【MOVIEブログ】2018カンヌ映画祭 Day2

9日、水曜日。昨夜はブログを書きながら寝てしまったようで、読み返してみると不備が多くて反省。がんばろう。さて、本日は7時起床。外はどんより曇っている。夜中に雨が降ったようだけど、今はやんでいる。このままもってくれますように

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9日、水曜日。昨夜はブログを書きながら寝てしまったようで、読み返してみると不備が多くて反省。がんばろう。さて、本日は7時起床。外はどんより曇っている。夜中に雨が降ったようだけど、今はやんでいる。このままもってくれますように。

8時に外に出て「監督週間」の会場に向かい、すでに出来ている長い列に並ぶ。入場に時間がかかり、8時45分開始予定の上映が始まったのは9時を回ってから。運営が安定しない映画祭序盤にはよくあることで、まあいちいち気にしない。

見たのは「監督週間」のオープニング作品でコロンビアの『Birds of Passage』。セレモニーやゲスト登壇は夜の回に予定されているはずで、この朝イチの回は上映のみ。『彷徨える河』(15)が日本でも公開されたシーロ・ゲーラ監督の新作だ。とても楽しみにしていたのだけど、うーん、ちょっと刺激に欠けたか…。

60年代から80年代にかけてのコロンビア北部で起きた実話をベースにしている物語とのことで、大麻取引で財を成した地元部族の仲間割れの悲劇が描かれる。しっかりした作りで映画として安定はしているものの、キャラクター造形が単純過ぎて展開が読めやすく(ダメな男がしっかりダメな騒動を起こすとか)、そもそも「コロンビアで麻薬絡み」の物語に飽いている観客の予想を裏切ってくれる意外性が少なかった。全く無いとは言わないまでも、んー、残念。

上映終わると、当然ながら予定終了時刻が15分以上押しており、次に予定していた作品まで5分しかない。「監督週間」の会場から、「ある視点」部門の会場ドビュッシーを目指して超早歩きし、ギリギリで2階席に滑り込めてセーフ。やれやれ。ということで、11時15分から見たのは「ある視点」部門のオープニング作品『Donbass』(写真)。これまたセレモニー等は夜なので、今回は上映のみ。

ウクライナのセルゲイ・ロズニッツァ監督新作で、この監督、やはり只者ではない。『Donbass』は100%監督の芸術観の下にコントロールされている芸術作品であり、まったく一筋縄ではいかない。予習ブログではドキュメンタリーかもしれないと書いたけれども、体裁としてはフィクションだ。しかし、あまりジャンル分けは意味をなさないだろう。

非常事態下にあるウクライナ東部を舞台にした作品であるという前知識はあったものの、それだけでは全く歯が立たない。映画にリニアなストーリーはなく、様々な状況がスケッチのように次々と並んでいく。個々のスケッチに脈略はなく、それらスケッチ全てを総合していくとひとつの大きな絵が見えてくる、と解釈すればいいだろうか。

全く説明がないので、兵士が話していてもロシア軍なのか親ロシア派ウクライナ軍なのか反ロシア派ウクライナ軍なのか、分からない。兵士に限らずウクライナとロシアの双方の視点が混ざってくるのだけど、どっちがどっちなのか分からない。爆撃があったかと思えば産婦人科で物資の説明を延々とする男が登場し、街で裏切り者の兵士へのリンチが行われたかと思えば、ロシアと思しき場所でカオティックなウェディングが延々と繰り広げられる。

難解な映画を前にしたとき、人は作り手の身勝手さを恨むか、自らの理解の至らなさを嘆くか、どちらかになるけれど、今作の場合は間違いなく後者。映画に力があることは間違いなく、周辺知識を入れながら3回ほど見たなら突如として凄さが分かるタイプの作品だ。ロズニッツァ監督の前作『A Gentle Creature』も2回目で自分なりの理解を得られたけれど、今作は3回見る必要がありそう。まさに鬼才による重要作だ。

そのまま続けて「ある視点」部門で、ケニアの新人女性監督による『Rafiki (Friend)』。明るくポップな雰囲気も備えた悲恋物語で、シンプルなラブストーリー。とてもプリミティブな恋愛ものなのだけれども、それが、同性愛が違法であるケニアにおいて製作された女性同士の愛の物語だということになると、作品は異なった意味をまとってくる。そういう映画があっていいし、とても重要な作品であることは間違いない。監督のセンスが感じられるし、女優さんの魅力も素晴らしい。ケニアにて上映禁止となってしまった本作だけれども、カンヌの反応はとても好意的であるはずで、それが何らかの影響力を持っていくことを願わずにいられない…。

上映終わり、14時から18時半まで断続的にミーティング。マーケット会場はさすがに人も増えてきた。やはり昨日は異常だったのかな。

19時半から上映に戻り、「批評家週間」のオープニング作品『Wildlife』へ。上映前にセレモニーがあり、部門の審査員が紹介され、ヨアキム・トリアー審査委員長や、クロエ・セヴィニーなどが客席から立ち上がって軽く会釈する。20年来のクロエ・セヴィニー・ファンとしては、ようやく巡ってきたこの機会に目頭が熱くなるばかり…。

『Wildlife』はポール・ダノ監督、キャリー・マリガン主演での60年代を舞台にした家族の物語で、上映前に二人と脚本参加のゾエ・カザンが登壇。おおっ、ポール・ダノは来るかと思ったけど、キャリー・マリガンまで来場とは!これは嬉しいサプライズ!

ヨーロッパのアート作品に影響をたっぷり受けているとダノ監督が話したとおり、『Wildlife』は実にじっくりとして静かな家族の崩壊の物語。とても好感が持てるのだけど、同類の映画が少なくない中、欧州作品との明確な差別化が出来ていたかというと、少し物足りなさが残るのは否めない。それでも、キャリー・マリガンとジェイク・ギレンホールが演じた崩壊夫婦の説得力は十分で、水準作と呼んでもいいのではないかな。

続けて22時半から同じく「批評家週間」で、ハンガリーの『One Day』。これも家族の危機の物語。懸命に子育てをする妻が、夫の浮気がパラノイアとなって身動きが徐々に出来なくなってしまう様を描くドラマ。幼い子供のナチュラルな大変さを見事に描くリアリズムには脱帽。しかし物語に起伏がなく、もうひとつくらい展開が欲しかったか…。

諸手を挙げて絶賛、という作品はなかったけれども、本日は5本見られて満足。いや、ロズニッツァ作品との出会いは歓迎しないといけないかな。宿に戻って0時半。朝から何も食べていなかったので買い置きのパンをかじってビールをすすりながら(失礼)ブログを書いてみたら、なんともう2時半だ。先は長い。寝ます!
《矢田部吉彦》

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