【MOVIEブログ】2015カンヌ映画祭 Day11

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23日、土曜日。今年のカンヌも、いよいよ大詰め。6時45分起床で、今日も慌てて支度をして7時15分に外へ。

コンペの公式上映としては最後の登場となる『Macbeth』へ。本上映は夜だけれど、8時半からの上映のチケットが取れていたので7時半に列に並んで無事入場。

オーストラリアのジャスティン・カーゼルという監督で、日本ではまだ無名と言っていいかな。本作はマイケル・ファズビンダーがマクベスを演じ、マリオン・コティヤールがその妻役。スコットランドの荒涼として雄大な土地を背景に、シェイクスピアの原作に忠実な世界が展開する。

セリフも全て原作通りと思われ、現代的解釈による自由な翻案ということではなく(でも『グラディエイター』や『スリーハンドレッド』的な戦闘シーンはふんだん)、ストレートなシェイクスピア劇。シェイクスピアについて語るのは畏れ多いので控えるとしても、骨太で重厚感のある映像と演出はかなり見応えありでした。

続けて、コンペの再上映で、11時からスペインのミシェル・フランコ監督の『Chronic』へ。ティム・ロス主演。できれば予備知識無しで見たいところなので、ティム・ロスの役どころを書くのは控えたいのだけど、書かないと紹介が出来ないというジレンマ。んー、どうしよう。日本の公開もありそうな気配なので、ここで書くのはやめておこうかな。

拉致されて強制的にカメラの前でセックスをさせられる兄妹を描いた前々作、激しいいじめにあった娘とその父の苦悩を描く前作に続き、フランコ監督が新作のテーマに選んだのは、難病介護。日常生活に潜む極限状態を、外見的には端正なタッチで描く手法は、ミヒャエル・ハネケの系譜と呼んでもいいのかもしれない。さりげない凄みを持った監督だ。要注目。

それにしても、今年のコンペは非英語圏の監督による英語映画が多い。イタリアのソレンティーノ、イタリアのガローネ、ギリシャのランティモス、ノルウェーのトリアー、そしてスペインのフランコと、いずれもハリウッド系の俳優を用いた英語作品だ(非英語圏出身の俳優に英語を話させているケースも含む)。これはこれでもちろん全然悪いことではないのだけれど、どうしても国家的多様性という要素は薄れてしまう。

果たして映画に国家的多様性が必要なのかは真剣に考察する必要がある気がしていて、必要なんてないと言う気がする一方で、「スペイン映画らしいスペイン映画」や「ギリシャのいまが見えるギリシャ映画」が見たい気もする。グローバル化という言葉にはすっかり垢が付いてしまっているけれど、映画のグローバル化の意味をいま一度深く考えてみるのも意味があるかもしれない…。

続いて14時から、「監督週間」部門のトルコ映画『Mustang』の再上映へ。会期中にとても評判が良く、見逃していて悔しい思いをしていたのだけれど、同部門の受賞をしたということで再上映になり、めでたく見る機会に恵まれたという次第。

トルコ版「ヴァージン・スーサイズ」という触れ込みは前から耳にしていたのだけれど、果たして全くその通りの作品だった。その通り過ぎる、と言ってもいいかもしれない。とても美しい5人の姉妹がふしだらな毎日を送っていると危惧した祖母と叔父が(両親は他界している)、彼女たちを家に軟禁し、そしてひとりずつ嫁に送り出していく中で展開していくドラマ。

この作品を評価する人たちの気持ちも100%理解できるのだけれど、僕は作り過ぎた世界にいまひとつ入りきることが出来なかった…。ウルトラ保守的で封建的な社会の理不尽な振る舞い(処女でないと結婚できないとか、初夜の晩にわざわざ夫の両親がシーツの出血を確認しに部屋に入ってくるとか)を見せることで、観客の怒りと同情を煽る脚本に安易さを感じてしまい、冷めてしまった。が、映画の出来は決して悪くないので、これは好みの問題であるはず。

いったん宿に戻り、小休憩。19時半から、「ある視点」部門の授賞式と、受賞作品上映会へ。見事、黒沢清監督が同部門の監督賞受賞!おめでとうございます!

作品賞を受賞したのは、アイスランド映画の『RAMS』(写真)。評判を聞いていながら見逃していたので、受賞作品上映で見られて嬉しい。2年前の東京国際映画祭で上映した『馬々と人間たち』に通じる、アイスランドの大自然の中で繰り広げられる人間と動物の濃いドラマ。受賞には大納得。でも、見終わったた後の興奮と、ひねりの効いたツイストという意味では、『馬々と人間たち』の方が上回っているかな…?

22時半から「監督週間」のリトアニア映画を見て、本日は終了。

明日はいよいよ最終日。コンペの受賞の発表です。このブログがアップされる頃には結果が出ているけれど、これを書いている土曜日深夜(2時半)の僕の予想としては…。

最高賞のパルム・ドールはトッド・ヘインズの『Carol』。審査員特別賞にソレンティーノの『Youth』と、ホウ・シャオシェンのダブル受賞。監督賞にハンガリーの『Son of Saul』の新人監督(彼のカメラ・ドールは確実のはず)。主演男優賞にヴァンサン・ランドン・主演女優賞にケイト・ブランシェット。脚本賞に、ナンニ・モレッティ。

さあ、果たしてどうなるだろうか!
《矢田部吉彦》

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