【MOVIEブログ】2020東京国際映画祭 Day4

11月3日、火曜日。8時半起床。4時間半寝られたので、ギリギリ爽快。外は雨上がりの朝、という感じかな。昨夜は雨に降られてしまったけど、これから回復するだろうか。

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『ポゼッサー』(c)2020 TIFF
  • 『ポゼッサー』(c)2020 TIFF
11月3日、火曜日。8時半起床。4時間半寝られたので、ギリギリ爽快。外は雨上がりの朝、という感じかな。昨夜は雨に降られてしまったけど、これから回復するだろうか。

9時半に職場に入り、本日はおそらく今年の映画祭で最も予定の詰まった日なので、全ての予定をこなせるか、改めて確認する。そしてどう考えても、危険な時間帯がある。これは移動が間に合わないだろう。甘かった。絶対に事故るだろうと判断し、司会通訳を差配している担当セクションに相談し、1件予定を変更してもらう。この期に及んで申し訳ない。でも恥をしのんで、見通しが甘かったことを白状して安全策をお願いする。

今年は来日の叶わぬ海外監督たちとオンラインでトークすることになり、「TIFFトークサロン」として40回近くのオンラインQ&Aを予定している。本日朝に、僕がモデレーターをする回としては始めての回を実施。お迎えするのは、『ポゼッサー』のブランドン・クロネンバーグ監督! 一発目にポゼッサー、痺れるな。

10時半に、トロントと接続確認。ブランドンにご挨拶し(先日、ネット上の初顔合わせは済ませている)、双方のネット環境を確認したり、段取りを確認したりして、10分ほどでいったん離れる。

本番までの時間を利用し、11時10分に早弁。崎陽軒のシウマイ弁当! 最高。

11時20分にスタジオに戻り、ブランドンも再合流し、11時半から本番開始。初めての試みということで、どうなることやらと思っていたのだけど、考えてみればZoomミーティングは散々こなしてきているし、そんなに身構えることもなかったのだ。というのも、なかなかうまくいった!

事前申込でトークサロンのZoomウェビナーに参加してくれた視聴者から質問がテキストで送られてきて、それを同僚がピックアップするか、僕が気づけば直接ピックアップして、僕と監督とのトークに差し込んでいくスタイル。初回にしてなかなかうまく進行できたのではないかな?

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ブランドンはそれほど饒舌ではないけれど、微笑みながら丁寧に応えてくれる。前作『アンチヴァイラル』から新作『ポゼッサー』に至る流れとか、『ポゼッサー』のアイディアがどこから来たかとか、はたまた父デヴィッド・クロネンバーグからの影響とか、ちゃんと答えてくれる。

とここまで書いて気付いた。トークサロンはYouTubeにアーカイヴで残っているので、興味がある人はそれを見てもらえればいい! ここで概要を紹介するよりずっとよいはずだ。文字にしておきたい気もするけれど、現在深夜を過ぎてブログが書き切れるか自信もないので、是非『ポゼッサー』の「TIFFトークサロン」のYouTube見てもらいたい!(写真はトークサロンのひとこま)。




12時20分に「トークサロン」が終わり、六本木ヒルズの映画祭の臨時事務局と同じフロアの会議室を改造した特設スタジオを出て、劇場へ向かう。

12時34分から、「ワールドフォーカス」部門の『トゥルーノース』の2回目の上映後Q&A司会へ。清水ハン栄治監督とのトーク。映画で描かれるエピソードを語ってくれた証言者の立場について、独裁国家が証言を防ぐために用いる手段について、この物語をアニメーションで描く意義について、そしてアニメーションで用いたキャラクター描写の選択について、など、清水監督の話には全て深く頷いてばかりだ。話が本当に丁寧で上手い。

アニメーションという親しみやすいジャンルを選択し、作品の言語も英語を用いていることで幅広い伝播を企図し、そして世界のアニメーション映画祭からの招待が相次ぐ『トゥルーノース』、今後の展開がとても楽しみで、注目し続けたい。

13時20分から「Tokyoプレミア2020」部門で『蛾の光』の上映後QA&司会へ。リャオ・チエカイ監督、あらい汎さん、そして、ただのあっこさん、の3名のご登壇。『蛾の光』の繊細な世界をトークで展開するのはなかなかに難しく、チエカイ監督は英語で話すのだけど、ちょっと時間が足りなくて深いところまで届き切れなかったかな。

