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【MOVIEブログ】2018カンヌ映画祭 Day6

13日、日曜日。本日も6時半起床で、7時半には外へ。連日4時間睡眠が続くけれども、気が張っているのか、時差ボケなのか、スッキリ起きられるのが本当にカンヌの魔力。日本でもいつもこの調子だといいのだけど。本日も薄曇り

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Copyright Tatjana Krstevski Non-Aligtned Films "The Load"
13日、日曜日。本日も6時半起床で、7時半には外へ。連日4時間睡眠が続くけれども、気が張っているのか、時差ボケなのか、スッキリ起きられるのが本当にカンヌの魔力。日本でもいつもこの調子だといいのだけど。本日も薄曇り。

8時半から、コンペのジャファル・パナヒ監督新作で『3 Faces』。まずは予習ブログを訂正しなくてはいけなくて、本作をレイラ・ハタミ出演と書いてしまったけれどそれは間違い。本編を見たらベーナーズ・ジャファリさんだった。訂正してお詫びします!

役者の卵の若い女性が、家族の理解を得られないことを苦にして自殺をする映像を人気女優のベーナーズ・ジャファリに送る。動揺したジャワリはパナヒ監督に相談し、ともに少女が暮らす地方に出向く。果たして少女は本当に死んでしまったか、それとも…、という物語。

このプロット自体はとても興味を引くもので、実際に女優も監督も本人役で出演していることもあり、その虚実がないまぜとなった前半部はかなり面白い。しかし、後半になって嘘のように勢いが失速してしまい、あれれ? という間に映画が終わってしまった。消化不良というか、なんだか狐につままれた気分。むむー、残念。

それはそれとして、昨夜の公式プレミア上映の場では、自宅軟禁のため欠席を余儀なくされたパナヒ監督のために席が用意され、主のいない空席に対し、大きな拍手が送られたとのこと。作品に近い関係者に話を聞いたところ、パナヒ監督は最後の最後まで来場のトライをしたらしい。状況としては、出国は可能であるものの、いったん出国したら帰国が許されないらしく、その選択がいかに残酷なものか、想像すら及ばない。映画の中のパナヒ監督が元気に見えることが救いで、今後の状況の好転を祈るばかりだ…。

続けて11時半から、「監督週間」で『Dear Son』というチュニジアの作品。大学入学資格試験を目前にして心身の不調を訴える息子が姿を消してしまい、苦悩する父親の物語。息子が向かった先がシリアだったことで、現在を象徴する物語であるはずなのだけれど、ISISに惹き付けられる若者を描いた秀作が近年多く作られていたことを鑑みると、本作はいささか展開力に乏しく、ドラマにサプライズをもたらすことが出来なかった。これまた残念。

上映終わり、本日の午後はずっとミーティング。その合間に、日本の新聞社からの取材を受け、今年のカンヌから受けている印象を語ってみる。カンヌはまだ折り返しだけれども、選定作品の傾向や、来場できない監督の存在について、ネットフリックスについて、そして女性や女性監督と映画を巡る運動のうねりについてなど、思うところをしゃべってみる。今年のカンヌは語る内容に事欠かない。

取材が終わり、記者の方と雑談していたら「ヤタベさんのブログはみんな参考にしていますよ」と言われ、恐縮し過ぎて小さくなる…。いつもグダグダなのにすみません…。

さて、今日は上映を諦めたので、久しぶりにちゃんと食事をしようと思い立ち、簡易タイレストランで中華風ランチを頂く。温かい食事が1週間ぶりなので、染みるようにおいしい。

食事をしていると、外では土砂降りの雨が降ってきた! ああ、ついに。今日は是枝監督作品の公式上映の日なのに、カーペットが雨だったら気の毒だ…。でもそういえば、数年前に『そして父になる』がコンペに出た時もカーペットが雨だった。実は是枝さんは雨男? と思いきや、『そして父になる』は受賞したので、雨は縁起がいいのかも!

しばらしくて、雨は上がり、晴れ間が見えてきたけれど風が冷たい。

19時から、昨年の11月に審査員を務めてお世話になったオーストラリアのAsian Pacific Screen Award (APSA)が関わるパーティーに参加。半年前に素晴らしい経験をさせてくれた面々に再会し、感激のひと時を過ごす。

20時に座を辞して、上映に戻って「監督週間」の『The Load』(写真)へ。後ろ髪を引かれる思いでパーティーを抜けて見る価値があったと心底思える、これが秀作だった!

セルビアの作品。90年代の内戦時を舞台に、NATO軍から依頼されるままに、コソボからベルグラードまで積み荷を運ぶ大型トラックのドライバー男性が主人公の物語。映画の大半は、危険な道中を男が運転するだけの静かでミニマムな内容なのだけれど、その積み荷が何であったかが後半に明らかになり、物語は意外な様相を呈してくる…。

劇場公開はとても望めないような小規模な作品ながら、猛烈に心を揺さぶられた。Day6にして、目下のカンヌで動揺度は最高かもしれない。これみよがしにならない細部の演出がたまらなく上手い。OGNJEN GLAVONIC(読み方が分からない!)監督、素晴らしい才能だ。ああ、これはいい。

作品は素晴らしかったのだけれど、業界人向け試写のはずなのに、隣に座ったイタリア人と思しき男女が終始イチャイチャチュッチュしているので閉口した…。仕事終わったのかな。いいな。

まあ、いいや。『The Load』の映画演出の奥深さを噛みしめながら、本日の上映は以上で終わり。今日は社交デーに位置づけたので、22時から韓国が主催するパーティーへ。昨年のカンヌで客死されたプサン映画祭のキム・ジソク氏の追悼映像が辛く、目頭が熱くなる。時を同じくして雨が降ってくる。カンヌも泣いている。

知り合いの方々と会話をして、23時に「批評家週間」のパーティーへ移動。ビーチ沿いの会場で、イモ洗いクラブ状態。みんなが踊っている中で挨拶したい監督に奇跡的に会えて、目標達成。

0時。いい加減ワインが回ってきたのだけど、もう一件、ギャスパー・ノエ監督新作のパーティーの招待状ももらっていたので赴いてみたら、ここは入り口が長蛇の列で並ぶのを断念。雨もまだ降っているし、ここで体調を崩しては元も子もない。0時半にホテルへ。

ホテルに戻り、慣れないパーティーのハシゴでゆらゆらになってしまった頭を叱咤しながらブログを書き、そろそろ限界。本日は2時前にダウンです。
《矢田部吉彦》

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