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【MOVIEブログ】2019ベルリン映画祭 Day1

ベルリン映画祭開幕! コンペ作品しか事前予習ブログを書けなかったのが痛恨だけれども、本番に突入してしまったので例年通り日記ブログを書いていこうと思います。

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ベルリン映画祭開幕! コンペ作品しか事前予習ブログを書けなかったのが痛恨だけれども、本番に突入してしまったので例年通り日記ブログを書いていこうと思います。

日本を出たのが2月1日(金)。これまた例年通りベルリン入り前の数日パリで休暇を取り、とはいえ映画を観てばかりなので普段と全然変わらないのだけど、ともかく大好きなパリのシネコン「UGC Cine Cite Les Halles」と、主にサン・ジェルマンがある5区に集中しているいくつかの名画座、そしてベルシーにあるシネマテークをぐるぐると周遊しながら新作とクラシックを観まくるという至福の4日間。パリで映画漬けになることが僕の理想の休暇なのだ…。

6日(水)の昼の便でベルリンに移動し、16時には毎年泊っているホテルにチェックイン。すぐに映画祭会場に行ってIDパスと映画祭バッグをピックアップし、ホテルに戻って荷ほどきしてからパソコンに向かい、今年のベルリンのコンペの出品作の監督の旧作を観直す。

そうこうしているうちに同僚が到着したので、合流してミーティング。それから食事に出かけ、毎年恒例のグーラッシュ・スープとウィンナー・シュニッツェルとドイツビールで超満腹! ホテル戻ってまだ23時前だけどダウン。

明けて2月7日、木曜日。6時起床、パソコン叩いてから朝食でパンをたらふく頂いて、8時15分に外に出てみると、そんなに寒くない。5度以上はある感じ。例年のベルリンよりは暖かいかな? 僕はキンキンに冷えたベルリンが好きなので、ちょっと物足りないけれど。

まずはホテルから歩いて5分のマーケット会場に行って、8時半に開門するのを待ち、そして今日と明日の一般上映の中から見たい回のチケットをゲットする。

それから映画祭の会場のひとつであるシネコンの「Cine Star」に行き、9時からフランスの映画会社のプロモリール集(今年のラインアップ作品の予告編を集めたようなもの)を観る。続けて9時半と10時に連続して異なる会社のプロモリールを鑑賞。映画祭と併設されているマーケットの「European Film Market(EFM)」はともに今日からスタートで、各映画会社は会期中の商談につなげようと初日にプロモ集を見せる傾向があるのだ。

合間の時間に、東京国際映画祭が1月から始めた手作り配信情報番組「TIFF Studio」でベルリンのレポートを届けることになっているので、そのための仕込みをいくつか行う。なにしろ慣れないことなのでバタバタしてしまうけれど、慣れないことをやってみようというのが主旨のひとつでもあるので楽しんで取り組まなくては(次回配信は2月14日の20時)!

そういえば、各社のプロモ集で観たうちの1本に是枝裕和監督の新作『The Truth』があった。これはかなり早出し映像ではないかな? まだ完成もしていないだろうし。ともかく主演がカトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュ、共演にイーサン・ホーク。パルムドール受賞後の新作でもあり、まさに世界中が注目していると言っても過言ではない。

ドヌーヴは成功した女優に扮し、ビノシュは仕事を優先する彼女から愛情を受けられずに育った娘を演じている模様。フランスに舞台を移せども、是枝監督はやはり家族の物語を突き詰めていくのだなと分かって何だか嬉しい気持ちになる。本当に、本当に楽しみ!

12時半にマーケット会場に行き、ぐるぐると企業ブースを練り歩いてみる。まだまだ人が少ないな。それから15時まで4社とミーティング。

続いて、上映を見るべくシネコン「Cinemaxx」に移動してみると、長蛇の列が出来ている。係員に聞いてみると、まさに観ようと思っていたスクリーンの列だ。過去にこの劇場でこんな列が出来るのは経験がないのだけど、どうしたのだろう?

