2023年10月7日、イスラエルに「壁(分離壁)」で封鎖されたパレスチナ・ガザ地区からイスラム組織・ハマスが越境攻撃を行い、それに対してイスラエル軍による「壁の向こう」へのすさまじい報復攻撃。死者は5万人を超え、そのうち1万8千人以上が子どもという惨状で、停戦がいまだ見えない中、その数は増え続けている。外国人ジャーナリストがガザに入ることが困難な中、翌年7月、同じく「壁」で分離されたパレスチナ・ヨルダン川西岸地区に、ボーン・上田記念国際記者賞受賞歴もある中東ジャーナリスト・川上泰徳が取材に入った。パレスチナ側のベツレヘムからヘブロンへ、そして今年3月に米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』でも舞台となったマサーフェル・ヤッタにも入り、イスラエル軍による攻撃・破壊やユダヤ人入植者の暴力の激化を目の当たりにする。一方、イスラエル側では国民の多くが「壁」の外側の惨状に目を向けない中、兵役を拒否する三人の若者がいた。日本人が見た、“壁”の外と内の現状は―。現地の人々の日常を生々しく映し出し、今起きているイスラエルとパレスチナの戦争の背景が見えてくる。
川上泰徳