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【映画と仕事 vol.21】藤井道人監督が考えるプロの映画監督――「運」と「縁」と「恩」に導かれたジャンルレスな映画づくり

映画業界で働く人たちにじっくりと話を伺う【映画お仕事図鑑】に『新聞記者』、『余命10年』の藤井道人監督が登場! 韓国映画のリメイクに挑んだ最新作『最後まで行く』制作から自身の映画づくりについてまで話を聞きました。

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『最後まで行く』藤井道人監督
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河村光庸プロデューサーとの出会い


――その後、『青の帰り道』や山田孝之さんのプロデュースによる『デイアンドナイト』を監督され、2019年公開の『新聞記者』は日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝きました。同作で製作・配給会社スターサンズの河村光庸プロデューサーと出会い、その後も河村プロデューサーと共に『ヤクザと家族 The Family』、『ヴィレッジ』などを作ってこられました。そもそも、どういった経緯で河村さんとお仕事をされることになったんでしょうか?

いろんな理由が複合的に絡まっているんですが『新聞記者』という映画はもともと、僕が監督する予定ではなかったんですね。クランクインの直前に、監督をされるはずだった方が降板となってしまい、「どうする?」となって、河村さんは周りの人たちに「誰かいないか?」と声をかけていたんです。

ちょうど僕は『デイアンドナイト』を撮った後で、そのラッシュを見た河村さんから突如、電話がかかってきまして「明日、会えませんか?」と言われて「会えます!」と。「スターサンズからのオファーだ!」と思って待ち合わせの宮益坂のパン屋に行ったら、なんかいかがわしい感じのおじいちゃんがいて(笑)、「おーっす! これ一緒にやろうよ」ってタイトル『新聞記者』と書いてある企画書を自信満々に見せられたんです。帰りにマネージャーさんに「ちょっとこれはやりたくないです」って言いました(笑)。そんな出会いです。

――河村さんは2022年に亡くなられましたが、藤井監督にとって河村さんとの出会いはどういうもので、作品をご一緒されて、どんなことを教わりましたか?

本当に僕の人生における、一番大きなターニングポイントだったと思います。

人間、大人になると大人なりの“距離感”というものができるじゃないですか? 人のパーソナルスペースにまで踏み込んできて、映画を作ってくれる人なんて滅多にいないんですけど、河村さんは自分のパーソナルスペースを周りのみんなのパーソナルスペースだと思っているというか、良く言うとすごくフレンドリーな方なんですね。毎日電話がかかってきたし、毎日一緒に過ごしてました。

親子ほど歳が離れているけど、この人は何かを俺に伝えようとしてくれている――70年もの人生で培ってきたものを自分に伝えようとしてくれているのをひしひしと感じました。

その中で企画の作り方から宣伝の取り組み方まで、本当に全てを教わった気がします。

映画監督としての作品選び、向き合い方


――藤井監督の作品を語る上で、“ジャンルレス”という言い方をされることが多いかと思います。『青の帰り道』のような青春群像劇から『余命10年』のような恋愛映画、そして『新聞記者』のような社会派に『ヴィレッジ』のようなサスペンスまで、ジャンルを飛び越えて、様々な作品を監督されていますが、ご自身にとって“ジャンル”というのはどういうものですか?

やっぱり、気にしないというか、ジャンルにとらわれずにいたいとは思っています。別格というか、神様みたいな存在ですけど、スピルバーグだってジャンルレスですよね。

僕は、いちコックと言いますか、映画制作の中での技術者のひとりという側面で見た時、「人間を描く」ということさえ通底していれば、ジャンルというものは、まず誰よりも僕らが壊していかなくてはいけないと思っています。

恋愛を描いても人間、人生を描くし、もし僕がホラーを撮るとしても、そこに登場する人たちがどういう時代にどんな思いで生きているのか? という部分をきちんと描くことができればと思っています。

社会派ではなく、いつも 映画の中に社会が入っているだけです。

もちろん、ひとつのものを人生をかけて磨き続ける人もいますし、ひとつのジャンルでつくり続ける方も素晴らしいと思いますが、自分はジャンルというものよりも、プロデューサーとのセッションを楽しんで、映画をつくるという側面を大事にしています。

――藤井監督にとって、プロの「映画監督」というのはどういう仕事ですか?

映画づくりにおける、いち部署ですね。決定権のあるいち部署だと思っています。責任という点で考えると、もちろん組織における重要なポジションであると思いますが、「監督だからえらい」とか、「監督の言うことは絶対である」といった思いで映画をつくったことはないですね。

――ここ数年、次々と監督作品が公開されていますが、オファーが届いた際にその企画を「やりたい」と思う判断基準や企画選びで大切にしていることはありますか?

どんな企画と出会うかは「運」と「縁」と「恩」の部分が大きいと思います。

たとえば、今回の『最後まで行く』のリメイクも、10年前であれば僕には来なかったと思うし、10年後だったら僕はやってないかもしれない。『新聞記者』、『ヤクザと家族』、『余命10年』という作品をやった上で、自分が好きなアクション、そして喜劇に挑戦してみたいなと思っていた時期にこの企画をいただけたので、まさに縁ですね。

「脚本は映画づくりの精密な設計図」


――今回も含め、ご自身で脚本の執筆もされますが、脚本を書く上で大切にされていることはどんなことですか?

(脚本は映画づくりの)精密な設計図であるべきということですね。小説ではないので、具体性を大事にして、読み物として全スタッフがその内容を認識し、この船がどこに向かうのかを明確に書いたコードであるべきだと思っています。

――藤井監督は毎作品、必ず登場人物たちの経歴や嗜好、どんな人生を送ってきたかなどを記したキャラクターシートを作成されるそうですね? その意図やどのように活用されるのかを教えてください。

さきほど脚本を「設計図」と言いましたが、作品という船のエンジンがあったとして、そのエンジンがどんな部品でつくられているのか? 知りたい人は知っておいた方が良いと思っています。

キャラクターシートはまさにそのための存在で、細かく映画に登場する人物のことを理解し、描いていくために活用するものですね。

どうしても、現場で撮影に費やせる時間は限られています。俳優さんたちに迷わずに「こういう思いでこのキャラクターは存在していて、それをあなたに委ねています」ということを伝えなくてはいけない。「はじめまして」とお会いして、現場で芝居をしてもらった時に、その芝居がこちらのイメージと「全然違う!」という状況になった時、キャラクターシートがあることによって、共通認識を持って「もっとこうしてみるのはどうですか?」「これは必要ないんじゃないですか?」と話すことができるのかなと思います。

「絶対に読んでください」ということではなく、(より深くキャラクターについて)知りたい人は見てくださいという感じですね。

――このキャラクターシートはどの段階で作成されるんですか?

基本的には脚本を書き進めながらつくっていく感じですね。初稿を書き終えた段階でできていることもあるし、改稿を重ねて脚本が完成してつくる場合もあります。

どういう家庭環境で育って、どんなスポーツをやってきたか? 家族構成、年収、好きな言葉など…今回、岡田准一さんが演じた工藤で言うと「なぜ彼は自堕落な生活を送るようになったのか?」といったことも書いてあります。

パーソナルカラーや好きな音楽などもあるので、部屋の美術や衣装でも活用できます。


《photo / text:Naoki Kurozu》

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