【雅子ブログ】『君と歩く世界』
待望のジャック・オディアール監督の最新作『君と歩く世界』がもうすぐ公開されます。マリオン・コティアール主演、…
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シャチの調教師のステファニー(マリオン・コティアール)は華麗なショーの最中、突然の事故に遭い両脚を失ってしまう。彼女が救いを求めたのはシングルファザーのアリ(マティアス・スーナーツ)。教養もないその日暮らしの無骨な男で、彼もまた、再生の道を歩んで行く――。
観終わった後に体内からフツフツと湧き起こる感情は、まさにメインビジュアルのイメージと、キャッチコピーの「きらめく、光。きらめく、海。きらめく涙。きらめく、世界」。それは、この映画のすべてを物語っているような気がしている。絶望から奮起して歩き出すには、悲しみに明けくれるのではなく生きている実感が必要で、苦しみや痛みが伴う。けれども同時に生きるということの人間としての本能、勇気、力強さ、優しさ、そして爽快感も感じられるのではないだろうか。
オディアールの演出、マリオンのナチュラルで力強い演技力と魅力、演技を超越するかのようなマティアスの存在、音楽、映像、編集…すべてが素晴らしい。そして、忘れてならないのが眩しい南仏の陽光。人間は外へ、光の射す方へ向かうのがいいのである。
ラストシーンからエンドロールへ向かう音楽(劇中歌はボン・イヴェール)の使い方など、体中の血が騒ぐような高揚とした気持ち。この感じ、20代に観た『グラン・ブルー』のエリック・セラの唄う「マイ・レディ・ブルー」を思い出したりして。躍動感があって、こんなにも生命感溢れるフランス映画を観たことがない。心に深く深く残る映画がまた一つ誕生した。
昨年のカンヌ映画祭コンペティション部門に出品された本作、2月に行われた2012年度セザール賞でも有望新人賞にアリ役のマティアス・スーナーツ(タイプではないけれど、ものすごくイイ!)、脚色賞、編集賞、音楽賞と4部門冠という快挙。日本での大ヒットも祈るばかり。
ところで前記の中井さんとの対談を読み返してみると、あることに気が付く。私たちはひと言もCGについて触れていないのだ。「ああ、そういえばそうだったか」という程度。それほど自然なマリオンの演技とオディアールの演出に改めて感嘆する。私は本作を試写で、対談のためにDVDで、そして劇場の大画面で計3回観たけれど、やはり大画面で観たときの印象は違う。この映画は絶対に、絶対に大きなスクリーンで観て欲しいと思う。 公開はあともう少し、4月6日(土)から!