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【MOVIEブログ】GWはイタリア映画祭へ

特定の国の映画を特集する「国別映画祭」としては、東京で最も成功している映画祭のひとつであると僕が常々思っている、イタリア映画祭。今年も始まります(4月27日~5月6日)。

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特定の国の映画を特集する「国別映画祭」としては、東京で最も成功している映画祭のひとつであると僕が常々思っている、イタリア映画祭。今年も始まります(4月27日~5月6日)。

イタリアは政治がなかなか大変なことになっているようですが、映画は元気です。いや、政治の混乱や、国のひっ迫した財政状況が映画業界に無影響であるわけはないので、軽はずみに無邪気な発言をするのは避けた方がいいですね。

が、イタリアは大御所(ベルトルッチやベロッキオやモレッティなど)も元気で、中堅どころ(クリアレーゼやソレンティーノやガローネなど)が国際的に第一線で活躍し、有望新人も続々デビューするという状況が続いていて、少なくともクオリティー面での充実はここ10年途切れることがない印象です。「イタリア映画祭」は、その充実の時代と歩みを伴にしながら、日本に良作を紹介し続けているわけです。

毎年同じことを書いているかもしれないけれど、「イタリア映画祭」がどうして充実した映画祭たりえているかというと、それは岡本太郎さんという優れたプログラマーが厳密に作品を選んでいるから、ということが理由のひとつに確実に挙げられます。国別映画祭というと、えてしてその国の文化機関(的なもの)が推薦する映画をホイっと上映することがありますが、これだと魅力的なラインナップになることが、なかなかに難しい。

映画祭には美術界のように「キュレーション」という言葉は使われないですし、僕も自分が「キュレーター」であるとはあまり思っていないですが、まあ本来であれば美術展におけるキュレーターの存在のように、映画祭におけるプログラマーも注目されるべきなのでしょう。いや、でも僕自身が注目されたいということを言いたいわけでは全くなくて、いや、えー、まあグダグタした文章になってしまいそうなので、やめます。

ともかく、岡本さんは信頼できる、という話です。僕の今年一番の楽しみは『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』(写真)。『輝ける青春』でイタリアの現代史を描いたマルコ・トゥリオ・ジョルダーノ監督の新作で、今作も1969年に実際に起きた大惨事を扱っています。カルロヴィ・ヴァリ映画祭の審査員特別賞を受賞し、イタリアのアカデミー賞である「ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞」でも複数受賞した作品で、昨年のイタリアを代表する1本、と期待してもいいでしょう。僕は未見なので、楽しみです。

僕が既に見ている中で言うと、『日常のはざま』が刺激的。実験的な要素も含みつつ、基本的にはドキュメンタリー的なリアリズム描写が冴える、青年と少女のドラマ。少女が理由も分からず監禁され、彼女の監視役の青年も、あまり事情は分かっていない。反目しあう二人の仲が、徐々に和らいでいく様子が描かれるので、青春映画の変形と見ることは出来るのだけれど、実はガローネが『ゴモラ』で描いたナポリの裏社会が背景にあることが分かると、映画は全く別の様相を呈してくる…。

劇中の会話は強烈なナポリ訛りらしく、イタリア人でも字幕が必要だとか。リアルですね。見応えあります。是非。

パオロ・ヴィルズィ監督の『来る日も来る日も』は、ビター風味のロマンティック・コメディー。ズバリ注目は、俳優のルカ・マリネッリです。2010年の東京国際映画祭でも上映した『素数たちの孤独』に出演し、その強烈な存在感が僕はずっと記憶に残っていましたが、いよいよ彼はイタリア映画界の中央舞台にあがってきた感があります。要チェックでお願いします。

70年代のシチリアを舞台にした家族の悲喜劇を描く『それは息子だった』は、名優トニー・セルヴィッロの演技(怪演?)が必見だし、『あしたのパスタはアルデンテ』で軽妙で巧みな演出力を証明したフェルザン・オズペテク監督の『素晴らしき存在』は、エリオ・ジェルマーノが「アザーズ」な人々が暮らしている家に住むことで起こる騒動を描いてなかなか楽しいです。

良質なコメディードラマで、僕は見ていてとても心が落ち着いたのが『司令官とコウノトリ』。いくつかのエピソードが並行して進む群像劇タイプの作品で、注目はスムーズで気の効いた脚本と、やはり役者。「イタリア映画祭」でその出演作が紹介されない年がないくらいの売れっ子、ヴァレリオ・マスタンドレア(ちょっとカッコいいけど、やさぐれて情けない中年男性を演じさせたら、本当にピカいち)や、彼女の出演作を見るためだけにイタリアに出張したいという気にさせるアルバ・ロルヴァケル嬢(『ボローニャの夕暮れ』『素数たちの孤独』、イタリアの若手の宝!)など、見どころ多し。

『赤鉛筆、青鉛筆』は、これまたマルゲリータ・ブイやリカルド・スカルマチョといったスターが、ヤル気のない学生を何とかしようと奮闘する教師に扮する学園もの。中でも注目が老教師に扮したロベルト・エルリツカ(という名前にピンと来なくても、見たら絶対見覚えのある顔だと思うはず)で、愚かな生徒たちを教育する意欲を完全に失った美術教師を演じて絶品! ただ、実は諸事情があって僕は本作は半分までしか観ておらず、今回全編観られるということで楽しみにしています。少なくとも、前半は面白かったです。って、こんな紹介、ひどいですね。

あとは、ガローネの『リアリティ』も上映されるので、去年の東京映画祭で見逃した人はもちろん、見たけれどもう1回確認したい、という方は是非!

ということで、ゴールデン・ウィーク、めちゃめちゃ忙しいですな!
《text:Yoshihiko Yatabe》

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