⼤学に通う18歳の少⼥・ポーラが突如として消息を絶った未解決の失踪事件。同じくベニントン⼤学教授である夫のスタンリー・ハイマンは、引きこもって寝てばかりいるシャーリイの機嫌をとって執筆へ向かわせようとするもうまくいかない。そんな⼆⼈のもとへ⼀組の夫妻が居候としてやってくる。⽂学部でハイマンの補佐として職を得たフレッドは、妻のローズと共にバーモント州の学園都市へ移住を計画していた。新居が⾒つかるまでの間、無料で部屋と⾷事を提供する代わりに家事や妻の世話をしてほしい̶̶スタンリーに半ば強引に⾔いくるめられた夫妻は、何も知らずにシャーリイとスタンリーと共同⽣活を送ることに。当初は他⼈が家に上がり込むことを⽑嫌いしていたシャーリイだったが、ひどい扱いを受けても懲りずに⾃分の世話を焼くローズを通じて、次第に執筆のインスピレーションを得るようになる。⼀⽅、ローズはシャーリイの魔⼥的なカリスマ性に魅⼊られ、いつしか⼆⼈の間には奇妙な絆が芽⽣えていく。しかし、この⾵変わりな家に深⼊りしてしまった若々しい夫妻は、やがて⾃分たちの愛の限界を試されることになるのだった…。
ジョセフィン・デッカー