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NHKよるドラ「恋せぬふたり」で“当たり前”を見直そう 考証・中村健、企画・演出の押田友太が登壇<アーカイブ>

岸井ゆきのと高橋一生がW主演を務めるNHKよるドラ「恋せぬふたり」から、アロマンティック・アセクシュアル考証を担当する中村健さんと、企画・演出の押田友太さんを迎え、オンライントークイベントを開催した

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NHKよるドラ「恋せぬふたり」で“当たり前”を見直そう 考証・中村健、企画・演出の押田友太が登壇
NHKよるドラ「恋せぬふたり」で“当たり前”を見直そう 考証・中村健、企画・演出の押田友太が登壇
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3月21日に最終回を迎えるNHKよるドラ「恋せぬふたり」岸井ゆきの高橋一生をW主演に迎えた本作は、他者に恋愛感情を抱かない「アロマンティック」であり、他者に性的に惹かれない「アセクシュアル」という双方の面を持つ「アロマンティック・アセクシュアル」のふたりが主人公

シネマカフェでは「Let’s Keep Updated」と題して、映画やドラマをきっかけに従来の価値観や知識のアップデートをトークしながら考えるオンラインイベントを開催してきたが、今回はこの「恋せぬふたり」にてアロマンティック・アセクシュアル考証を担当する中村健さんと、企画・演出の押田友太さんを迎え、本作が立ち上がった経緯や作品の魅力について、また、印象的なシーンなどについてたっぷりと語ってもらった。

企画の立ち上げ…「恋愛をしないドラマがあってもいい」


物語は、「まるまるスーパー」の営業企画部に務める兒玉咲子(岸井ゆきの)が会社や家での出来事をきっかけに「恋愛 しない わからない おかしい」とネットで検索し、「恋愛しないことはおかしいことじゃない」と力説するブログと出会うところから始まる。そのブログ主こそ、店舗勤務で野菜売場担当の高橋羽(さとる/高橋一生)。恋愛はしないけれど、このままずっと1人でいることは寂しい咲子は「私と恋愛感情抜きで家族になりませんか?」と羽に提案、“家族(仮)”の同居生活をスタートさせる。

本作の企画と1,4,7話の演出を手がけた押田さんは、「公式サイトの製作ブログにも書きましたが、僕が初期に手がけた青春ドラマは部活を頑張る高校生のドラマでしたが、それだけだとドラマになりづらいという話が出て、やっぱり恋愛要素、高校生だと恋愛するもんじゃないのという話になり、入れたほうがいいということになりました。僕もドラマを作るのにあまり慣れていなかったこともあって、ドラマってそういうものなんだろうなと。でも、本当にそれでいいのかなっていう、なんで部活を頑張るだけのドラマじゃだめなのかな、というちょっとモヤモヤはありました」と明かす。

そんな中、偶然にも「恋愛を描かないとドラマにならないのか」ということを取材相手から質問される機会があったそう。「その方がアロマンティック・アセクシュアルに詳しい方で、当事者の中には、(恋愛をする前提で描かれることで)自分たちが否定されている気分になる人もいます、と言っていて。自分が思っていることと一致したというか。もしかすると、僕たちは恋愛を描くことをいいものとしてやってきたけれど、実はそれで傷つく人もいるんだなということに改めて気づいて。では恋愛をしないドラマもあっていいんじゃない? と思って企画を出しました。NHKのよるドラは“若手枠”といわれるんですけれど、そういう若手が作るドラマということで企画を出して、受け入れられました」。

さらに、考証の中村さんが「取材もしていただいたので、企画の段階からこういうことをやりたいと思っているんです、という話を聞いていて、1年半とか2年くらい前から何だかんだ関わらせてもらっていますね」と言うと、「2回の冬を越している気がします」と押田さん。時間をかけて練られてきた企画であったことを語る。

