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【ネタバレあり】韓国スリラー『ザ・コール』戦慄のラストシーン…運命が変わった瞬間に注目

新型コロナウイルスの影響で韓国でもいくつかの話題作が公開延期を余儀なくされる中、劇場公開からNetflixによる世界配信に踏み切ったことで、ここ日本でもタイムラグなく最新作品を楽しめるようになった。11月27日より配信開始された『ザ・コール』もそのひとつ。

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新型コロナウイルスの影響で韓国でもいくつかの話題作が公開延期を余儀なくされる中、劇場公開からNetflixによる世界配信に踏み切ったことで、ここ日本でもタイムラグなく最新作品を楽しめるようになった。11月27日より配信開始された『ザ・コール』もそのひとつ。

すでに連日「今日の映画TOP10」入りを果たしており、SNS上でも絶賛の声が止まらない。『ザ・コール』は過去と現在、2つの時間に生きる2人の女性を1本の古いコードレス電話がつなぐことから始まる。その設定は、日本でもリメイクされたドラマ「シグナル」を彷彿とさせ、『パラサイト 半地下の家族』のような謎の地下室、『哭声/コクソン』のような除霊シーンも登場し、ゾクゾクが止まらない韓国スリラーを待っていたファンなら熱狂必至。

過去の出来事が影響して未来がガラリと変わってしまうことから『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なども思い起こさせ、さらには『アベンジャーズ』シリーズも頭をよぎる、よく練られたタイムミステリー・スリラーとなっている。

メロドラマ要素一切なしの“女性映画”でもある


『ザ・コール』Netflixにて配信中
主演は「美男<イケメン>ですね」や「アルハンブラ宮殿の思い出」などで日本でも人気のパク・シネと、2018年の『バーニング 劇場版』でイ ・チャンドン監督にオーディションから見出された新鋭チョン・ジョンソ

“アジアの女神”ともいわれるパク・シネは、Netflix映画『#生きている』ではユ・アインとウイルス感染の世界をサバイバルしたばかりだが、続く本作でも新境地となるスリラーに挑んでいる。緊迫感と臨場感をもたせた恐怖演技で魅せるが、決して単なる“スクリームクイーン”では終わらない。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
そして、あるきっかけから狂気と粘着気質を剥き出しにしていくチョン・ジョンソの豹変演技は、2020年を代表する忘れられない女優のひとりとしてその名を刻まれるに違いない。

加えて、元ミスコリアで変わらぬ美貌の持ち主としてメディアに取り上げられる『王の涙 -イ・サンの決断-』などのキム・ソンリョン

『ザ・コール』Netflixにて配信中
「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」の“おばあさん”役のイエル(彼女は本当にカメレオン!)ら、女性たちの登場が印象深い。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
韓国映画・ドラマ好きにはたまらないイ・ドンフィオ・ジョンセといったバイプレイヤーたちも出演しているが、基本的に女性2人が交互に出ずっぱりで1本の電話を通じて対峙し、テンポよく畳みかける展開に猟奇性と意外性が詰め込められている。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
『お嬢さん』『オールド・ボーイ』のシド・リムが製作を手がけ、監督は高い評価を受けた短編映画『バーゲン』が「ショートショート フィルムフェスティバル &アジア2017」で日本にも紹介された現在30歳のイ・チュンヒョン。長編デビュー作にして、原案の映画『恐怖ノ黒電話』(2011)を韓国テイストに見事に脚色。一度観ただけでは消化しきれない、耳にこびりつくコードレス電話の着信音のように不気味な映画本編とは裏腹に、イ監督の爽やかなルックスがまるで俳優のようだと本国では話題となっている。

3枚目がイ・チュンヒョン監督

過去からの電話で、同じ家に住む2人の女性の運命がつながる


物語は2019年、主人公ソヨン(パク・シネ)がかつて暮らしていた洋館を久しぶりに訪れるところから始まる。大好きだった父(「刑務所のルールブック」のパク・ホサン)は火事で「1999年11月27日」に亡くなっており、母(キム・ソンリョン)は脳腫瘍に冒されて入院中。火事の原因をつくった母とは不和が続いている。