それでも、韓国人の女優を主演に配し、しゃべらないダンサーを演じてもらったことの経緯、パントマイム演者のあらいさんとの出会い、そしてあらいさんが本作に採用したパフォーマンスの意味、本作における音楽の使い方など、十分に興味深い話を聞かせてもらう。しかし、本当に繊細な作品の奥底に触れるには、監督の死生観に立ち入る必要があるはずで、次回ではその一端だけでも聞き出せたらなと、効果的な質問を考えてみようと思う。

13時50分に終わり、14時にスクリーンを移動して、14時18分から「特別招待作品」に出品されている沖田修一監督新作の『おらおらでひとりいぐも』の上映後舞台挨拶兼Q&Aの司会。登壇者は、沖田修一監督、青木崇高さん、そして宮藤官九郎さん。本作の主演は田中裕子さんで(本日はご不在)、彼女を取り巻く3人の男(役柄は伏せて追おう)のうちのふたりを演じるのが青木さんと宮藤さん(もう1名は濱田岳さんで、本日ご不在)。

やはり盛り上がりますね、このメンバーは。田中裕子さんと共演した感想を青木さんと宮藤さんに語ってもらうと、田中さんに現場で会うときは、既に役になり切っているので、女優田中裕子に接するというよりは、役の桃子さんと接するという状態になっており、なんだか全く意識することなく自然に一緒にいた感じ、と青木さんと宮藤さんは全く同じことを言う。なんだか、さすが田中裕子、というエピソードだなあ。

あとはもう爆笑で、青木さんと宮藤さん(と濱田さん)の3人で、自然に立ち居振る舞いの位置が決まっていったという話になると、奥から監督が「へえー、そうだったんだー」ってまるで第3者のように笑って話を聞いているのがおかしくておかしくて、さぞかしいい現場だったのだろうなあと思わせて、壇上で僕も幸せ。数日後に公開なので、映画祭での上映がはずみになりますように。

15時に終わり、事務局に戻り、昼のお弁当が残っているかなと聞いてみると、鳥久の唐揚げ弁当が残っていた!ということで、2個目のお弁当をとても美味しくいただく。その途中に独立映画鍋のシンポジウムのオンライン打ち合わせがあったのでアクセスすると、食べながらでいいですよ、と言ってもらえたので、お言葉に甘える。

16時から、独立映画鍋のオンライントークイベント本番。司会の植山さんの仕切りのもと、第1部がフィルメックス市山さんと僕とで、今年の映画祭の実施に関する状況についてトーク。第2部が、ロカルノやタリンなどの映画祭の関係者を交えて、世界の現在の映画祭の状況について。第3部が、深田晃司監督、舩橋淳監督、広瀬奈々子監督ら、監督たちと映画祭、そして配信などを巡るトーク。第4部が、全体の総括的トーク。

打ち合わせを含めて、2時間半のオンライントーク。今年を象徴するような、貴重な時間だった気がする。ただ、終盤ぐったりと疲れてきたことは否定できず、なんだかもっと気の利いた発言が出来たはずだと凹んでしまった。個人的な総括、そして今後への考え方は、少し落ち着いてから考えたい。いや、でも渦中だからこそ思うこともあるのか…。あとになると喉元を過ぎてしまう。

スターバックスに行って大量のコーヒーをポットに入れてもらい、職場にもどって、夜の「トークサロン」の段取りに関して同僚と打ち合わせ。

19時にEXシアターに行き、「特別招待作品部門」に出品の『滑走路』の上映前舞台挨拶司会へ。大庭功睦監督、水川あさみさん、浅香航大さん、そして新人の寄川歌太さん。水川あさみさんは、昨年の『喜劇 愛妻物語』に続き2年連続でお迎え出来て嬉しい。水川さんも再会を喜んで下さった(と思う)! 浅香さんとは『太陽を掴め!』以来だけど、当時僕は浅香さん登壇の回の司会が出来なかったな…、と記憶を掘り返す。

映画祭としてはともかくご縁が全てなので、司会で同席することがどこまでその役に立つか分からないけれど、ともかくこういう機会には駆けつけたい。

作品は亡くなった歌人の方の歌をもとにした群像劇で、創作の背景を大庭監督に語ってもらう。みなさんがお気に入りの歌を上げ、その理由を語ってもらう時間があり、監督がいきなり早口のコメントを読み上げたので通訳さんが監督にツッコミを入れて場内が笑うひとときも。本作はヘヴィーなテーマを構成の妙で重く見せ過ぎず、余韻を残す演出が印象的な作品。登壇に際しては、軽過ぎるわけにはいかず、かといって重過ぎるのも場の空気を重くしてしまうので、なかなか難しいのだけれど、かなり程よい線で行けたのではないかな? 監督が基本的に明るいのと、やはり水川さんと浅香さんに華があるから、真剣なコメントとよくバランスがとれていたのだと思う。