「恋せぬふたり」第3話

中村さんは、「ドラマの中でアロマンティック・アセクシュアルと、長い言葉で出てきていますが、あれは元々別の言葉になっていて、アロマンティックは他者に対して恋愛感情を抱かない人のことをいいます。アセクシュアルが他者に対して性的に惹かれない人のことを指していて、その2つが合わさってアロマンティック・アセクシュアルとなっています。アロマンティック(Aromantic)は、『ロマンティック(romantic)=恋愛感情を抱く』に否定の接頭辞「A」がつくことでアロマンティック、恋愛感情を抱かないという意味になります。アセクシュアル(Asexual)に関しても同じつくりになっているので、頭に「A」がついているというふうに思ってもらうと一番分かりやすいかなと思います」と解説する。

また、ドラマの中では当事者イベントが開催されている様子も描かれているが、その中でも多様な方々がいて、自認に「?」がついている人、「クエスチョニング(性的/恋愛的指向や性自認が定まっていない、または定めていない)」の人など、様々な人がいることにも触れられている。「羽と咲子って同じアロマンティック・アセクシュアルでもちょっと違う」と押田さんも話すように、例えば羽は他人と手が触れ合うことにも嫌悪を感じる点などで咲子とは違っている。


納得のキャスティング!岸井ゆきのと高橋一生、起用の理由は?


押田さんは脚本について、「今回お願いしている吉田恵里香さん、以前のドラマ(「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」)の記事で、あるキャラクターを『原作には具体的には書かれていないんだけれども、アロマンティック(恋愛感情を抱かない)の設定のつもりで描いた』とあって、この方は今回のテーマに共感してくれるのかなとお話をさせてもらいました。すると、吉田さんもすごく共感してくださったんですね。自分も描きたかったというのでお願いしました」と経緯を明かす。

また、岸井ゆきの高橋一生の好演は本作の人気を支える魅力の1つでもある。「お芝居上手な方がいいな、という話をしていて。すると、作家の吉田さんから『高橋一生さんみたいな方がイメージですかね』とふいに出てきて、共通のイメージがあれば人物設計の話がしやすいかなと思い“高橋(仮)”として(笑)進めていたんですね。そこで(本人に)聞いてみると『やりたい』と。台本は全然できていなかったんですが、その段階でやってくださるということで決まりました」。

高橋一生

「咲子役はすごく難しいなと思っていて、20代後半から30代前半の咲子と同世代ぐらいの方がいいなと思っていたのですが、岸井さんのほかのインタビューや記事をいろいろ見たんですけれど、いろいろなことを考えていて、『自分自身が明るくて天真爛漫のように見えて、自分の中でいろんな感情を出せないことがある』みたいなことをよく語られていて、『表に見えているものとその裏で感じているものがちょっと違う』ということを語っていたりしたので、この方はもしかすると咲子の気持ちがわかるかもと」。

「その後、事前に面談をしたときに、岸井さんは『設定も何もまだはっきりしないし、この題材ってすごく大事なことだから簡単にセリフは読めない』ということで、そういうふうに誠実にとらえてくださるんだなっていうのがあって。じゃあ、お願いしたいなということで岸井さんに演じてもらうことになりました」。

岸井ゆきの

カズは「実はこの物語のある意味、主役」


「考証の立場として嬉しいなと思うこととしては、『ドラマをみて初めて共感した』という意見をよく見かけて」と中村さん。「人に焦点を当てるコンテンツ(ドラマや映画など)では『恋愛・性愛』に繋がることも多く、これまで私自身も共感できないものと割り切って見ていたところがあったんですが、このドラマを観たときに『これだったら私に近い要素を感じる』と思えている部分がありますし、そういうふうに感じてくださっている方がいることが1つきっかけになれたのかなと思って、その感想は印象に残っています」という。

また、回が進むに連れて注目を集めたのが、咲子の同僚・“カズ”こと松岡一(濱正悟)だ。「カズくんはこのドラマの中で一番変化するキャラクターだと思っていて。最初、そこまで嫌われるキャラクターになるとは思ってなかったんですけれど」と押田さん。

