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オスカー監督ダニー・ボイルが『スラムドッグ$ミリオネア』で感じた運命とは——?

インドのスラムで育った少年が、「クイズ$ミリオネア」に出演し、億万長者まであと1問というところまでたどり着く。どうして彼が数々の難問の答えを知りえたのかをサスペンスタッチで描いた感動作『スラムドッグ$ミリオネア』。映画の方もわずか10館での上映から始まり、批評家の高評価や口コミによって、興行規模を拡大すると共に数々の映画賞で絶賛され、本年度のアカデミー賞8冠獲得という、まさに主人公の少年と同じ歩みをたどった。監督のダニー・ボイルが作品に込めた思いを聞いた。

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『スラムドッグ$ミリオネア』 ダニー・ボイル監督
『スラムドッグ$ミリオネア』 ダニー・ボイル監督
  • 『スラムドッグ$ミリオネア』 ダニー・ボイル監督
  • 『スラムドッグ$ミリオネア』 -(C) 2008 Celador Films and Channel 4 Television Corporation
  • 『スラムドッグ$ミリオネア』 ダニー・ボイル監督
インドのスラムで育った少年が、「クイズ$ミリオネア」に出演し、億万長者まであと1問というところまでたどり着く。どうして彼が数々の難問の答えを知りえたのかをサスペンスタッチで描いた感動作『スラムドッグ$ミリオネア』。映画の方もわずか10館での上映から始まり、批評家の高評価や口コミによって、興行規模を拡大すると共に数々の映画賞で絶賛され、本年度のアカデミー賞8冠獲得という、まさに主人公の少年と同じ歩みをたどった。監督のダニー・ボイルが作品に込めた思いを聞いた。

物語の始まりから、主人公・ジャマールの生まれ育ったスラムの姿がリアルに映し出されるが、監督は“疾走感”の重要性を口にする。
「インドがあってムンバイがここにあって、という感じで海外の観客に説明するような形で描きたくはなかったんです。最初からみなさんをスラムにお連れし、そこに暮らし、縦横無尽に走り抜ける子供たちの視点でスラムを見てもらえるようにしました。ただ、スラムを描くからといって観客が“貧困”という点にとらわれ過ぎないようにもしました。もちろん、映画の中で貧困は描かれますが、決してこの映画は貧困をテーマにした作品ではないのです」。

インドのムンバイでの撮影の様子や、そこで心に残った光景を尋ねると目を輝かせながらこう語る。
「元々、僕は都市という環境が大好きなんです! ムンバイもいろんな要素が詰まったカオスがあって素晴らしかったし、映画ではまさにそこを捉えようとしました。一番大きなスラムは、水を運ぶ巨大なパイプラインの脇に形成されているんです。それは視覚的に驚嘆するような光景でした。染料を砕く男たちがいて、体中に青や緑の染料が付いていて…ずっと見ていたくなるような、ハッとさせられるものがありました。その美しさに目を奪われたからこそ、この光景は我々にとっては特別であっても、ジャマールにとっては日常にあるものなんだということを肝に銘じて撮影をしました」。

劇中、ジャマールの少年時代とクイズ番組を放送するTV局と、2つのシーンでトイレが登場する。そういえば、監督の名を世界に知らしめた『トレインスポッティング』でも印象的なトイレのシーンがあるが…。
「イギリスの映像作家はトイレに固執するんですよ(笑)、理由は知りませんが。ジャマールの少年時代のシーンでは、トイレの“中身”はチョコレートとピーナッツバターをミックスさせたものを使いました。甘くていい匂いがするんですが、臭い演技をするように(ジャマール役の)アユーシには言いました(笑)。でも、あのシーンを撮り終わって以来、二度とあの子は僕のことを以前のような目で見てくれなくなりました(笑)。ただ、あのシーンはジャマールの夢に向かって突き進む性格が端的に現れている場面だと思います」。

“運命”というキーワードが作品を通じてテーマとして貫かれている。いかようにも取れる言葉ではあるが、監督にとって“運命”が意味するところは?
「定義づけするのは難しいですね。今回の撮影前は運命というものは、人間を受身にさせるものとして、ネガティブに捉えているところがありました。でも、そうではないんです。インドの人々を見て思ったのは、彼らは運命を受け止めることで変化が生まれると考えているということ。時に良いカードが配られることもあれば、悪いカードが手許に来ることもあるんだ、と。実際、撮影で良くないことが起きても、長期的に見たら良い方向に転がったりということがありました。理解不能ではあるけれど、ありのままを受け入れる、ということは学びましたね」。

まさに今回、ダニー・ボイル、そして『スラムドッグ$ミリオネア』は運命を引き寄せたと言えそうだ。

第81回アカデミー賞特集
http://www.cinemacafe.net/fes/academy2009/
《シネマカフェ編集部》

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