【MOVIEブログ】9日&10日/ベルリン

最新ニュース

ウィンナー・シュニッツェル
  • ウィンナー・シュニッツェル
9日、土曜日。朝から雪が舞って、今日もいい感じ。チーズとハムとパンとコーヒーを10分程度でたらふく詰め込んで、外へ。週末を迎えてベルリンも本格化ですね。

本日のスタートは、9時からのコンペのプレス上映で、『A Long and Happy Life』というロシアの作品。農地の召し上げに対して戦い、そして敗れていく青年の悲劇を描く物語。冒頭から映画の展開が予想でき、その予想のまま進行していくので、サプライズが少なく、スタイルにも特徴らしい特徴もなく、残念ながらあまり印象に残らない出来。

昼から、付き合いのある映画会社などと連続6件ミーティング。久しぶりに英語をたくさん話すので、なんだか上手く舌が回らなくてもどかしい…(まあ、久しぶりじゃなくてもそんなに回らないけど)。

15時半に上映に戻り、コンペのアメリカ映画へ。ベルリンのコンペは、たまに中途半端なアメリカ映画が入ることがあるけれども、今作のつまらなさはかなりひどい。ちょっと唖然。

続けて17時45分から、「フォーラム」部門で『Circles』というセルビア映画へ。90年代初頭の紛争時に起きたある事件の当事者たちが、その12年後に経験する出来事を語るドラマで、これが典型的な「過去に何が起こったのか」映画。

皆が悲痛な思い出として抱いている12年前の事件の真相が徐々に明らかになっていく構造なのだけれど、要は映画に登場する人物は全員過去に何が起こったかを知っているのに、知らないのは観客だけ。当然、誰にも感情移入できないし、苦悩の過程を共有することもできない。僕は原則として、「過去に何が起こったのか」より「これから何が起きるのか」で興味を引っ張る方が映画の脚本としては正しいと信じているので、その意味では本作は全く受け入れられない(登場人物間に謎はなく、訳が分かっていないのは観客だけというのは、ずるい脚本だ)。

今夜は20時から会食があったので、映画は3本だけ。久しぶりに満腹の夕食(巨大なウィンナー・シュニツェル:写真!)とワインをたくさん頂いて、ぐるんぐるんになってしまい、宿に戻ってブログも書けずに即ダウン。

明けて10日、日曜日。本日は雪はなく、限りなくグレーな空の、典型的なヨーロッパの冬の日。朝のルーティンをこなし、本日も9時からのプレス上映へ。

見たのは、コンペ部門で、『Gloria』というチリの作品。子供はとっくに成人し、ダンナと離婚して久しい中年女性グロリアの孤独と恋愛を描くもの。『グロリア』なんてタイトルを軽々しく付けるとは何事じゃ、とカサヴェテス信者の僕なんかは思ってしまうのだけれど、まあこれは言いがかりというもので、中年(から初老にかけての)女性の恋をリアルに描く作品は世の中にはあまりないので、少し甘目に見てあげたほうがいいのかもしれないな。

きちんとした仕事もあり、自立した熟女(!)として生きるヒロインの心理を丁寧に描いていく手法に好感は持てるものの、グロリアが振り回されることになる恋人の人物描写が雑で、彼女の孤独を引き立てるための取って付けた設定とも思えてしまうのが残念。全体としては、まずまず、くらい。

いや、実は、僕の(決して少なくはないはずの)映画鑑賞記録史上、断トツで最高記録を更新する高さを有する座高の男性の後ろに座ってしまい、傾斜のあまりないメイン会場の1階では、もう致命的で画面が全然見えない。ほとんど彼の後頭部を見ながら(そして全く後ろへの迷惑を気にしない彼の神経を呪いながら)映画を見てしまったので、当然集中力は無いも同然、『Gloria』と僕の相性にとっては残念すぎる運命であった…。

ところで、このプレス試写は審査員も一緒に見ていて、僕の左斜め少し前にティム・ロビンスの姿が。おお、やはりとても素敵だ!

11時から某映画会社のプロモ集を見てから、また12時15分にコンペに戻り、『The Nun(英題。原題はLa Religieuse)』というフランス映画へ。18世紀中盤、家庭の事情もあって半ば強制的に修道女にさせられてしまう10代のヒロインの辛い体験の物語。

豊かに光線を捉える画面が美しく、ヒロインの女優もとてもいいのだけど、何と言っても絶妙なのが途中から登場するイザベル・ユペールで、レズビアン的性向を備えた欲求不満な修道女長役が、あまりにもはまりすぎていて(真面目な映画なのに)もう笑うしかない。いや、笑っていいはずで、これは狙いでしょう。

宗教的な深みにはそれほど踏み込んでいるわけではないものの、崇高な雰囲気が流れることもあって見応えがありつつ、やはりユペールが全て持って行ってしまうので映画の焦点がぼやけてしまうのが難点か。

上映が終わって会場を出ると、ウィレム・デフォーの姿が!彼は審査員ではないはずで、普通に映画を見に来たのだろうか?朝からティム・ロビンスとウィレム・デフォーを間近で見て、ミーハー心に火がついてしまいますね。

続けて14時半からミーティング。

16時から、本日3本目のコンペ作品で、『Vic+Flo ont vu un ours』というカナダ映画。監督は去年の東京国際映画祭で上映した『檻の中の楽園』のドニ・コテ。コテ監督は現在のカナダを代表するひとりと言っても過言ではない才能で、インスタレーション・アート的な作品であった『檻の中の楽園』とはまたがらりと変わって、今回は奇妙なフィクションドラマ。

仮釈放中の女性と、彼女の友人(久しぶりのロマーヌ・ボーランジェ)が経験する不条理とも言えるスリラー的ドラマで、ダークで唐突な展開に唖然とするものの、んー、もうひとひねり欲しかったかな。不穏で不可解な雰囲気作りは抜群なのだけど、期待が非常に高かっただけに、少しだけ残念。この監督は、狙いがはまる時と、そうでもない時とがあるタイプの監督かもしれない。次作が常に楽しみな監督であることは間違いないけれど。

続けて、18時半から、マーケット上映の『Viramundo』という作品へ。ジルベルト・ジルがオーストラリアと南アフリカを訪れる様子を追った音楽ドキュメンタリーで、当たり前だけど、音楽が素晴らしい。映画漬けになっていることもあるのか、音楽がとても染みる…。

次は、20時15分から「フォーラム」部門のアルゼンチン映画で、『La Paz』という作品。「フォーラム」部門は、ロッテルダム映画祭に共通するような、「ど」インディーで「ピュア」アートな作品が多いけれども、本作もミニマルでストイックな魅力を備え、小品ながらも愛おしくなる佳作。

精神不調を抱えた青年が過ごす日々を描くもので、物語はあってないようなもの。アップを多用しつつ、端正な画面が心地良い。

本日最後は、21時45分から、また「フォーラム」部門で『The Strange Little Cat』というドイツの作品。これがまたかなりの個性派で、上手く文章にするのが難しい!

この作品が持つ、絶妙な面白さをどう書けばいいだろうと考えてながら帰路に着き、実際にパソコンに向かうと、ここまで書いた時点で力尽きてしまった…。可能であれば、本作についてのコメントはまたいずれ。

というわけで、春の長期ヨーロッパ出張も、いよいよ残すところあと5日。これだけ見ているのに、まだまだ見たい!我ながらどうかしているよな、と思いつつ、本日も1時。明日に備えて寝ることにします!
《text:Yoshihiko Yatabe》

関連ニュース

特集

page top