【MOVIEブログ】2018東京国際映画祭 Day2

26日、金曜日。8時起床。なんと6時間も寝られてしまった。こんなのは普段でもないくらい。本格スタートの本日に睡眠十分で臨めるのはありがたい! 支度して外へ。曇り。予報は悪くないので今日も安定した一日が期待できそう。

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『三人の夫』
  • 『三人の夫』
26日、金曜日。8時起床。なんと6時間も寝られてしまった。こんなのは普段でもないくらい。本格スタートの本日に睡眠十分で臨めるのはありがたい! 支度して外へ。曇り。予報は悪くないので今日も安定した一日が期待できそう。

9時に席に着き、本日の予定を細かく確認する。今日は司会やら取材やら会食やらが詰まっているので、何度も確認しないと心配で仕方ない。それから数日後の飲みパーティの企画を詰めて、僕がコンペの監督たちに取材するプライベートインタビューの質問事項を整理する。さらに昨日発生しかけた小さいトラブルが大きなトラブルに発展しないように関係者と対策会議をして、その結果をメールにまとめ、スタッフに一斉送信する。それから見直しが必要な作品を少しだけ見る。

そうこうしていると11時半になって、昼の弁当が到着! 運営チームによる最高の弁当セレクションからカルビ丼弁当を選択。ナイス! 美味しくいただいて、さあそろそろ劇場に行かないととスケジュールを確認すると、今日はランチミーティングがあるではないか! さっき確認したはずなのに、弁当が目の前にあると反射的に食べてしまう…。まあいいや。食べられる時に食べるのが映画祭を乗り切る秘訣なのだ。

11時45分に劇場に行き、いよいよ今年初の司会へ。コンペのイタリア映画『堕ちた希望』のQ&Aでエドゥアルド・デ・アンジェリス監督と主演のピーナ・トゥルコさん。

エドゥアルド監督に会うと、昨夜親しい監督の訃報が届いたとのこと。まだ若く、エドゥアルドさんは心を痛めている様子。冒頭に黙とうを捧げてよいだろうかと聞かれたので、もちろんとお答えする。観客のみなさんと1分間黙とう。上映後に監督は日本の観客の真摯な姿勢に感激しており、辛い心境の中で公式行事に参加してくれた監督に僕からも感謝する。

『堕ちた希望』、荒廃と美しさが同居する独特のロケーションを背景とした理由や、かの地の現状を説明してくれて映画への理解が深まるQ&A。そしてラストシーンに対する監督のコメントがあまりに素敵で感動したのだけど、もう1回上映があるので今書くのはやめておこう。主演のピーナ・トゥルコさんは劇中の厳しい役柄とは全く異なる明るい方で、よいコンビ!

最初のQ&Aから上々の滑り出しだ。12時半にQ&A終わり、12時45分にヒルズ内のイタリアンへ。「日本映画スプラッシュ」と「アジアの未来」の審査員へのブリーフィングを兼ねた顔合わせランチ。スプラッシュ審査員のパオロ・ベルトリンさん、ノア・コーワンさん、入江悠監督、そしてアジア審査員のピート・テオさん、ジェレミー・セゲイさん、山下敦弘監督、さらに石坂健治氏、同僚のKさんを加えて9名でランチし、選定の背景や賞について説明をする。カジュアルな雰囲気が合う方々ばかりで、とても話しやすい。両部門とのブリーフィングランチは初の試みだったのだけど、これまたスムーズで有意義なランチとなり、企画してよかった!

14時にランチ終わり、そこからダッシュで場所を移動して3分遅刻して海外プレスとの合同インタビューへ。10名ほどの海外の記者から30分質問を受け、そしてメンバーを入れ換えてさらに30分。選定の方針や、それぞれの国の映画をどう思うか、あるいは女性監督作品の数についてなど、次々に質問を頂き、ブロークンな英語で懸命に答えてみる。海外から記者が来て下さるのは極めて大切なことであるのは言うまでもなく、本気で丁寧に答えたつもりなのだけど、伝わっていますように!

15時に合同取材が終わり、15時20分からコンペのQ&A司会でカザフスタンの『ザ・リバー』。エミール・バイガジン監督は34歳とは思えない風格を備えたアーティストだ。口数は多くないけれど、含みを持たせた回答が想像力を刺激する。思索的なコメントも多く、掘り下げて行くにはQ&A30分は足りない! 鮮烈なビジュアルインパクトを与える作品なだけに、鑑賞後の理解を深めるトークになったはずだ。バイガイジン監督、2度目のQ&Aも楽しみ。今回はシネマズの2番スクリーンで、ここも十分に大きいのだけど、2回目の上映はEXシアターなので、大画面で映画を観る歓びがさらに倍増するはず。見たい!

