【MOVIEブログ】2018ベルリン映画祭 Day4

18日、日曜日。6時40分起床で、いろいろこなして外に出ると今日も曇り。今朝もそれほど寒くはない。どうやら今年のベルリンは例年より寒さが緩いみたいだ。

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『The Prayer』
  • 『The Prayer』
18日、日曜日。6時40分起床で、いろいろこなして外に出ると今日も曇り。今朝もそれほど寒くはない。どうやら今年のベルリンは例年より寒さが緩いみたいだ。

本日も9時からのコンペ試写を見るべくメイン会場で列に並んでいると、昨日見た『Young Solitude』のクレール・シモン監督が隣に立っているではないか。

思い切って、「昨日作品を見ました。とても面白かったです。そして前作の映画学校の入試を扱った作品も大好きでした」と話しかけてみると、監督は破顔一笑して「どうもありがとう。さっきから、ソウダネー、って聞こえて、日本の人だと思っていたんですよ。ほら、『どですかでん』でソウダネー、ソウダネー、って言うでしょう?」。僕と同僚の会話が聞こえていたらしい。それにしてもいきなり『どですかでん』が出てくるとはさすがだ。クレール・シモン監督、少し怖そうな佇まいで声をかけるのを躊躇したけれども、笑顔が素敵で、知的で、とても魅力的だ。いつか日本に招待できたらいいなあ。

列が動いたので、残念ながらシモン監督との会話は終了。そして無事に入場して見ることが出来たのは、シモン監督の友人だというフランスのセドリック・カーン監督の新作、『The Prayer』(写真)。

ジャンキーの青年が更生を期して山間に設けられた依存症更生施設に入り、キリスト教信仰を指導の中心に据える施設の方針と青年が葛藤する姿を描くドラマで、細部に不満は残るものの、全体として物語が導く方向性には深く共感できる。セドリック・カーンの小細工を用いない堂々としたストーリーテリングを僕はかねてより愛しており、今作でもその期待は裏切られることはなかった。

フランスの関係者に話を聞いたところによると、本作におけるキリスト教の扱い方が同国ではタブーすれすれであるらしく、賛否が分かれるだろうとのこと。本日がワールドプレミアなので、明日以降どういう批評が出るのか楽しみになる。

11時に終わり、昨日入れなかった12時のマスコミ上映の回に早くも並んでみることにする。50分ほど並んだところでマーケットパスの列がようやく動き、なんとか入場が出来て一安心。それでも列に並んでいた全員が入れたわけではなさそうなので、やはりこの回は要注意だ。

見たのは、イタリアのラウラ・ビスプリ監督新作『Daughter of Mine』。地中海に浮かぶサルディニア島の小さな村を舞台に、10歳の少女が実の母親に出会い、誠実な育ての母と、酒にだらしないが奔放で魅力的な産みの母との二人の間で揺れる物語。サルディニアの美しい陽光の中で、リアリズムタッチのカメラが個々の人物の心境を過不足なく描き出していく。

誠実な育ての母にヴァレリア・ゴリノ、奔放な母にアルバ・ロルヴァケルという配役がうまく効いている。この二人は逆の配役もあり得たと思わせるのだけど、とにかくアルバ・ロルヴァケルはどのような役を演じても本当に上手い。アルバを見るだけでも価値のある作品だ。

14時にショッピング・モールの地下のスタンドに行き、大好物の「ソーセージとザワークラウトとポテト」のプレートを頂く。美味なり。

14時半から18時半までマーケット会場でミーティング。映画会社の面々に挨拶しながら、各社の今年のラインアップ情報を仕入れる。

18時半に建物の外に出て、トライベッカ映画祭の旧知のプログラマーに会ったので立ち話をすると、昨夜彼が行ったというとんでもないパーティーの話を聞かされて驚愕した。なんでも、2千人規模のクレージーな仮装クラブパーティーが開催されたらしく、マッドマックス的な防具を付けた人たちで溢れ、かつほとんどの人が半裸で、SMチックな雰囲気が充満し、経験豊富な知人をもってしてもいまだかつて経験したことのない類のトンデモパーティーだったらしい(しかも音楽も最高だったらしい)。深夜に始まったパーティーは午前4時になっても入場口に長蛇の列が出来ていて、そしてなんと、今日の午後の5時まで続いていたそうな!

僕が見ているベルリン映画祭なんて、ほんの一部にしか過ぎないのだ。裏でそんな世界があるなんて。少しだけでも覗いてみたかった…。

時間が空いたので、スターバックスに入って少しパソコンを叩き、19時45分から「フォーラム部門」の『14 Apples』の上映へ。台湾資本で作品を作ることの多いミャンマー出身のミディー・ジー(Midi Z)監督の新作で、彼はアジア期待の才能のひとり。『マンダレーへの道』(16)が東京フィルメックスで上映されているので、日本でも注目している人はいるのではないかな。今作はドラマとドキュメンタリーをミックスさせたような内容で、これがまた、何とも言えずいい。

不眠症に悩む男性が、リンゴを14個持参して14日間僧侶となる治療法を占い師から勧められる。かくして男は市場でリンゴを14個買い、ミャンマーの辺境の村に向かい、頭を丸め、僧侶となる。映画は、僧侶となった男が村の少年たちと托鉢をする様子や、汲んだ水を入れた甕を女たちが頭に乗せ、長い道のりを一列になって歩く様子を淡々と映し、中国に出稼ぎに赴く女性たちの話をじっくりと聞かせる。

なにげない村の様子に、時折リンゴをかじる男の姿が挿入される。ただそれだけの内容なのに、どうしてこれだけ素敵な映画になるのだろう。男が村を発見するように、観客も未知の景色を発見するからか、それとも長廻しのリズムが心地良いからか、はたまたそこはかとなく暖かい監督のまなざしが伝わってくるからだろうか…。そもそもリンゴや僧侶や村、といった要素の配分が絶妙に上手いからということももちろんあるのだろう。ミディー・ジー監督の才気を確認し、堪能する1本だ。

続けて22時からメイン会場に行き、スウェーデンのコンペ作品『The Real Estate』へ。亡くなった父親からアパートマンションを相続した68歳の女性が、居住者との杜撰な契約状況を改善しようとするがうまくいかず、問題の多い住人たちとの関係が過激に泥沼化していくという、ブラック・コメディというか、エキセントリックなアート映画というか、ちょっと分類不能の強烈な作品だ。

クローズアップを多用した圧迫感溢れる画面に、大音量の不協和音的なスコアが被さり、かなりぶっ飛んだ作り。僕はちょっとお腹いっぱいになってしまったけど、強烈なキャラといわゆる体当たりの演技で、ヒロインを演じた女優は主演女優賞候補になるかも。

上映終わって23時半。本日は夕食を食べそこなってしまったので、ホテルへの帰り道にあるコンビニ的深夜営業の店でプレッツェルを買い、ポリポリかじりながらブログを書き、今夜は少し早めに寝られそう。
《矢田部吉彦》

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