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違うからこそ高め合える。出会いが広げる可能性についての薫り高き物語『パリの調香師 しあわせの香りを探して』

『パリの調香師 しあわせの香りを探して』は、今までほとんど描かれることのなかった香りの魔術師の物語。

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『パリの調香師 しあわせの香りを探して』
(C)LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINEMA 『パリの調香師 しあわせの香りを探して』
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 誰にでもきっとある、お気に入りのフレグランス。その香りに包まれるだけで、華やかな気分になったり、安心したり、リフレッシュしたり。だが、それを作り上げた人々、調香師たちについて思いを巡らせたことがあるだろうか。『パリの調香師 しあわせの香りを探して』は、今までほとんど描かれることのなかった香りの魔術師の物語。ヒロインのアンヌを通して、天才調香師の驚くべき才能、ストイックなまでの日常、そして才能を持つ者の責任や孤独、苦悩、そして大いなる喜びを映し出していく。

 ディオールの撮影協力、さらにはジョーマローンロンドンで多くの人気パフュームを手がけてきたエルメス現専属調香師クリスティーヌ・ナジェルからのアドバイスを得て、本職をも唸らせるリアルで繊細な描写を実現。「調香師としてのアンヌの所作は完璧!」との賞賛が、日仏の香水関係者からも寄せられている。

 フランスでは新型コロナウイルスによるロックダウンが開けた、映画館営業再開初日である2020年6月に公開。深夜の先行プレミア上映には、待ちわびた人々が詰めかけ定員オーバーに。急遽スクリーンを追加するほど熱狂的に受け入れられ、その後、興行成績No.1を記録。思いがけない出会いが素敵な奇跡を呼ぶことを描き出した本作は、コロナ禍でうつむきがちになった人々への大きなエールに。フランスに勇気を与えた薫り高き人間ドラマが、日本にも2021年新春に到着する。

(C)LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINEMA

新たな調和を生み出すアンヌとギヨームの凸凹コンビ



 ヒロインのアンヌはディオールの大ヒット香水「ジャドール」ほか、名品を作り出してきた調香師。わずかな香りも嗅ぎ分ける天才だ。だが、繊細であるが故にストレスから嗅覚障害に陥った過去を持ち、今では地味な仕事をこなす日々を送っている。そんな彼女が出会ったのが、親権も仕事も失いそうな運転手ギヨーム。性格も社会的地位も、生活環境も興味の対象も全く違う凸凹コンビは、衝突を繰り返しながらもそれぞれの長所で短所を補い合い、影響し合ってやがて互いを高め合っていく。出会うはずもなかった二人が出会ったとき、思いもよらない調香が生まれ「再起」の風が吹き始めるのだ。

その様子は、まるで『最強のふたり』や『グリーンブック』のような良質バディ映画を思わせる。とはいえ本作は、決して既視感のある映画ではない。人生を様々な個性を持つ香りを組み合わせて生まれる「香水」になぞらえ、クセの強い人間同士が引き起こす素晴らしき化学反応、人と人とが出会うことによって広がる無限の可能性について描く、心温まるスタイリッシュ・ムービーなのだ。

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 また、絶対音感ならぬ“絶対嗅覚”を持つアンヌの仕事ぶりも本作の見所。調香師という職業柄、感覚を鈍らせないようにワインやたばこを控えたり、疲れないよう夜遊びは避けたり、ホテルのシーツを洗った洗剤の匂いが気になりMyリネンを持参したりと、鼻が利く者ならではの生きづらさも紹介されている。アンヌはgift(天賦の才能)を与えられた者の宿命を受け入れストイックなまでに自分を律しているが、才能ゆえに生まれる孤独や能力を失う恐怖との闘いも描写されていて、プロ意識の高さにも恐れ入る。

そんなアンヌに刺激されギヨームが匂いを嗅ぎ分ける才能を開花させていく様子も興味深い。人と人が助け合い、高め合っていく。そんな理想的な関係性が生まれるプロセスを丁寧かつ叙情的に、そしてときにユーモラスに映し出す本作は、希薄になりがちな人間同士の交流や助け合いの精神の素晴らしさを、コロナ禍に見舞われた今だからこそ、ひときわ強く思い出させてくれることだろう。

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『パリの調香師 しあわせの香りを探して』がもっと楽しくなる豆知識



昔から、ファッション同様、香水は映画界との関係が深い。例えば、パルファムの名作「シャネルNo.5」。記者に眠るときに着るものは何かと問われたマリリン・モンローが、「シャネルNo.5よ」と答えたことで一躍有名になった。その後も、広告にキャロル・ブーケ、ニコール・キッドマン、オドレイ・トトゥが起用され、現在はマリオン・コティヤールが新しい顔として活躍している。その名も独創的なら、香りも個性的。人によっては嫌悪感を示す“アルデヒド”を隠し味のように加えることで、使用された花々の香りを劇的に引き立たせ、伝説を作り上げることに成功したという逸話は有名だ。この話は劇中でも、“調香の妙”を表現するエピソードとしてアンヌが紹介している。決して、好ましい香りだけで構成されているわけではなく、個性的なクセ強めの要素が名作誕生の鍵となる。調和がすべて。そんなところは、映画作りとも共通しているのかもしれない。

 ディオールの「ジャドール」もまた長年愛されている名作だ。シャーリーズ・セロンがミューズを務めるこの香りは、劇中ではアンヌが調香したとされている。実際には、カリス・ベッカーという大御所調香師によるものだが、香りに造詣が深い人なら、「彼女がアンヌのモデルの一人なのかも!」とピンとくるかもしれない。実際には明言されていないのだが。

フランスでは、一流の嗅覚を持つ調香師は敬意を表して「鼻(nez)」と呼ばれる。その才能はもちろん、彼らの日常もとても興味深い。これまでファッション系お仕事映画は、『プラダを着た悪魔』を始め、数々のドキュメンタリーにも数多い。だが、調香師の仕事がここまでフォーカスされて描かれることはなかった。プロフェッショナルの何たるかを体現したヒロインが登場し、知られざる業界の裏側を垣間見られる本作は、お仕事映画としても必見だ。

(C)LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINEMA
映画の世界とも密接な、グラマラスなトップメゾンの香水。だが本作には、そんな洗練された香りのエピソードだけではなく、幸せな記憶を呼び覚ます懐かしい香りの逸話も登場する。作品を観ていると、大好きなフレグランスや思い出の香りが思い出されて、それらに包まれたくなることだろう。温かい気持ちになったその後は、幸せになれる香りを今一度思い出してみてはいかがだろうか。

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《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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