文化大革命の影がまだ色濃く残る1978年の冬。中国北部の小さな町・西幹道に住む兄弟の前に、北京からひとりの少女が舞い降りた。少女の踊る姿を見て、18歳の兄は恋心を、11歳の弟は憧れを抱く。工場での労働をさぼり、外の世界への夢想を強くする兄、いつの日か絵の展覧会を開くという夢を見る弟。そして、肉親から遠く離れ孤独な心を持つ少女。やがて兄と少女は心を触れ合わせるようになる。だが、兄は兵役に応募。そして出征の日、父や母が見送る中、駅に少女の姿はなかった。列車が走り出し、兄が窓から見つめた場所とは…。中国の小さな町を舞台に、少年・ファントウの人生を変える鮮烈な記憶を、美しい冬の風景と共に繊細に描き出した秀作。
リー・チーシアン