それでも何とか入場出来て観たのは、「フォーラム」部門で“Homing”というブラジルの作品。牧場で牛追いのカーボーイの仕事をする男の日々を詩的に美しく淡々と描くドキュメンタリー、と思って観ていたら、どうやらフィクションであるらしく、しかしその境目はあいまいなところがとてもいい。かなり静かな作品なので周囲の人々は深い眠りに落ちていたけど(あんなに並んだのに!)、映画祭初日に映画祭ならではの作品に出会えて、僕はとても幸せ。

「フォーラム」部門は、長年ディレクターを務めていたクリストフさんが昨年マラケシュ映画祭へと転身し、今年から新体制となっていて、女性3人のトロイカ体制でディレクションをしている。ひとつの部門にディレクターが3人なんて、さぞかし大変だろうなあと想像するものの、素敵な試みであるのは間違いない。フォーラムは作品数も多いので喧嘩になることもないのかな。

続けて17時半から同じく「フォーラム」部門を見ようとすると、先ほど以上の長蛇の列。何なんだ、今年は?

それでもまたまた無事に入場できたので、”Fourteen”(写真)というアメリカの作品を観る。これがとてもよかった! マラとジョーの2人の女性の長年の友情を描く物語で、ジョーがマラに精神的に依存しており、マラは問題を抱えるジョーを見放さずに辛抱強く付き合うものの、事態は少しずつ悪化していく…、という内容。ナチュラルな空気を最大限に重視し、時間の省略を効果的に用い、役者の演技も素晴らしく、ユーモアも欠かさず、ミニマルな映画ならではの良さに溢れた秀作だ。新体制の「フォーラム」部門、まったくもって快調!

上映終わって19時15分。朝食以来何も食べていないので、空腹が辛くなってきており、シネコン脇にあるショッピング・モールの地下の店でソーセージをパンに挟んだものにかぶりつく。おいしい!

そして久しぶりに地下鉄に乗り、4駅ほど行ったところにあるフリードリッヒ会場(メイン会場のパラストに次ぐ大きさ)でオープニング作品を観る。メイン会場で見る関係者揃いのオープニングももちろんゴージャスで素敵だけれども、ベルリン市民と見るオープニングの雰囲気も格別だ。

メイン会場のオープニングセレモニーの模様がスクリーンに中継される。今年限りで勇退する映画祭ヘッドのディーター・コスリック氏に向けてスタンディング・オベーションが起きる。素晴らしい。今年の審査員長はジュリエット・ビノシュ。本人登場前に紹介映像が流れ、キャリアを簡単にふり返る内容なのだけど何故か『汚れた血』に言及がない。『存在の耐えられない軽さ』や『イングリッシュ・ペイシェント』以上にビノシュと言えば『汚れた血』と『ポンヌフの恋人』だと思っているのは絶対に僕だけではないはず(キシェロフスキはあるにせよ)。

それはともかく、オープングセレモニーはつつがなく終了し、オープニング作品上映開始。コンペ部門作品でもある、ロネ・シェルフィグ監督の“The Kindness of Strangers”。

ゾーイ・カザン扮する母親が2人の息子を抱えてDV夫から逃げる物語。その夫が警察官だから始末が悪く、彼女を支えつつサブ・エピソードを構成する人物にアンドレア・ライズボロウ、ジェイ・バルチェル、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズら。そして最高の味を見せてくれるビル・ナイ。

題材はヘヴィーだけれど、ニューヨークを舞台にした軽やかなタッチで描かれて、とても見心地がいい。ロネ・シェルフィグ、会心作ではないかな? 何をやっても不器用な愛すべきダメ男を演じるケイレブ君が最高だし、ゾーイ・カザンも素晴らしい。しかし何と言っても(僕にとって)本作の白眉はアンドレア・ライズボロウで、キャリアベストではなかろうか?

帰りはタクシーに乗ってホテルに戻り、0時。眠い! 眠気と戦いながらブログを書くという久しぶりの感覚を味わいながら(ああ、今年も始まったのだなあとの感慨を抱きつつ)、そろそろ1時半で限界なので寝ます。充実のベルリン初日でした!
《矢田部吉彦》

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