スマホをどこかでなくしたらしいソヨンは、仕方なく家の物置からコードレス電話を引っ張り出してくる。ゴツくてアンテナのついた、液晶画面もない旧型のコードレス電話だ。


すると、見知らぬ女性から電話がかかってくる。「母に殺される」「助けて」…。訳が分からず、すぐに電話を切るソヨン。さらに、謎めいた地下室で古びたクマのぬいぐるみや日記帳を見つける。その日付は20年前、「1999年8月27日」には「霊を撃退するために お母さんが私に火をつける」とあり、「1999年11月26日」付の女性の写真も挟み込まれていた。近所でイチゴ農家を営むソンホおじさん(オ・ジョンセ)に見せると、写っている女性は「ヨンソク」、母親が霊媒師だったという。ソヨンはその20年前の女性と、“電話で会話した”のだ。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
同じ「ヨンチョン里4番地」の洋館に住むソヨンとヨンソク(チョン・ジョンソ)は、20年の時を超えて1本のコードレス電話でつながる。しかも、どうやら過去にいるヨンソクからのコールだけが未来へと通じるらしい。

1999年を生きるヨンソクは28歳で、2人は同い年。90年代に絶大な人気を誇り、「BTS」がカバーするほど現在のK-POPに大きな影響を与えた韓国の元祖ヒップホップ・グループ「ソテジ・ワ・アイドゥル」のソ・テジの大ファン。2019年のソヨンは、YouTubeで調べたソ・テジの2000年の復活ソロ曲「ウルトラマニア」を電話越しにヨンソクに流して聴かせる。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
さらに、2019年には小さなコンピュータといえるスマホがあり、音楽を楽しむのはカセットではないこと、スマホで買い物やビデオ通話ができることなどを話すソヨン。そんな中、ヨンソクは実の母親を亡くし、霊媒師の養母ジャオク(イエル)によって世間から隔離されるように暮らしていると打ち明ける。お互いの身の上に共感し合った2人は少しずつ距離を縮めていくことになるが…。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
では、2人の女性たちの選択によって運命が変わった瞬間に注目しながら本作を観ていこう。

●運命が変わった日:「11月27日」


『ザ・コール』Netflixにて配信中
ソヨンとヨンソクは1999年11月21日に一度、対面している。ヨンソクの養母ジャオクは「ヨンチョン里4番地」の洋館を売りに出しており、少女のソヨンを連れた両親がこの日、見学に来た。気を利かせたヨンソクは電話を通じて、健在だった頃の父の声を2019年のソヨンに聞かせる。涙するソヨンに、「父親を生き返らせてあげられるかも」とヨンソクが言い出す。「1999年11月27日」ガスの止め忘れから起きた火事を未然に防いでみせる、というのだ。

まさか…? と思ったそのとき、ソヨンの周囲の世界が揺らぎはじめ全てが再構築されているような感覚に陥る。足に残っていた火傷の跡がすっかり消え、スマホは手に戻り、家の雰囲気も衣服も何もかもが一変。父と母も元気な姿で現れる。未来が変わってしまった瞬間だ。

●運命が変わった日「12月29日」


『ザ・コール』Netflixにて配信中
未来が変わったことで父母と幸せな日々を満喫するソヨンは、やがてヨンソクの“過去から電話”に応じなくなっていく。ヨンソクにとっては未来とつながる電話だけが唯一のよりどころ。この辺りからヨンソクの本性が少しずつ顔を表し始めてくる。

その頃のヨンシクは、ソヨン家の火事をくい止めるために外出したことが養母にばれ、地下室で“除霊”されていた。恐らくだが、何らかの特別な能力を持つ養母は、彼女なりにヨンスクの狂気の暴走をくい止めようとしていたのかもしれない。除霊の最中に養母が目にしたビジョンは、この後に起こる悲劇の未来を予見しているので注目だ。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
「なぜ電話に出なかった!」と激昂する彼女に不穏さを感じ始めるソヨン。改めて「ヨンソク」の名を検索してみると、“養母が魔除けと称して養女を殺害した”という新聞記事が飛び込んでくる。

その事実をソヨンがヨンソクに伝えると、逆上した彼女は反対に養母を殺害してしまう。少しも悪びれる様子のないヨンシクは「生まれ変わった気分」「今日が誕生日みたい」と、幽閉状態だった家から外へ飛び出し、90年代のロックサウンドを背景に憧れのチキン屋や最先端ファッションを堪能する。ショッキングなレッドカラーのウィッグで大変身したヨンソクの姿に驚いたのは、20年前のイチゴ農家・ソンホだ。その彼もまた、ヨンシクによって殺害されてしまう。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
一方の2019年では、イチゴを持って家を訪ねてきたソンホが突然姿を消してしまっていた…。嫌な予感がしたソヨンは慌てて駆け出すが、ソンホのイチゴハウスには人影もなくボロボロの状態。地元の派出所を訪ねてみると、随分前に亡くなっているという。当時の手帳を調べたペク警官(イ・ドンフィ)によれば、ソンホと養母殺害の被疑者としてヨンソクの名前が書かれていた。

1999年のヨンソクが2人を殺害したことで、さらに未来が変わった。ソヨンが当時の新聞を見返してみると、“養母、養女殺害”の記事に代わって“ヨンソク逮捕”の写真が映し出されている。

