【レビュー】『オールド・ガード』圧倒的アクションとチーム力に注目 コロナ禍に生命の倫理を問う側面も

シャーリーズ・セロンによる、全く新しいヒーローが誕生。目を見張る圧倒的アクションに、不老不死の傭兵たちの苦悩と葛藤の人間ドラマ、そして図らずも、いま世界が直面している病との闘いについても問題提起する。

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Netflix映画『オールド・ガード』独占配信中
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シャーリーズ・セロンが、今度はとてつもなく強く、複雑な全く新しいヒーローをコロナ禍に誕生させた。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のフィリオサや『アトミック・ブロンド』のロレーンを凌駕するような目を見張る圧倒的アクションに、“永遠の命”を持つ不老不死の傭兵たちの苦悩と葛藤の人間ドラマ、そして図らずも、いま世界が直面している病との闘いについても問題提起する。


シャーリーズのさらなる挑戦に世界が夢中!



原作は、プロのボディガードを描いた小説「アティカス・コディアック」シリーズで知られ、DCコミックやマーベルコミック、「スター・ウォーズ フォースの覚醒前夜」などを手がけてきた作家でコミックライターのグレッグ・ルッカによる人気グラフィックノベル。

ルッカ自身が脚本も手がけ、スパイク・リー製作のバスケットボール映画『ワン・オン・ワン ファイナル・ゲーム』やダコタ・ファニング演じる主人公がシャーリーズの幼少期とも若干重なる『リリィ、はちみつ色の秘密』などの黒人女性監督ジーナ・プリンス=バイスウッドがメガホンをとった。

「FilixPatrol」によれば、世界83か国で最も見られているNetflix映画であり、日本でも配信開始以来、連日「今日の総合 TOP10」にランクインするほど支持を集めている。“オールド・ガード”とは何世紀にも渡り、秘密裏に人類を守り続けてきた謎に包まれた特殊部隊のこと。そのリーダーがシャーリーズ演じる女性兵士アンドロマケことアンディで、今回もまた惚れ惚れするくらいにカッコいいのだ。

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『アトミック・ブロンド』でも壮絶な長回しのアクションシーンに挑んでいたシャーリーズだが、今作では彼女や“オールド・ガード”を演じるキャストたちは柔道や合気道、シラット、カリ、中国武術、洪家拳、太極拳、テコンドー、居合道、剣道などなど、世界各国の武術を取り入れたトレーニングを行ったという。そのため、銃で撃たれても、ナイフで刺されてもたちまち回復する不死の身体を武器に、歴史の節目節目で暗躍してきた最強集団として真実味たっぷり。今作でも体を張りまくり、アマゾン女族の両刃斧を振り回すシャーリーズに改めて惚れ直してしまう。

『ブラック・ウィドウ』や『ワンダーウーマン』といったアメコミ大作の劇場公開が軒並み延期となった中、彼らはある意味、清々しいまでに、人の善意がますます見えにくく悪意ばかりが剥き出しになる世界に新風を吹き込むヒーローたちを体現する。


チーム内に公認カップルも!全く新しい最強集団にファン続出


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シャーリーズによれば、劇中のアンディは少なくとも6,000歳以上。紀元前から(!)何度も生き帰り、人々を救ってきたが「世界は悪くなる一方」と疲弊しきっており、いよいよ気持ちが切れかかっているところに、米海兵隊員ナイルが新たな不死身仲間として覚醒する。

“新人”は“保護”し、チームに引き入れるのが彼らのルール。アンディが探しに向かう一方で、ナイルは動揺を鎮めようと映画『WAVES/ウェイブス』予告編にも起用されているフランク・オーシャンの「Godspeed」を聴く。その姿は彼女がまだ20代の若者にすぎないことを示し、若くして過酷な運命に無防備に放り込まれたことを意味する。

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とはいえ、アンディに“保護”されても逃亡を試みたり、百戦錬磨の彼女に不意打ちを食らわせたりと、ナイルは賢く勇敢で気骨のある女性だ。人間など、もはや守る価値はないのかもと思い始めていたアンディに影響を与えていくキーパーソン。