「恋せぬふたり」第2話

「最初のほうは結構キツく見えたんですが、実はそういう人って周りにいるんじゃないかという気もして。でも彼が、諦めないっていう言い方はあれですけれど、単純に知りたいっていう気持ちでどんどん変わっていくというときに希望が見いだせるというのか、僕はそういう意味でカズくんという人はすごく素直だし、実はこの物語のある意味、主役だなと思っているところもあって。僕はすごく好きなキャラクターだなと思います」という。


思いがけない反響「3人で家族になっちゃえばいいのに」


中村さんにとっても、今回のテーマである“当たり前”を問い直すことについて考えたとき、印象的だったのはカズの存在だという。「カズくんと合わせて3人で家族になっちゃばいいのに、という意見が結構見られたんです。それが、すごいことだなと思っていて」。

「恋せぬふたり」第6話

「たぶん恋愛ドラマとか恋愛映画を観ると、少なくとも3人で家族になっちゃえばいいのに、とはいかないと思うんです。三角関係においてはどっちと繋がるんだろう、みたいなところでソワソワすることがあると思うんですけれど、それがもう、この空間で家族と呼んでいいじゃんというのがパッと浮かんでくるって、このドラマを見てくださったからこそ生まれた観点でもあるんじゃないかと思っていて。やっぱり家族イコール恋愛から繋がっていくものとか、いわゆる異性愛、男女2人で成り立つもの、子どもがいるもの、みたいな(価値観がある)中で、3人で家族でいいんじゃないっていうことが自然に出てくる人がいるっていうのは、1つ“当たり前”を見直せてるポイントでもあるんじゃないかと思いました。そういう、小さなところから始まっていくのかなと思いましたね」。

さらに、中村さんは本作のような作品が作られたことに関しても、改めて思いを口にする。「一石を投じられたんじゃないかな、と思っていて。こういった作品ができることによって、そういう描き方があるんだということがまず分かるということが大事かなと思っています。ただ、その一方でアロマンティック・アセクシュアルというセクシャリティーの名前が出ていることで、ある意味ステレオタイプを作るとか、ドラマで描くことによって違う偏見を生み出してしまうという怖さもコンテンツにする上ではあると思うので。最大限そこときちっと向き合うという前提を持った上で、そういった作品が増えていくことは大きな意味を持つのではないかと。そこが両輪になっていければいいなというふうには、今後については思っています」。

「恋せぬふたり」第2話

そのほか、視聴者からの質問では1話と4話で描かれたアウティング(本人の許可なしにその人の性的指向や性自認などについて第三者に話すこと)、咲子の母・さくらや妹・みのりとの関係などについても話が及んだ。

最終回へ向けてのメッセージ


「恋せぬふたり」第7話

中村:私としてはこのドラマは恋愛、性愛とは何なのか、関係性とは何なのか。曖昧さ、グラデーションというところもテーマにあると思っていて。そういった中で私が築きたい関係って何なんだろうとか、登場人物たちを見て自分自身のこともふり返ったりとか、考えたりする機会になれば嬉しいなと思っているので。だから最終回、本当に素直な意見を聞かせていただけたら嬉しいです。これが十分とも思っていないので、あくまでも一歩として、このドラマが社会に作用することがあればいいなと思っています。

「恋せぬふたり」第7話

押田:第7回を見ていただいて、ちょっとつらい回だという意見が結構多かったんです。確かにすごくつらい回だとは思うんですけれど、このドラマを“ラブではないコメディ”としているのは、誰もが最後は笑顔になることがすごく大事だと思っていて。第8回はすごく前向きな回になります。

だから、僕たちなりに制作陣と皆さんと話し合って、やっぱりこうしたいなっていうこと、最後にこれを伝えたいがために1からやってきたというところがあって。それがどういう意見(反響)が出るかは分からないですけれど、すごく前向きな答えを出したつもりです。だから、見てきっと、こういう生き方もあるんだなって思える最後になっていたらいいなと思っています。つらい回で終わらないので、最後は幸せに終わりますので、そこだけ本当に見逃さずにいただければと思っております。

よるドラ「恋せぬふたり」最終回は3月21日(月・祝)22時45分ほかNHK総合にて放送。(※NHKプラスの見逃し配信あり)

《シネマカフェ編集部》

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