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【レビュー】圧倒的存在感!秘密を抱えた女性指揮者を演じるイ・ヨンエの説得力『マエストラ』

「宮廷女官 チャングムの誓い」や『親切なクムジャさん』のイ・ヨンエの最新ドラマ主演作「マエストラ」が、ディズニープラス スターにて独占配信開始。“世界でたった5%しかいない女性指揮者をイ・ヨンエが演じる”というだけで心沸き立ち、ハマり役だと確信する。

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「マエストラ」© 2023 Disney and its related entities
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韓流ドラマの代表作「宮廷女官 チャングムの誓い」やパク・チャヌク監督の映画『親切なクムジャさん』などで知られるイ・ヨンエの最新ドラマ主演作「マエストラ」が、ディズニープラス スターにて独占配信開始。

“世界でたった5%しかいない女性指揮者をイ・ヨンエが演じる”というだけで心沸き立ち、そのポスタービジュアルを見ただけでもオーケストラの中心で圧倒的存在感を放つ指揮者はハマり役だと確信する。しかも、スリリングなヒューマン・ミステリーとしても期待ができそうだ。


ディズニープラス「マエストラ」を視聴


不屈で揺るぎない信念を持ち、
我が道をゆく女性が似合う


韓国を代表する俳優にして、日本にも多くのファンがいるイ・ヨンエ。かつては出演したCMから“酸素のような女性”との愛称を付けられたように、清廉で親しみやすく品性があり、その傍ら不屈で揺るぎない信念を持ち、バイタリティに溢れ我が道をしっかりと歩む女性といったイメージを有している。

モデルから俳優となり、1993年にドラマデビュー。『シュリ』(1999)に続いて韓国映画を日本に定着させたパク・チャヌク監督『JSA』(2000)では北の兵士(ソン・ガンホ)と南の兵士(イ・ビョンホン)らに取り調べを行う“中立”の立場となる韓国系スイス将校役を演じた。

そして、いまも語り継がれる視聴率50%超ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」(2003)で絶対味覚の持ち主、チャングムを演じて国民的俳優のひとりに。日本でも2005年にNHKで放送されたこともあって韓流ブームの中で人気を確立する。

韓国ドラマファンなら、「愛の不時着」や「キム秘書はいったいなぜ?」などで「ラーメン食べる?」というセリフを耳にしたことがあるだろう。その起源となったのもイ・ヨンエ。名匠ホ・ジノ監督の『春の日は過ぎゆく』(2001)でユ・ジテ扮する録音技師を翻弄する、とらえどころのない年上女性ウンスが言ったセリフで「泊まっていかない?」の同義語だ。

また、真っ赤なアイシャドーと憂いある表情がアイコニックなキャラクターとなった『親切なクムジャさん』(2005)では新境地を極め、国内外の映画賞で評価を受ける。以降は芸能活動を休止して2009年に結婚、2011年に男女の双子を出産して長らく表舞台からは遠ざかっていた。

近年は作品をさらに吟味している様子だ。その作品選びにおいては「良妻賢母」への静かなる抵抗という印象を勝手ながら抱いている。それが俳優イ・ヨンエを尊敬する理由でもある。

贖罪と母娘関係の構築という側面もあった『親切なクムジャさん』以来の俳優復帰作として選んだのは、韓国美術界を舞台に名画の謎に迫る大学の非常勤講師ジユンと朝鮮時代の女性画家・師任堂の二役を演じる「師任堂(サイムダン)、色の日記」(2017)だった。韓国5万ウォン紙幣の“顔”でもある師任堂は、それこそ良妻賢母の象徴だというが、同作では持って生まれた才能を惜しまず芸術に注ぎ続け、夫ではない男性との一途な愛に生きていた。

その後、チャウヌの「私のIDはカンナム美人」に“卒業生の俳優イ・ヨンエ”としてカメオ出演して新世代を驚かせたかと思えば、2021年に出演した前作「調査官ク・ギョンイ」では、ゲームと酒が大好きでだらしないが犯罪に対しては優れた嗅覚を持つ保険調査官という、これまでにないエキセントリックな役柄に。サイコパスな女性殺人鬼を追いつつも、その邪悪さと心を通わせることができる危うさが魅力だった。

貶められても挫けず王の主治医まで上りつめたチャングムや、真剣な恋をすることに一歩引いた離婚経験のあるウンス、美術史の追究に猛然となる母ジユンもしかり、イ・ヨンエが演じる女性たちはいつでも、いい意味で意外性を見せてくれる。


