2023年7月、インドネシアのジャカルタ郊外に「残留日本兵歴史資料館」が開館した。その活動に関わる一人が、元日本兵三世のマリオ黒岩。彼らは今も「侵略者の子」と呼ばれている。1942年、日本軍はオランダ領東インド(現在のインドネシア)を占領。日本の占領政策によってインドネシアの人々は大量に労働力として動員され、飢餓や病気で多くの命が失われた。マリオの祖父・黒岩通は戦時中、スマトラ島北部のアチェで特別警察隊長を務め、抗日運動に関わる住民を弾圧し、恐れられる存在だった。しかし日本の敗戦後、独立を認めない連合軍が再びインドネシアへ侵攻すると、黒岩は立場を一転させる。自ら部隊を率いて独立戦争を最前線で戦い、4年半に及ぶ戦いの末インドネシアは独立を果たした。その後アチェで結婚し、自身の名をモハメド・アリと名乗り、二人の子どもに恵まれた。しかし1955年、黒岩は突如、妻と子どもを残して日本へ帰国。息子のヘンドリは永い間棄てられたという思いを抱えながら暮らしてきた。だが約80年の時を経て、これまで知ることのできなかった史実を知るべく、マリオが動き出す。
小西晴子