表現の迷宮を彷徨うひとりの舞台女優を主人公に、現代を生きる人間の本質を鮮烈に描き出した、至高のアート・ドキュメンタリー/ドラマ。タイトルの「遠近」が意味するもの。それは、自分からはるか遠くに広がる果てしない「外の世界」と、自らの深淵に潜む「内なる世界」の交差点。主人公の女性は、舞台というフィクションと現実のセックスワークという職業の狭間に立ちながら、その両方の世界を鋭敏に感じ取り、ゆったりと抱え込んでいく。飾らず、偽らず、自らの足で大地を踏みしめて生きるその姿には、現代を生きる女性たちの心を震わせる、しなやかで逞しい生命力が宿っている。
大浦信行