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【MOVIEブログ】2019ベルリン映画祭 Day2

2月8日、金曜日。6時45分起床、一瞬メールチェックして朝食へ。黒パンが美味しくて止まらない。おそらく夜まで食事できないだろうから、たくさん食べる。

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(c)Jean-Claude Moireau "By the Grace of God"
2月8日、金曜日。6時45分起床、一瞬メールチェックして朝食へ。黒パンが美味しくて止まらない。おそらく夜まで食事できないだろうから、たくさん食べる。

8時15分に外に出ると、5度くらいかな。ベルリンにしては寒くない。マーケット会場に行ってルーティンのチケット取りを済ませ、メイン会場のベルリナーレ・パラストへ。

ベルリンでは連日9時からコンペ作品のマスコミ試写があり、これは僕のようなマーケット登録者も空席次第で入れる。9時の上映で入れないことはまずないのだけど、何となく連日心配ではある。少し並んでから、今朝は問題なく入場でき、良い席も確保できて一安心。

見たのは、“System Crasher”というドイツの作品で、癇癪を押さえることが出来ない9歳の少女ベニーの物語。母親はさじを投げており、施設で暮らしているけれど、ベニーとしては母親と暮らしたい。しかし事あるごとにベニーは怒りを爆発させ、暴力をふるい、全く手が付けられなくなってしまう。おかげで施設からは受け入れ拒否が相次ぎ、ベニーは行き場を失ってしまう…。

幼児期に受けた虐待のトラウマなのか、脳に障害があるのか、単に激しい性格なのか、ベニーの行動の原因は分からない。それだけに安易な解決策を示さないストーリー展開には誠実さを感じる。延々と癇癪を繰り返すベニーの姿に観客の胸は痛みこそすれ、不快感を覚えることはない。

それでも、あまりに同じパターンが続くので少し疲れてしまうのは確かだ(劇中の大人たちの疲労には比べようがないけれど)。そして、作り手もどうやって映画を終わらせていいのか分からなくなってしまったのではないかとも思ってしまう。良い意味でしんどい映画で、子役の演技には驚愕するしかないけれど、終盤にもうひと工夫が欲しかったかな。

11時に上映が終わり、急いで会場を移動し、11時5分からマーケット上映(映画祭出品作品ではない)でピーター・ウェーバー監督の“Inna de Yard”という作品へ。ジャマイカのベテランのミュージシャンたちの姿を描く音楽ドキュメンタリーで、枯れたレゲエが心に染みる…。

上映終わって12時40分。続けて同じスクリーンで12時50分から「パノラマ」部門に出品の“The Miracle of the Sargasso Sea”というギリシャ映画。それにしても幕間10分でちゃんと映画が始まるのがベルリンらしい。

しかし映画はダメだった! 陰鬱な雰囲気の中、問題を抱えた警察官と労働者のふたりの女性の物語であるようなのだけど、何が何だかさっぱり分からないまま映画が進んでいく。難解さが美学になっているかというとそうでもないので、難解さの意図を考えたり、時折ギリシャから陰鬱なトーンの作品が届く理由を考えたりしてみるものの、どうにもお手上げ状態だ。終盤になって、なにやら陳腐な形で事件らしきものが露わになり、解決を見るので、あまり深淵なメッセージはなかったのかもしれない。もっとも、僕の読解力に問題がある可能性は大いにあるけれど。

いったん上映を切り上げて、15時から18時までマーケット会場でミーティング。ハンガリー、トルコ、イタリア、フランスの人々などなど。昨日に比べて会場は活気を呈してきたので、なんだか安心する。

18時にマーケット会場を離れ、18時45分からのコンペ作品の公式上映を見るべく映画祭のメイン会場ベルリナーレ・パラストに行き、少し並んで入場。そして、東京国際映画祭の情報配信番組「TIFF Studio」用に、入場時の映像を同僚にスマホで撮影してもらう。この「TIFF Studio」に向けてどういう場面を取るべきか考えるのもなかなか大変だ(2月14日に配信予定)!

お目当ては、フランソワ・オゾン監督新作”By the Grace of God”(写真)。少年への性的虐待を繰り返していた神父に対し、過去に被害を受けた大人たちが数十年の沈黙を破り、ついに告発を始める。2014年から18年に至る内容で、それもそのはず、現在まさに係争中の、ガチの実話の映画化なのだ。

これまでのオゾン作品とは、確実に一線を画す新境地だと思う。いかなる主題を手掛けようと、ミステリアスであろうとコミカルであろうと淫靡であろうと、オゾン作品は常に一種の華やかさをまとっていた。それが今作には見事にない。こんなオゾンは初めてだ。虚飾を配した社会派作品をオゾンが撮ったことがあるだろうか?

しかし、ガチのリアリズムタッチかというとそうでもなく、オゾンはストーリーテリングで本領を発揮する。最初のシーンですぐに物語の全貌を明らかにし、一気に観客を引き込む。3人の男性のエピソードを繋ぎ、3章構成で展開する。この演出力は本当にさすがだ。僕は完璧に映画世界に没入した。

ああ、もっと書きたいのだけれど、今日はちょっと時間配分を間違えてしまった。興奮のうちにオゾンが終わり、22時15分からコンペのワン・チュアンアン監督の『Ondog』を見て、これまた見事な内容。しかし宿に戻って0時半。すると大して書いてないのにあっという間に2時になってしまった。明日も早いので焦る。『Ondog』の感想まで届かず、中途半端になってしまって無念の極み。今日はここで寝ます!
《矢田部吉彦》

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