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【映画と仕事 vol.21】藤井道人監督が考えるプロの映画監督――「運」と「縁」と「恩」に導かれたジャンルレスな映画づくり

映画業界で働く人たちにじっくりと話を伺う【映画お仕事図鑑】に『新聞記者』、『余命10年』の藤井道人監督が登場! 韓国映画のリメイクに挑んだ最新作『最後まで行く』制作から自身の映画づくりについてまで話を聞きました。

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『最後まで行く』藤井道人監督
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韓国映画を新たにリメイク、日本版ならではの面白さとは?


――ここから、映画『最後まで行く』の制作について、より掘り下げて話を伺ってまいります。大ヒットした韓国映画を新たにリメイクするという作業はいかがでしたか?

今回の企画は、本当にプロデューサー陣に恵まれていたと思います。「リメイクだからといって、塗り絵をしてほしいわけではない」「日本映画として、藤井さんらしい『最後まで行く』にしましょう」と言ってくださったので、脚本を大胆に解釈し、アレンジを加えることができました。

韓国版のオリジナルの美しいプロットラインがあったので、それをベースに自分たちで新しい映画に作り直すという思いで臨みました。なので、オリジナル版を何度も見直すといったこともなかったですね。

――リメイクに際してルールや制約などはあったんでしょうか?

特になかったです。韓国のオリジナル版の最大の魅力は、開始5分で物語に引き込まれるプロットラインの面白さだと思っていて、そこはしっかりと拝借しつつ、でも、その後の展開を全く同じにするのであれば、韓国版を観ればいい。そうじゃなく、自分たちなりの新しいストーリーとして、工藤と矢崎という2人の男がどこまで行くのか? というのを純粋に楽しみながら脚本づくりができたと思います。

――誤って人をひき殺してしまった刑事・工藤がそれを隠蔽しようとするも、窮地に陥っていくさまを描く本作ですが、韓国版に比べて、綾野剛さんが演じる県警本部の監察官・矢崎の存在が、もうひとりの主人公とも言えるくらい、より深く描かれています。

韓国版では(矢崎に当たる男の)バックボーンが描かれるのは1分くらいでしたよね。その割り切り方も面白いと思いますが、やはり自分が映画をつくるときは、何よりも「人間をちゃんと描きたい」という思いが強くあります。“A面とB面”といいますか、人間の愚かさみたいな部分を(表に見える部分との)対比で見せたいなと思いました。

『最後まで行く』という物語が、主人公の工藤ひとりで最後まで行くのではなく、2人の運命が絡まり合いながら、最後まで行くという構成になったら面白いんじゃないかと。

――今回、平田研也さんと共同で脚本を執筆されていますが、共同脚本ならではの魅力や面白さはどんなところにあると感じていますか?

やはり複眼的な視点で構成していけるというのは共同脚本の面白さですよね。監督として「これをやりたい」ということは伝えますが、逆に脚本家の方からしか出てこない構成の妙みたいな部分は確実にあります。30年そこそこしか生きていない自分から出るアイディアだけでなく、平田さんのような円熟した脚本家さんのアイディアが加わることで、本に広がりが生まれるんですよね。

僕はできることなら常に共同脚本という形で映画づくりを進めていきたいなと思っています。

――改めて日本版『最後まで行く』ならではの魅力、面白さというのはどこにあると思いますか?

そうですねぇ…、オリジナル版をリスペクトをしつつも、そこまで意識しなかったので、オリジナルとの“区別化”みたいなこともあまり考えてなかったんですよね。

自分の中では、喜劇や転落劇というものが、いまの日本映画にはあまりないと感じていて、笑いながらハラハラして楽しめる映画に、いまの日本映画の現在地で、僕らがどれくらいトライできるか? という部分が挑戦だったので、そこに関しては満足のいく作品になったと思っています。

――激しいアクションがあり、痛みを描きつつ、思わず笑ってしまうシーンがたくさんありました。

岡田さんと綾野さんの2人が素晴らしかったというのが大前提にありますが、ベースにあるのが“愚かさ”なんですよね。2人とも愚かしい(笑)。でも、奇をてらったりはしてないし、「笑わせてやろう!」という意識もない。「あぁ、この人たちは、這いつくばってでも生きようとしてるんだな」というのが伝わってくるし、2人のお芝居によって脚本を大きく超えた物語になったなと思います。

―ひき逃げの被害者・尾田(磯村勇斗)の携帯にかかってきた電話に工藤が出るシーンが面白かったです。韓国版でも同様のシーンがありましたが、緊迫したやりとりになっているのに対し、日本版のほうはちょっとしたやりとりでくすりと笑ってしまうシーンになっていました。コミカルなシーンの演出で大切にされたのはどんなことですか?

もともと、コメディは大好きなんですけど、自分が映画をつくる上では、一発ギャグではない笑い――人間の愚かさや、どうしようもない人間らしさが感じられるものがコメディだと思っています。そのためにも、2人にも“状況”をきちんと与えないといけないなと思っていました。様々な受難が振りかかり、そこで慌てたり、怒ったりしていろんな表情を見せてくれて、それが喜劇としての面白さを生んでくれたなと思います。

今後の目標は「映画を取り巻く環境の変化、それを日本の映画界にどう取り込んでいけるか」


――映画監督としての目標、今後、実現したいことなどはありますか?

いま、配信プラットフォームが増えたり、映画を取り巻く環境が加速度的に変わっているので、海外などの環境を勉強して、それを日本の映画界にどう取り込んでいけるか? というのが、この数年の目標ですね。凝り固まった概念をたたき壊していかないと、永久にこのままじゃダメなので、システムを含めて、変えるべきところは変えていかないといけないと思っています。

――最後に映画業界を志す人たちに向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

僕から言えるのは3つくらいですね。まず「横のつながり」の大切さ。一緒に仕事をする仲間たちや出会いの縁を大事にして、その人たちがどうしたら楽しんで仕事をしてくれるかを考えてほしいということ。

それから、仕事がない時期に「オファーは絶対に断らない」ということ。「こういう仕事はしない」と言ってる人は永久にやらないので「自分が適任だと思われてるんだな」と受け入れてやりましょう。

最後に、自分の人生なので「自分が納得できることを仕事にする」ということ。

そこに関しては、僕自身、昔から変わらないですね。

《photo / text:Naoki Kurozu》

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