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尾野真千子インタビュー 「ここで隠したら一緒になれない気がした」と“覚悟”明かす

空き巣に入った家で、カップルを衝動的に殺した死刑囚。彼の元に面会に訪れる一人の女性。彼女は被害者の男性の婚約者であり、被害者男性は別の女性との逢瀬の最中に殺害されたのだった。死刑囚と婚約者を殺された女性。その2人の間に愛が芽生えたら——。『真幸くあらば』はまさに“究極”と呼ぶにふさわしい、純愛を描いた作品。タイトルはかつて謀反の罪で捕らえられた有間皇子が刑死間近に詠んだという歌から取られている。自分の婚約者の命を奪うと同時に、その不実をも明かした死刑囚に心惹かれていくヒロインを演じたのは尾野真千子。深遠なる感情表現と共に、体を張ってこの純愛を体現した。一見、ありえないと思えるこの2人の関係を、演じた尾野さん自身はどのように捉え、表現したのか?

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『真幸くあらば』 尾野真千子
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空き巣に入った家で、カップルを衝動的に殺した死刑囚。彼の元に面会に訪れる一人の女性。彼女は被害者の男性の婚約者であり、被害者男性は別の女性との逢瀬の最中に殺害されたのだった。死刑囚と婚約者を殺された女性。その2人の間に愛が芽生えたら——。『真幸くあらば』はまさに“究極”と呼ぶにふさわしい、純愛を描いた作品。タイトルはかつて謀反の罪で捕らえられた有間皇子が刑死間近に詠んだという歌から取られている。自分の婚約者の命を奪うと同時に、その不実をも明かした死刑囚に心惹かれていくヒロインを演じたのは尾野真千子。深遠なる感情表現と共に、体を張ってこの純愛を体現した。一見、ありえないと思えるこの2人の関係を、演じた尾野さん自身はどのように捉え、表現したのか?

まずは尾野さん自身について質問。1997年のデビュー作『萌の朱雀』(河瀬直美監督)以来、本作を含め人間の“命”、“生きる”ということをテーマにした作品への出演が数多くみられるが、作品を選ぶ上での本人の意思なのだろうか?
「いや、実は私自身というわけではないんです。あえて言うなら事務所や周りのみなさんがそうした作品をすごく大切にしていて、私のところに持ってきてくれる。それはすごく幸せなことですし、人の生や死というとても大切なことに向き合える作品に出られるのは嬉しいです。私自身で言えば、やはり原点が『萌の朱雀』にあるのは確かです。どこかで道を外れたら、『原点に戻ろう』という自分がいますね」。

では、本作『真幸くあらば』について。最初に脚本を読んで、出演すると決めるまでの経緯を尋ねた。
「脚本を読んで、すぐに『やります』とは言えなかったです。やろうか? どうしようか? できるか? できないか? かなり悩みました。死刑囚という存在にどう向き合うのか。しかも、そこで恋に落ちる…。どう向き合えばいいのか全く分からなかった。セリフなんて言ってしまえばいいけど、そのセリフを言うためにどんな顔をしたらいいのか? そこですごくあやふやな感情でいたんですが、御徒町監督に会って、私たち俳優の気持ちをすごく大切にしてくれる方で、この人になら付いていけるかも、という気持ちで出演を決めました」。

その御徒町監督の現場作りや演出は、これまで経験したことのないものだったと明かす。
「本読みの段階で、脚本は横に置いておいて、私と監督と(死刑囚役の)久保田(将至)くんの3人で気持ちを作るレッスンをしました。例えば、場所は喫茶店で、私と久保田くんは昨夜初めて会ったばかり、という状況を与えられて自由に演技してみたり。いま、持っている気持ちをどうやって演技として引き出し、表現するかということを練習したんです。本番でも、監督は自分がOKやダメ出しをするのではなく、私たちに聞いてくるんです。『どうだった? 互いの気持ちは繋がっていた?』って。こっちが『できてました』と言うと、『じゃあOKだね』とそこでOKが出る。ある意味、すごく怖かったです」。

そんな中で尾野さんが薫という女性を自分のものにした瞬間は? そう尋ねると、クスリと笑って、柔らかい口調でこんな答えが返ってきた。
「私は普段から、あまり考えてないんですよ(笑)。現場に入らないとよく分からなくて…。例えば、リハーサルで何もないところで演技しても何の感情もわいてこない。現場で相手と向き合って、ようやく相手の感情が見えてきて『こんなこと考えてるのかな』という気持ちになって涙や笑いがこみ上げてくる。今回も、“掴んだ”のは現場。久保田くんは今回が映画初主演で、どういう演技してくるのか分からなかった。『こうしてくるかな?』とか思ったら、全然違うことしてくる。そういうのがドキドキする瞬間ですね。順撮りだったんですが、久保田くんが徐々に変わってくるのが目に見えて分かるんです。こっちが鳥肌立つくらい。そこに気持ちを入れるのはすごくやりやすかったです」。

そして、ラスト近く。差し入れの聖書への書き込みで互いの思いを伝え合った2人が、遠く離れていながらも結び付き、交わるという場面。尾野さんは月の光の下にその美しい肉体を露わにする。最終日に撮影されたというこのシーンについても語ってくれた。
「私自身、このシーンがあることはもちろん知っていたんですが、“覚悟”を決めたという瞬間はなかったです。むしろ、ずっと不安で考えないようにして、目の前のシーンに集中していましたね。当日は、普通なら、体を隠す“前張り”というのをするんですが、私はできなかったんです——。ここで隠してしまえば、“彼”にも隠しているような気がして、そうしたら一緒になれないように思えて『隠しません』と言って、生まれたままの姿で撮影に臨みました。なりきれていたからこそできたんだと思います」。

「普段の私は“女優”じゃないですよ(笑)」、「素の自分を知られるのは恥ずかしいですね」と屈託のない笑顔で話す尾野さん。スクリーンの中で見せる表情とのギャップに少し驚きつつ、まぎれもなく彼女が“女優”であることをまざまざと感じさせられた。今年、20代最後の年を迎える彼女のさらなる活躍に期待したい。
《シネマカフェ編集部》

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