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【MOVIEブログ】23日/ロッテルダム

23日、木曜日。6時に目覚めて、7時から大量に朝食のパンを食べて、2時間ほどパソコンに向かってから、外へ。どんより曇りの、小雨まじり。東京の抜けるような青空が早くも恋しい…

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How to Disappear Completely
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23日、木曜日。6時に目覚めて、7時から大量に朝食のパンを食べて、2時間ほどパソコンに向かってから、外へ。どんより曇りの、小雨まじり。東京の抜けるような青空が早くも恋しい。暗いよなあ、冬のヨーロッパは。

それにしても、今シーズンも始まってしまったのか! キャンプインがシーズンの始まりと言うけれど、なんだか今年は妙に焦る…。例年よりも焦る理由はぼんやり分かっているのだけど、それはまた追って書くとして。

さて、春のツアーの記念すべき1本目は、「Bright Future」部門の『Coast of Death』というスペインの作品。スペインの北西端に位置する海岸沿いの地域にカメラを向けたドキュメンタリー、というよりは、映像詩。自然と人々の営みを遠景で捉える淡々として極めて美しい映像詩で、こういう作品を観ると、ああロッテルダムに来たなあ、としみじみ実感する…。憎いくらいにフォトジェニックでポエティックなのだけど、死を身近に感じるリアリティーも備えている。これは1本目から当たり。

僕は業界パス(Industry Pass)を持っているので、いわゆる業務試写を観ることができるのだけど、やはり一般上映の方がお客さんの反応が見られるので面白いし、監督がQ&Aで登場するなら見たいので、どうしても一般上映を優先してしまう。先の1本目も一般上映。入場時にパスの認証が上手くいかなくて手間取ってしまい、インフォメーション・カウンターへ行って下さいと言われて行ってみたら、おそらくボランティアと思われるスタッフの対応がとても良くて、さすがロッテルダム。

さすがロッテルダムと言えば、木曜日の11時で、無名のスペイン人若手監督による、実験的と言ってもいいくらいの純アート映画が、200人はゆうに入るキャパで、ぎっしり満席。毎年本当に驚くけど、この動員力は相変わらずすごい。普通の大人が観に来ている。みなさんお仕事は? どうしてこんな作品(失礼)を観ようと思った? 映画祭作品であれば何でも観る?と、片っ端から聞きたい。いや、本当に聞いてみようか?

今日が映画祭の実質1日目なのだけれど、まだあまり上映本数も多くなく、時間が空いたので、早速ビデオ・ライブラリーへ。ホールにモニターがずらりと並び、上映作品のほとんどがVODで見ることができる業界関係者向けのサービスで、見逃した(あるいは見逃すことになりそうな)作品をここでキャッチアップできるので、とてもありがたい。

ということで、ライブラリーで、フィリピン映画を3分の2と、オーストリア映画を1本鑑賞。

15時から、一般上映に戻り、フィリピンの鬼才ラヤ・マーティン監督による『How to Disappear Completely』という作品(写真)。素晴らしい。イマジネーションの泉。ここ数年来、アジア映画が「森」というキーワードで語られることが多いけれど、本作も典型的な「森映画」。

森の中の家に暮らす中学生くらいの女の子をヒロインに、彼女と両親との確執が一応のストーリーの核にはなっているものの、物語は前面には出ない。夢と現実の境が曖昧になり、形而上的で象徴的な場面にケレン味たっぷりのスローモーション、そこにまるで場違いなエレクトロニックなビート音楽のBGMが被さり、表面的にはイヤになるくらいカッコいい。

しかし、底流するテーマは、おそらく極めて重い(おそらく、というのは、安易な解釈を拒むスタイルであるため)。精霊や聖なるものを「絶対悪」がいかに破壊するか。目を背けたくなる展開を叩きつけてくる終盤には、虫唾と戦慄が走る。強烈。ラヤ・マーティン、やはり鬼才。

歓迎すべき不快感に包まれながら、急いでスクリーンを移動し、黒沢清監督『Seventh Code:セブンスコード』へ。海外で観ることもなかろうに、ということなのだけど、たまたま時間が合ったのと、日本でも見逃してしまいそうだったので、まあいいじゃないかと自分に許可。

いやあ、これまた快作。黒沢監督、肩の力が抜けたように楽しそうに撮っている! ロシアと日本人の相性ってこんなに良かったのか! ロシアと日本がともに辺境ということで相性がいいのか、ロシアという舞台が無国籍性を醸し出しているのか(ロシアと分かっているのに無国籍というのも変だけど)。前田敦子はとりあえず走らせておけば映画になる、と黒沢監督が思ったのかどうか、僕は「たま子」よりこちらが買い。アクションの展開も、昨年の香港映画祭の企画で撮った『ビューティフル・ニューベイエリア・プロジェクト』の見事な進化系。なんとも見事な痛快作で、シリーズ化されたらいいのに。

無国籍風な荒唐無稽活劇に、ロッテルダムのお客さんも大ウケで拍手喝采。この作品はひょっとして海外の方がウケるかもしれない?

続けて、若いモロッコ人監督による『The Iranian Film』という作品。監督はオランダで映画を学んでおり、イランで映画を撮ろうとするものの入国が出来ず、代りにモロッコに帰ってイラン映画のような映画を作ろうとする、という内容で、ドキュメンタリーに見せかけながら、実はフェイク・ドキュ。いや、キアロスタミの『そして人生は続く』に対する誠実なオマージュ、という方が正確かな。なかなか巧みな構成で、悪くない。

本日はこれにて終了。少し早いけど、序盤は慎重に行こうと思い、21時には宿へ。ブログを書いて、今日は早めに就寝予定。初日からなかなか充実した!
《矢田部吉彦》

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