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草刈民代「これが始まり」女優として決意新た 『終の信託』で16年ぶり劇映画

その年の日本アカデミー賞で全部門制覇の偉業を達成した『Shall we ダンス?』('96)から16年…

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『終の信託』草刈民代/photo:Ryo Uchida
『終の信託』草刈民代/photo:Ryo Uchida
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  • 『終の信託』 -(C) 2012 フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー
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その年の日本アカデミー賞で全部門制覇の偉業を達成した『Shall we ダンス?』('96)から16年。同作で鮮烈な女優デビューを飾った草刈民代が、主演最新作『終の信託』(ついのしんたく)で劇映画の世界に舞い戻った。銀幕デビュー、映画監督・周防正行との結婚、バレリーナ引退という様々な人生の局面を経て、本作でたどり着いたのは「これが女優としての始まり」(草刈さん)という新たなる決意だ。夫・周防監督の最新作でもある本作で、いかに女優・草刈民代は誕生したのか…。草刈さん本人がキャリアをふり返りながら、その秘話を紐解いてくれた。

舞台からスクリーンへ

映画は終末医療の現場を舞台に、ある重病患者からの“信託”を受けたエリート女性医師・綾乃(草刈さん)が下した決断と、それを罪とみなす検事の攻防を緊張感たっぷりに描くヒューマンドラマ。患者を演じるのは『Shall we ダンス?』でも共演した役所広司。綾乃を取り調べる検事に大沢たかお、綾乃の不倫相手に浅野忠信という実力派俳優が起用され、スクリーン上で草刈さんとの“真っ向勝負”に火花を散らす。

医師として、女として、そして被疑者として…。多面的な表情を見せる綾乃を演じる上で、草刈さんが最も大切にしたのは「切実さと誠実さ」だったという。「彼女の生きてきた姿勢というものが見えないと、クライマックスの取り調べシーンに繋がりませんからね。変に芝居がかっていても、観ている人に伝わらないと思いました。妥協をせず、誠実に役や自分自身に向かうしかなかったです」。あえて16年前の『Shall we ダンス?』と比較すれば、「当時はガムシャラに脇目も振らず一直線、みたいな(笑)。今回はそれだけでは演じきれない役だし、全てのシーンで必要なテンションや表現のチョイスを考え抜いた。身体的な疲れよりも、神経的な疲れが強かったですね」と自己分析する。

バレリーナとして18歳で主役デビューを果たし、国内外で活躍した後、2009年に自らプロデュースした公演「Esprit~エスプリ~ -ローラン・プティの世界-」を最後に引退。その後は、NHK大河ドラマ「龍馬伝」などに出演したが「女優としてはちょっと前まで、トウシューズを履いていたのにな…って、ちょっと居心地が定まらない気持ちもあった」のだとか。その分、「今回は主演として作品と向き合うので、ただただ演じることに集中すれば良かった。だから、16年ぶりの劇映画という意識はあまり関係ないんですよ」とも。そんな持ち前のしなやかさは、綾乃を悲劇のヒロインではなく、等身大の女性として輝かせている。

夫、監督としての周防正行

輝かせる…と言えば、やはり忘れてはならないのが夫・周防監督の存在だ。「旦那さんの前で演技すること? それが全然抵抗がないんですよ」と屈託なく笑う草刈さん。「そもそも出会ったのが映画でしたし、家では台本を読む相手もしてくれるので、いわゆる“構え”はない。『仕事を家庭に持ちこまない』みたいなルール決めも一切ないし、撮影準備期間は家での会話も映画中心だった」と夫婦生活の一端も明かしてくれた。

もちろん“映画監督”周防正行への信頼感も絶大だ。「本当に意味のある映画を作ったと思います。この映画を観て、私自身も生きることの切実さを感じる機会になったし、一人一人が自分なりの意見や視点、物事を判断する尺度をもたないと、社会的な“ひずみ”がどんどん増してしまうことを気づかされました」。綾乃が下す決断に関しても「本来、旅立つ人の意志が尊重されることが理に適っていると思うが、そこに法が介入すると、映画が描くような問題が生じてしまう。その難しさがよく表現されていると思う」と言い、その上で「『Shall we ダンス?』のときに比べて、表現者としての成熟がものすごく作品に表れている」と改めて尊敬のまなざしを注ぐ。

そんな本作『終の信託』を観れば、「これが女優としての始まり」と語った草刈さんの未来にも期待せざるを得ない。「正直、自分なりに『これ以上は無理、これしかない』というところまでやり切りました。でも今後、さらに経験を積めば、そんな思いも変わってくるでしょうし、演技に関する捉え方の幅や判断材料も増えてくるはず」と草刈さん。「自分にできる役柄は、何でも挑戦したいし、良い作品を作りたいという人たちに囲まれると触発されますからね。そんな経験を数多く経験して、表現を広げていきたい」と“女優・草刈民代”に誰よりも期待を寄せる草刈さんだった。

(text/photo:Ryo Uchida)
《シネマカフェ編集部》

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