16時に事務局に戻り、次の予定がキャンセルになったのでちょっと一息。パソコン叩いて、メールを書き、軽い打ち合わせを1件。17時半になると弁当が到着したので、中華弁当を選択して頂く。

18時になり、シネマズに向かってコンペ『翳りゆく父』のQ&A司会へ。ガブリエラ・アマラウ・アウメイダ監督とプロデューサーのロドリゴ・サルティ・ウェルトヘインさん。もうガブリエラさん超いい人で一緒にいるだけで幸せな気分になる。根っからのホラー好きを表明しつつ、『翳りゆく父』はホラーの要素を含みながらもしっかりと人物と感情を描く家族のドラマ。創作への思いを丁寧に語ってくれる。

話題は主演の少女を中心に進み、彼女を起用した経緯や演出の付け方、そして劇中の物語は非現実的な要素を含むけれども現在のブラジルの状況をストレートに反映しているとの解説にも納得させられる。質問者の中にはブラジルの女性もいて、「ブラジル映画にこんなまともな映画があることを知りませんでした。もっとブラジル映画を観ようと思います」と感想を述べ、監督たちは嬉しそうに笑う。ブラジル人がブラジル映画の魅力に東京で気付くなんて、なんて素敵なことだろう!

上映後、黒沢清監督も大好きだと語るガブリエラ監督に黒沢監督を是非紹介したい!

上映終わってシネマズからEXシアターに移動し、19時半からコンペ『テルアビブ・オン・ファイア』のQ&A司会へ。これがまた最高の盛り上がり。登壇したのはサメ・ゾアビ監督と、主演のひとりヤニブ・ビトンさん。面白い映画を観た後の熱気が会場に漂っていて、最高に気持ちのいいQ&Aになった! 早くも序盤戦のハイライトになったのではないかな?

サメ・ゾアビ監督は超ナイスガイで、流ちょうな英語で(アメリカで映画を学んでいる)明るく軽快に製作意図を語ってくれる。観客は混乱するだろうからと、自らパレスチナ出身のイスラエル人であることを冒頭に話した方がいいと楽屋で語っていて、それらを含めて映画の中と外を巡る状況を解説してくれる。

コメディの形を取ることで政治的な事象を語る自由が広がるというコメントは説得力があるし、イスラエルのネガティブな面も描いているがイスラエルの上映は大丈夫か?との質問には、「ハイファ映画祭の上映は大好評で、いつまでたっても変わらない状況に風穴を開ける新世代の映画」とイスラエルの有力紙にも評されたとのこと。俳優のヤニブ・ビトンさんも最高に楽しそうにしていて、劇中のある食べ物に対するネタで盛り上がったのだけれども、そこはまだ2度目の上映があるのでここでは割愛。いやあ、面白かった。こういう才気溢れる監督たちと客席の熱気に恵まれたQ&Aがあるから映画祭は止められないのだ!

ついつい時間がオーバーしてしまい(終わらせたくなかった)、20時15分にEXシアターを飛び出す。コンペの審査員の5名と、日本映画スプラッシュとアジアの未来の合わせて6名の審査員の合同ディナーが行われており、店に飛び込んだものの、10分しか滞在できず、とりあえず挨拶とカンパイだけして、20時35分に店を出て映画祭事務局にダッシュで戻る。

20時40分に広報担当の同僚と合流し、半蔵門のTOKYO MXテレビへタクシーで向かう。道中、自分の映画祭中のスケジュールを克明に記した超大事なファイルが映画祭サコッシュに入っていないことに気付き、青ざめる。あ、と思って職場に電話して男性の同僚に男子トイレを見に行ってもらうと、利用者が既に見つけて事務局に届けてくれたらしく、遺失物担当者に僕のファイルが届いていたとのこと。ああ、よかった。あのファイルを失くしたら手足をもがれたようなものだった。トイレは鬼門だ!気を付けないと。

21時10分にTOKYO MXに到着し、メイクをしてもらって(!)、21時半から情報番組「バラいろダンディ」に生出演。なんだかこのバタバタの中でテレビの生番組に出演するという状況がシュール過ぎる。はるか昔からテレビで拝見している関谷亜矢子アナウンサーの横に立ち、水道橋博士さん、ライムスター宇多丸さん、島田洋七さん、金村義明さん、前園真聖さんに囲まれて映画祭の話をする。これをシュールと呼ばずしてなんと呼ぼう!でもさすが宇多丸さんが絶妙にフォローして下さって、あまり緊張せずに話すことができた(かな?)。宇多丸さんとはもっとお近づきになりたいものだ…。

出演コーナーは10分間くらい。テレビで映画祭のアピールが出来て、この素晴らしい機会を作ってくれた同僚たちに深く感謝!