今年は例年より「特別招待作品」の司会をすることが増えたけど、とても勉強になる。

20時15分に事務局にもどり、夜のお弁当、ガパオ弁当をがばっと頬張るけれど、やはり5分では無理だった。半分だけ食べて、劇場へ。

20時半から、「ワールドフォーカス」の『海辺の彼女たち』の2度目の上映後Q&A。藤元監督、撮影の岸さん、そして出演のディン・ダーさん。本日は出演したヴェトナムの3人の女優さんが寄せてくれたコメント動画も流すことが出来てよかった。ディン・ダーさんは、ロケ地の青森で監督たちが縁を作られた方で、ご本人は当初は通訳で現場に来ていたらしいのだけど出演することになったという経緯を語ってくれて(映画とは実は少しギャップがあるのが面白い)、場が和んで気持ちいい。

ただ、内容はシリアスなので、日本で暮らす外国人の貧困問題や、監督の主題を選ぶ視点に関する興味深い質問が続く。「前作ではミャンマー、今作ではヴェトナム、というように日本における『他者』を描き続ける監督は、今後もその主題を重視していくのか」、という質問に対し、実はミャンマーもヴェトナムも「たまたま」であり、他者を描こうという意識なのではなく、自分の置かれた環境も彼らに近いところにあり、むしろ彼らの苦境は自分の苦境になり得るという「自分ごと」として描いている、ゆえに、毎回外国人を描くとは限らないし、描くかもしれない。という説明がとても腑に落ちる。いい質問だった!

客席には、前作『僕の帰る場所』のミャンマーの少年兄弟が見に来ており、客席から挨拶して感動的。

21時10分に終わり、「TIFFトークサロン」のスタジオに小走りで向かい、21時20分から『アフター・ラヴ』のアリーム・カーン監督をお迎えする。

イギリスからの中継、田舎に来ているという、素敵な部屋。オンラインで相手のいる場所が毎回素敵で、その指摘から入るのが定番になるかも? 父がパキスタン人、母がイギリス人であるという監督、『アフター・ラヴ』は母へのラヴレターであると語ってくれる。劇中のヒロインはかなり母に似ており、実話ではないのだけれど、ふたつの文化圏が交差する場で育った自分のメンタリティーは色濃く反映されているという。これは作品を見た人であれば深く納得できるのではないかな。

とてもスムーズに会話が進み、いやあ、トークサロン、面白いではないか! 詳しくはアーカイヴを見て下さい!

22時5分くらいに終了し、劇場のシネマズへ移動。22時半から、『佐々木、イン、マイマイン』の上映後QA&司会へ。登壇ゲストは、内山拓也監督、藤原季節さん、そして細川岳さん。

おそらく、一生忘れることのできないQ&Aになったと思う。作り手が込めた魂の熱量がこれほど多い作品のワールドプレミア上映に立ち会うことは滅多になく、そこには常人には計り知れない感情が渦巻いており、なおかつ映画のエンディングがあまりにも感動的であるために、客席も壇上も、もう誰も言葉が出ないのだ。

その場の雰囲気を和らげるのが司会の役割かもしれないけれど、僕にはそんな技量はないし、そもそもそんな気もない。いま、これ以上書くことが出来ないので、2度目のQ&Aの時にまた触れよう。

終了してロビーに出ると、そこでも感動的な光景に接する。多くは書けなくて(感情的にも、時間的にも)申し訳ないのだけど、ちょっとしばらく自分の胸の中にとっておきたい。

終了したのが23時、スタジオに戻り、23時10分から「TIFFトークサロン」、今回は『スウェット』のマグヌス・フォン・ホーン監督。50分間があっという間に過ぎていく、充実のトーク。是非アーカイヴで見てもらいたい。

0時過ぎに職場に戻り、食べかけのガパオ弁当の残り半分を食べ、キーマカレー弁当が残っていたのでそれも一緒に頂き、本日も弁当4つで、好調。

急ぎの用を済ませ、ブログを書き始めたら、すでに3時を軽く回ってしまった。ともかく今日は無事に全ての登壇を事故無しで乗り切ることができたので、本当によかった。素晴らしい瞬間がいくつもあった1日だった。そして今朝、危険を回避しておいて、本当によかった!

ブログ、読み返しもせず、このままアップします。これもライブということで。はやく上がって寝ます!
《矢田部吉彦》

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