世界的女性指揮者が故郷に帰還…
自身の過去と対峙する


そして今回、フランスのTVシリーズ「Philharmonia」(原題/2018)を原作にスタジオドラゴンが企画した「マエストラ」で演じるのは、交響楽団・漢江フィルに招へいされる指揮者。世界でたった5%しかいない女性指揮者の中でも、ひときわ異彩を放つ人物という。

キリッとした凜々しい眉に前髪をアップしたショートヘア、ハイブランドに身を包んで指揮台に立つイ・ヨンエの威厳と説得力は抜群。江南エリアにある複合芸術施設「芸術の殿堂」でのロケも、完璧な舞台装置だ。

世界的女性指揮者といえば、ケイト・ブランシェットが主演しアカデミー賞候補になった『TAR/ター』を思い浮かべる方もいるかもしれない。常に緊張状態にありながら、不安をプライドと経験値であくまでもスマートに覆い隠そうとする姿はケイトが演じたリディア・ターと重なる部分はある。

今作で演じるチャ・セウムは、かつては天才ヴァイオリニストだったが、ニューヨークへ留学し指揮者に転向した女性。セウムの父親は著名なヴァイオリン製作家らしく、漢字で「世」界の「音」と書くセウム楽器を営んでいる。アジア人女性指揮者として世界トップクラスの評価を得たセウムは故郷・韓国に戻り、ソウルの落ちぶれた漢江フィルの再興を任される。

漢江フィルに突然現れたこの“よそ者”は、「第2の指揮者」と呼ばれるコンマス(コンサートマスター)を長年務めてきた重鎮のパク先生を解雇し、ブラインドオーディションにより入団したばかりの“マンネ”=最年少団員、イ・ルナのヴァイオリンの音色を聴くやコンマスに抜擢する。

演奏者の姿を隠して、その演奏だけで判断するブラインドオーディションは性別、年齢、人種、学歴・経歴などによる先入観や無意識の偏見にとらわれることなく公正な判断ができるため『TAR/ター』のベルリン・フィルでも行われていたし、ディズニープラスの韓国ドラマ「私たちの人生レース」のように就職活動においても取り入れられている。

ルナのコンマスに楽団員たちが不満を示すのは彼女が最年少で経験が浅く、若い女性だから。セウム自身がアメリカで指揮者を目指すにあたり、性別や年齢、人種により散々偏見を持たれてきたはず。「情や人間性」よりも「金やコネ」よりも「実力主義でいく」と宣言するセウムには、ルナが他人のようには思えないのだ。

漢江フィルの権威を取り戻すためには、慣例を打ち破るルナのような新しい風が必要なことは一目瞭然。また、ルナの内に秘めた野心をセウムは見抜いており、父親にヴァイオリンを師事したと話す彼女に自身を重ねながら、二人三脚で漢江フィルをもり立てていくことになるのだろうか。

そんなセウムの前に現れるのが、20年前に彼女と交際していた投資家ユ・ジョンジェイ・ムセン)。セウムが再会を喜ばず「初めまして」と初対面のふりをしたことも許せず、まるで今生最後の敵のごとく漢江フィルを買収し、セウムの記念すべき初公演を潰そうとする。

2人の間に何があったのかは、セウムが抱える秘密、フラッシュバックする母親との確執にも関連していそうだ。

大学で教鞭をとる温和な夫キム・ピルキム・ヨンジェ)は不倫をしており、セウムを取り巻くこの2人の男性、両親、楽団員らの濃密な人間模様がミステリアスな展開に拍車をかけていく。

完璧だったはずのセウムの指揮者人生は歪み始める。いや、元からどこか歪だったのかもしれない。そもそも、セウムはなぜヴァイオリン奏者から指揮者を目指したのか。音楽が苦しいだけのものになったセウムが、弓をタクトに変えて音楽を自ら制御することで抑圧から逃れられ、解放されているのだとしたら彼女の抱える闇は深い。

キーパーソンとなるであろうイ・ルナを演じるのは、「少女の世界」や「コッソンビ熱愛史」の次世代俳優ファン・ボルムビョル。連帯か、もしくは裏切りか、師弟とも運命共同体ともいえるセウムとルナにも注目である。

「マエストラ」は毎週土・日曜22時50分~1話ずつディズニープラス スターにて配信中(全12話)。


ディズニープラス「マエストラ」を視聴

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〈提供:ウォルト・ディズニー・ジャパン〉

《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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