「メイク落とします?」とメイクさんに言われたので、今夜まだ登壇の仕事があるのでせっかくだから(というか人生でメイクをする機会など滅多にないので)そのままにしますかね、と不思議な対応をしながらスタジオをあとにする。

22時15分に事務局に戻り、ファイルを無事奪還し、そのままダッシュで近くの中華料理店へ。海外マスコミ記者と作品ゲストの交流会に、日本映画監督協会も共催者として参加する合同パーティが行われていたので、顔を出す。立場上、僕は最初から参加していなければいけない会なのだけど、テレビ出演が決まったので短い滞在時間となってしまったのだ。仕方がないとはいえ、とても申し訳ない…。

入口で崔洋一監督にご挨拶し、さらに中村義洋監督と久しぶりの再会を喜び、昼の合同インタビューでお話しした米系マスコミの方に「話が分かりやすくてよかったです」と言われて気を良くし、そして本日来日してパーティに直行してくれた『アマンダ(原題)』のミケル・アース監督とプロデューサーに会って熱く歓迎する。アース監督には本当に会いたかったのだ。

しかしあまりにも時間がなく、30分だけ滞在して座を辞し、EXシアターへダッシュ。今日は次から次へとハイライトが用意されている。映画祭実質初日にして最大のハイライトのひとつ、フルーツ・チャン監督新作のワールドプレミアだ!

23時に登壇、満席のEXシアターが熱気に揺れている。これはすごい! 『三人の夫』の素晴らしさは日本の観客には熱狂的に受け入れられるに違いないと信じていたけれど、想像以上だった! ああ、招聘が実現して本当によかった。これほど光栄で嬉しいことはない…。

そして、とても意味深な監督のコメントでQ&Aはスタートする。いわく、「本作はとてもシンプルな物語であり、普通に楽しんでもらえればそれでいいのです」。僕は司会としてちょっと食い下がろうとしたのだけど、「分かりやすい映画ですよね? そしてみなさんにも伝わりましたよね? それでいいのです」とおっしゃる。

つまり、僕らがこの映画で考え付くであろう解釈は、おそらくその通りであると思ってよくて、それを監督の口から言わせないでくれよ、と伝えているのだということが分かる。つまり、激しいセックスを求めるヒロインと、彼女の3人の夫が象徴するものはなにか?それはどうやら香港の歴史や現状と関わるのではないか? という我々の読みはとりあえず自分の中にしまっておいてくれ、と言っているだと僕は解釈した。そうであるからこそ監督はいまこの作品を作ったのであり、我々は作品を見て考えて、そして感じればいいのだ。みなまで言わせるな、ということなのだ。本当にフルーツ・チャン監督は渾身の思いを込めて本作を作っている。凄まじい作品だ。そして今日、その答え合わせを僕らはすべきでなく、監督の気概を全身全霊で受け止めるべきなのだ。

歴史的な瞬間を過ごしたような気がする。映画祭実質初日にして、ここで閉幕しても後悔はないような気がするくらいだ。

0時過ぎに事務局に戻り、今夜2個目の中華弁当を取りにいったら、パーティで余ったおかずを持って帰ってきてくれた同僚がいて、野菜やらエビチリやらを弁当に山盛りに盛って、至福の深夜大弁当。

ああ、すさまじい一日であった。現在2時を回り、フルーツ・チャン作品を巡る思いがこみ上げるばかりで、青臭い文章を書いてしまった気もするけれども、これもひとつのドキュメントということであえて見直しせずにこのままアップします!

あ、そして今夜はオールナイトの日で、僕は3年振りにオールナイトの仕事がないのでこのまま帰るのだけど、実はこれから(AM3時くらい?)上映の『ボディーガード』がめちゃくちゃ見たい。生まれ変わって映画のキャラクターになれたら何になりたいかという遊びを同僚でやったときに僕は『ボディーガード』のケビン・コスナーになりたいと答えたくらい好きなのだけど、いまから見たら本当に明日から使い物にならないだろうと自分を戒め、引き上げることにする。こういう時、あのケビン・コスナーなら見に行くだろうかとバカなことを考えながら、激しく充実した本日も終わりを迎える…。
《矢田部吉彦》

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