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【シネマモード】4,000人の中から見出された少女、クヮヴェンジャネ・ウォレス

本物のスターというのは、突然誕生するものです。今年のアカデミー賞で、史上最年少で主演女優賞にノミネートされた6歳のクヮヴェンジャネ・ウォレスもそう。

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『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』 -(C) 2012 Cinereach Productions, LLC. All rights reserved.
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本物のスターというのは、突然誕生するものです。今年のアカデミー賞で、史上最年少で主演女優賞にノミネートされた6歳のクヮヴェンジャネ・ウォレスもそう。『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』で鮮烈なデビューを飾りました。6歳といったら、当然ながら、この世に生まれ出でてたった6年しかたっていないということ。それで名演技が繰り出せるということは、やはり生まれながらにして女優の素質を持っていたということなのでしょう。

『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』は、閉鎖的な河川近くのコミュニティ、通称“バスタブ”に父と暮らす少女・ハッシュパピーの物語。仲間や動物たちと気ままに暮らしていましたが、百年に一度の大嵐で地域は水没の危機にさらされ、しかも父親が重い病にかかっていることを知ってしまうのです。小さいながらも、厳しい現実と直面したハッシュパピーが、父親と世界を守ろうとする姿を描いた本作では、6歳の少女の存在感がとても重要。初めてクヮヴェンジャネを見たときに、世の摂理を見据える哲学者のようなまなざし、大人でもひるみそうな現実に立ち向かう力強いたたずまいがとても印象的で、ただならぬものを感じました。が、それもそのはず、彼女は1年以上の時間をかけ、延べ4,000人の中から見出された、選ばれし者なのです。

監督によると、「彼女を見たとき、小さな自然児というだけでなく、その眼は生命力に溢れ大胆不敵な戦士のようだった」とか。無類の集中力と感情豊かな知性を兼ね備えていたそうで、当時5歳だった彼女にすぐに魅了されたのだそうです。演技経験が一切なくても、「彼女ならできる!」と確信した監督は、同様に素人だった父親役のドワイト・ヘンリーと共に起用するため、脚本を一から書き直したという話も、監督の思い入れがわかるエピソード。それほどまでに、監督を突き動かす何かがあったということも納得の、神がかり演技を披露するクヮヴェンジャネ。これほど才能にほれ込むことのできる女優に出会えた監督も、幸運ですね。

今回無名ながら、アカデミー賞主要4部門にノミネートされた本作を撮ったベン・ザイトリン監督も、もちろん、単にラッキーな人物ではありません。本作で高く評価されたストーリーテリングの才能だけでなく、ダイヤの原石を見たときにきちんと価値を見出す能力があったのというのも優秀な監督の証。それまで用意していた脚本にこだわることなく、より良いものを求めて柔軟にモノづくりを進めていく知性も、作品を成功に導いたのでしょう。本物を見分け、その輝きを最大限に活かせる力は、残念ながら誰にでもあるものではありません。特別な者を見出し、その力を引き出すことができるのも、特別な者だからこそ。クヮヴェンジャネからは、彼女自身の女優としてのポテンシャルだけでなく、こんな風に監督のポテンシャルさえも見えてきます。小さい体で、多くを物語るクヮヴェンジャネ。スターの誕生をぜひ目撃してみてください。
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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