●運命が変わった日「12月31日」


『ザ・コール』Netflixにて配信中
「あなたなの?」とソヨンはヨンソクを問い詰めるが、逮捕・収監されることを知ったヨンソクは、「なぜバレたのか」とそればかりを気にする。果てには父の命を助けた代償に、なぜ警察に捕まることになるのかソヨンに調べろと要求してくる。もうここまで来ると、ソヨンは恐怖を感じるしかない。

タイミングの悪いことに1999年の12月31日は、ソヨンの父と少女ソヨンが「ヨンチョン里4番地」を再び訪ねていた。面倒なことが起きれば、ヨンソクの取る手段はもはや1つ。ソヨンの父が第3の犠牲者となり、少女ソヨンは人質となってしまう。

2019年ではドライブ中だったソヨンと父。再び時空が大きくうねり出し、助手席の父の姿が少しずつ霞となって消えてしまう様子はまるで『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のよう。あの幸せな日々は終わり、何もかもがまた変わってしまった。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
「私が同じ目に遭わせてやる」父が殺されたことを悟ったソヨンは反撃に出る。圧倒的に立場は不利だが、彼女にはスマホがある。ネットにしろ、日記や警官の手帳にしろ、ヨンソクが持っていない“情報”を手に入れられるのがソヨンの唯一といってもいい強みだ。ソヨンは「1999年12月31日」夕方5時に爆発事故が起こった、とあるビニールハウスにヨンソクを誘導する。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
すべてが上手くいけば、もう二度と過去からの電話が鳴ることはないはずだった。だが、荒れた洋館に再び響く着信音! 次の瞬間、見る見るうちにソヨンの足に火傷の跡が戻り、再び時空が歪んでいく。

ソヨンが目を覚ますと、その“新たな2019年”では家中、冷蔵庫だらけ。爆発事故でヨンソクは死んでおらず、また逮捕もされないまま猟奇殺人を繰り返しながら2019年まで生き延びてきたのだ(冷蔵庫が意味することは…恐ろしくて考えたくもない)。ただ、2019年にソヨン自身も存在していることから、1999年の少女ソヨンは無事ではいるらしい。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
世間がミレニアムの年越しを迎えようとしていた大晦日の夜、今度は夫や娘と連絡がとれなくなったことからソヨンの母が派出所のペク警官と「ヨンチョン里4番地」に駆けつけていた。ヨンソクと少女ソヨン、ソヨン母が1つ屋根の下に集まったそのとき、2019年に生きていた現代ヨンソクとソヨンも一騎打ちとなる。

『ザ・コール』Netflixにて配信中
過去ではソヨン母が、現在ではソヨン自身が刃物を手に迫ってくるヨンソクから逃れようとする。このシーンの対比の見せ方は見事で、迫真の演技を見せるパク・シネ、本当に何かが憑依したかのようなチョン・ジョンソ、そして母性を滾らせて娘を守ろうとするキム・ソンリョン、女優たちの迫力に圧倒され観る者の緊張感もピークとなるはず。

●運命が変わった日「2020年1月1日」


『ザ・コール』Netflixにて配信中
やがて、すべてに片がついたと悟ったソヨンは母の病室に向かうが、そこに姿はなかった。次に父の墓前に向かうと、首元に大きな傷跡のある(大晦日の激闘を生き延びた)母が現れる。手に汗握って見守っていた誰もが「よかった、生きていた」とホッと胸をなで下ろすと、エンドロールが始まる――。

だが! 本作はそう簡単には終わらない。ソヨンと腕を組んで歩いていた母の姿が、フッと消える。1999年のヨンソクがソヨン母にとどめを刺したことで再び未来が変わってしまい、戦慄の“本当のラストシーン”へとつながっていくのだ。


「変えられなくなる」という未来の自分からの伝言を守り、コードレス電話を手放さなかった、神経を逆なでする猟奇殺人犯ヨンソクの勝利を目の当たりにする本作。直接的な殺りく描写はないものの、想像力をかき立てる生々しい映像。見終えてからもあのコール音が耳の中で鳴り続け、あざといまでの鮮明な赤色も脳裏に残り続ける。完敗だ。

2019年の世界が変容していくVFXや時代を反映させたセット、ハリウッドで『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』や『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』などに関わったカラリストのヴァネッサ・テイラーによる色彩美なども、できればスクリーンで観たかった!と思ってしまう完成度。

韓国映画が注目を集めた今年、年末は新世代が放つハイクオリティな韓国スリラーを堪能してみてほしい。

Netflix映画『ザ・コール』は配信中。
《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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