そんなナイルを演じるのは、鮮烈なスクリーンデビュー作『ビール・ストリートの恋人たち』のヒロインから力強く、大変身を遂げたキキ・レイン。ほかのキャストたちと共にキキも4か月に及ぶトレーニングに臨み、初々しくも果敢にアクションに挑みながら成長していく過程や、“限界”に近づくアンディとの師弟関係を通じて、新たな魅力を開花させている。彼女が“オールド・ガード”として生きる決意を固めるシーンは震えること必至だ。

また、“オールド・ガード”は多彩なバックグラウンドを持つメンバーばかり。その中で、同性カップルとして大きな注目を集めているのが、かつて十字軍で敵同士だったにも関わらず運命の恋人となったジョーとニッキーだ。


特に印象的なのは、この1,000年間に及ぶカップルを捕らえ、「ボーイフレンドか」と茶化す刺客たちを、「幼稚だな」とジョーが一蹴、ニッキーがどれだけ大切な存在であるかを詩的に語るシーン。

「Variety」によれば、編集段階の試写の本シーンで拍手喝采が起こったとか。原作者で脚本のルッカからカットしないようにと念押しがあったそうで、監督も「私がここにいる理由だから心配しなくていい」と伝えた、という誇り高きシーンとなっている。

日本でもこの2人には「本当最高」「ベストオブ尊い大賞」といった声が上がっており、演じている実写版『アラジン』ジャファー役のマーワン・ケンザリ(ジョー役)と、イタリアのアラン・ドロンといわれ『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』などで知られるルカ・マリネッリ(ニッキー役)にも新たなファンが生まれている。

加えて、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のベロニカ・グゥ演じるクインと、ある因縁を持つアンディが“カップル”であってほしい、と願うファンも続出。ジョー&ニッキーとアンディ&クインの「馴れ初めを観たい」とのSNSの声には賛同しかなく、先日アメリカの人気トーク番組に出演したシャーリーズ自身も、続編を作るならば、アンディとクインの関係を深掘りすることを楽しみにしていると語っている。


そのクインのスタントダブルを、イギリスを拠点にする日本人スタントパフォーマーで女優の大島遥さんが担当している点にも注目。


さらに、不死身となってまだ200年あまりと“新参者”で、不老不死であることを受け入れられずアルコールに溺れているブッカー役として、『君と歩く世界』や『レッド・スパロー』『フランス組曲』などで知られるベルギー出身のマティアス・スーナールツが出演し、重要な役どころを担う。

ブッカーが家族とどんな別れた方をしたのか、不死がどれだけの葛藤を伴うのかを、新人のナイルに話して聞かせる場面は涙なしには見られない。“秘密を墓場まで持っていく”という言い回しがあるが、死ぬことのできない者は幾多の後悔や罪悪感をも永遠に引きずり続けることになるのだ。今作が人間ドラマとしても優れていると評価を集める理由がここにある。


死に方は選べなくても、生き方は選べる


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劇中では、そんな“オールド・ガード”の特異な“体質”が、「認知症はこの世から消える」と豪語する巨大製薬会社の若きCEOに目をつけられてしまう。投資や挑戦によって将来の人々の命を救う、それは製薬会社のトップとしては確かに重要な考え方ではある。がんやALSなどのように完治が難しい病を治し、寿命を伸ばし、老いない肉体の追究を使命にしている人も実際にいる。ワクチンやウイルス特効薬の開発はいま現在、最も切迫した課題だ。

だが、そのために“彼ら”を実験台にしていいのか。今作は不老不死の兵士たちを扱いながら、私たちの命がどれだけの命に支えられて存在しているのかを、コロナ禍に改めて思い起こさせる作品でもある。

しかも、「ハリー・ポッター」ファンにはダドリー役でお馴染みのハリー・メリングが、彼らを実験材料にして不老不死の薬を開発しようする傲慢な悪役を一手に引き受けているから、“オールド・ガード”のチーム力や友情がいっそう際立つというもの。

不死身とはいえ、彼らは撃たれたり刺されたりすれば強烈な痛みを感じ、血も流れる。特になりたてほやほやのナイルは、こんな人生は望んでいないと、何のために永遠に(後悔や罪悪感を抱きながら)生き続けなければならないのか、という命題にぶち当たる。

その時が来たら、望まなくても私たちは死を止められない。アンディは神は存在しないと口にするが、死を迎える時だけは誰にも分からない。ならば、どう生きるべきなのかを、“オールド・ガード”たちが教えてくれるだろう。
《text:Reiko Uehara》

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