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【MOVIEブログ】2015カンヌ映画祭 Day2

14日、木曜日。幸い7時に目が覚めたものの、目覚ましが鳴らない。そうか、目覚ましが壊れているのか! 出発日の寝坊の理由がいま分かった。20年連れ添った目覚まし時計から、アラーム機能が失われてしまった…。思い出のある時計なので、少し寂しい。

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14日、木曜日。幸い7時に目が覚めたものの、目覚ましが鳴らない。そうか、目覚ましが壊れているのか! 出発日の寝坊の理由がいま分かった。20年連れ添った目覚まし時計から、アラーム機能が失われてしまった…。思い出のある時計なので、少し寂しい。

気を取り直して、外へ。本日は晴れ、時々曇り、という感じ。朝晩はなかなか冷えますね。8時半からの上映で、心配だったので7時45分に並び、無事入場。見たのは、「批評家週間」部門でフランスの『The Anarchists』という作品。新人監督で、主演のひとりに『アデル、ブルーは熱い色』のアデル・エグザルコプロス嬢。

19世紀末のパリを舞台に、無政府主義者たちの活動を内偵すべく覆面捜査官として送り込まれた警察官の物語。プロダクションのクオリティーは高いし、序盤の映像も期待を抱かせるものだったけれど、内偵ものとしてのパターン内にとどまっており、いささかサプライズ不足といった印象。

メイン会場に移動して、今年初のコンペ部門の作品に向かう。11時半から、イタリアのマッテオ・ガローネ監督新作『Tale of Tales』(写真)。今回は何と、ヨーロッパの中世的な時代を背景に、架空の国を舞台にしたファンタジーおとぎ話、いや、グロテスクおとぎ話、かな。リアリズムの『ゴモラ』とも、フェイクドラマ的な『リアリティ』とも全く異なる世界観で、ガローネの表現の幅の広さには感嘆するばかりだ!

奇想天外なおとぎ話が3つ平行して語られていく展開。映像としても物語としても、それぞれ充分に楽しいのだけれど、衝撃を受けるほどではない…。と見終わった直後は思ったものの、作品を通じて多く登場する「怪物」たちの意味を考えて行くにつれ、これはそんなに単純な映画ではないなと戦慄する。ガローネの込めた謎かけやメッセージを解釈する刺激に満ちた1本だ。

作品の余韻の意味を考えながらマーケット会場へ。そういえば、1月のシャルリー・エブド事件を受けて、カンヌのセキュリティーが厳しくなっており、私服警官も大量に動員されているらしいといううわさを昨日耳にしたけれど、確かに入場時の荷物チェックも例年よりも厳しい。ここはヨーロッパだ、という意識を改めて強くし、少し身が引き締まる。

ミーティングを1件終えて、毎年お世話になっている中華屋さんのバイキングランチを15分で飲みこみ、また会場に戻ってミーティングを2件。本日のミーティングは少なめで、これにて終了。また上映へ。

あ、是枝監督の『海街diary』(コンペ)は、今日の午後が公式上映なのでした。僕は日本で作品を見ていたけれど、四姉妹のカンヌでの晴れ姿が見たいなあとの欲求に抗うのが大変。でも、僕がカーペットにかぶりついているのを見つかったら職を失いかねないので、断腸の思いで忘れることにする…。

そういえば、河瀬監督の『あん』(「ある視点」部門)も、本日が公式上映。何もよりによって日本映画を同じ日にしなくてもいいのになあ。日本から来ているマスコミの人たちは大変だ!

17時から「批評家週間」の会場に赴き、カナダの『Sleeping Giants』という作品へ。美しい湖畔で夏休みを過ごす3人の15歳の少年たちの内面を描くドラマで、「難しい年頃の少年もの」のパターンを著しく逸脱するわけではないけれど、見る者に解釈の余地を残す抑制の効いた演出が効果的で、何よりも少年たちの人物描写がしっかりしており、とても好感が持てる作品。

続いて、「監督週間」部門の会場へ移動。19時半からの上映では、上映前に同部門の開会式が行われ、フランスの監督協会が世界の優れた監督に贈る「黄金の馬車賞」の今年の受賞者であるジャ・ジャンクー監督が登壇。「昔は映画で世界が変えられると思っていたけれど、そんなことは無いと気付いてしまった。しかし、だからこそ映画を作り続けなければいけないのだと、いま強く思っています」とスピーチ。素晴らしい。

上映作品は、フィリップ・ガレル監督新作の『In the Shadow of Women』(英題)。舞台挨拶があり、主演女優のクローティルド・クローが「ガレル監督のおかげであまりにも素晴らしい仕事が出来たので、この作品で女優を引退してもいいと思うくらいです」とコメント。おお。

本編上映前に、1968年にガレルが撮影した8分の短編作品の特別上映があり、これが実に素晴らしい。荒れる時代の空気をガレルの才気で切り取った貴重な作品で、いやあ、これは見られてとても幸運だった。『In the Shadow of Women』は、ドキュメンタリー監督のダメ夫と、彼の才能を信じながら健気に貧しい生活に耐える妻との愛憎の物語。特有のモノクロ映像も健在で、極めていつものガレル。いや、いつもよりも開き直ったユーモアが多いかな?ガレルファンとしては、堪能しつつ大満足。

21時半に終り、ダッシュで会場を移動し、22時から「ある視点」部門のルーマニア映画『One Floor Below』へ。ダッシュしたわりには前の上映が押しているようで、30分遅れての開始。監督のラドゥ・ムンティアンは僕が注目しているルーマニアの監督のひとりで、本作はアパートの下の階の住人が死亡した事件の真相を知っている(と思っている)男が家族を守ろうとする物語。この要約は乱暴なのだけど、静かに淡々と進行するスタイルはまさにルーマニア・タッチ。万人受けする映画では決して無いけれど、監督の成熟ぶりが伺える貴重な作品だ。

上映終わって、0時。外に出ると、かなり寒い。急いで宿に帰り、この文章をバタバタと書いて(乱雑でごめんなさい)、そろそろ2時。んー、ちょっと疲れた。おやすみなさい!
《矢田部吉彦》

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