15時半に上映に戻り、「フォーラム」部門で『She’s lost control』というアメリカ映画へ。人との接触や親密さに対して恐れを抱く患者たちに、セックスを用いた治療を施す「セックス・セラピー」に従事する女性のドラマ。スキャンダリズムを排した丁寧で繊細な描写はいいのだけれど、設定上いささか展開が読みやすいので(予想を裏切ってくれない)、まずまずといったところ。
続いて19時半から、これまた「フォーラム」部門で、カナダのドゥニ・コテ監督の新作『Joy of Man’s Desiring』へ。ドゥニ・コテは現在最も刺激的なアーティストのひとりであり、本作は今年のベルリンで最も楽しみにしていた1本。
ドゥニ・コテ監督は、純粋アートなドキュメンタリー的作品と、フィクションドラマの両方を手掛ける才人で、2年前の東京国際映画祭で上映した『檻の中の楽園』は前者のタイプ。この『Joy of Man’s Desiring』も同じ路線で、工場の機械と労働者の動きをじっと観察しつつ、要所に細かい演出を挟んでいくもの。そこに搾取や資本主義批判という狙いは全くなく、機械の美しさと労働そのものを抽象度を高めた演出で描いていくもので、極めてアート性が高く、素晴らしい。一般上映だったので監督のQ&Aもあり、話が抜群に面白い。本当にドゥニ・コテ監督からは目が離せない。