メイン会場に移動して、今年初のコンペ部門の作品に向かう。11時半から、イタリアのマッテオ・ガローネ監督新作『Tale of Tales』(写真)。今回は何と、ヨーロッパの中世的な時代を背景に、架空の国を舞台にしたファンタジーおとぎ話、いや、グロテスクおとぎ話、かな。リアリズムの『ゴモラ』とも、フェイクドラマ的な『リアリティ』とも全く異なる世界観で、ガローネの表現の幅の広さには感嘆するばかりだ!
上映作品は、フィリップ・ガレル監督新作の『In the Shadow of Women』(英題)。舞台挨拶があり、主演女優のクローティルド・クローが「ガレル監督のおかげであまりにも素晴らしい仕事が出来たので、この作品で女優を引退してもいいと思うくらいです」とコメント。おお。
本編上映前に、1968年にガレルが撮影した8分の短編作品の特別上映があり、これが実に素晴らしい。荒れる時代の空気をガレルの才気で切り取った貴重な作品で、いやあ、これは見られてとても幸運だった。『In the Shadow of Women』は、ドキュメンタリー監督のダメ夫と、彼の才能を信じながら健気に貧しい生活に耐える妻との愛憎の物語。特有のモノクロ映像も健在で、極めていつものガレル。いや、いつもよりも開き直ったユーモアが多いかな?ガレルファンとしては、堪能しつつ大満足。