細田守監督最新作『果てしなきスカーレット』(英題:Scarlet)が第82回ヴェネチア国際映画祭でアウト・オブ・コンペティション部門に選出。細田監督、芦田愛菜、岡田将生が公式上映目前、プレスカンファレンス(公式記者会見)&フォトコールに参加した。
本作は、国王である父を殺した敵への復讐に心を誓う王女・スカーレットが、≪死者の国≫で宿敵に復讐を果たそうとする物語。
9月3日ヴェネチア到着時、細田監督は「ヴェネチア国際映画祭は、映画を作る者として、ずっと憧れの地でした」とその喜びを噛みしめ、芦田は劇場の大きなスクリーンで作品を観客と楽しめることを、岡田は同じ空間でリアクションを感じられることだと話し、公式上映への参加を心待ちにしていた。

そして現地時間9月4日21時30分から始まる公式上映を目前に、細田監督・芦田・岡田は、プレスカンファレンス(公式記者会見)とフォトコールにそろって参加。

芦田は色とりどりの花が描かれた黒を基調としたドレスに、黒いジャケットを羽織るシックな装い、岡田はネイビーのスーツに同色のネクタイを締めて登場。会場入り口に到着すると3人を出迎えたのは、3人をひと目見ようと集まった現地のファン。「HOSODA-SAN!!」「MANA-SAN!」「OKADA-SAN!」と、現地のファンから声援が飛ぶと、3人はファンの元に足を運び、サインをしたり写真撮影をしたりとファンサービスに応じていた。
「アニメーションの可能性は無限大」と細田監督
まず、プレスカンファレンス(公式記者会見)の会場には、世界中から集まった海外メディアの記者や報道関係者が100名以上詰めかけ、本作への国際的な注目度の高さが伺えた。特に、海外でも高い人気を誇る細田監督へ質問が集中し、会見では本作のテーマ、作品に込めた想いやメッセージなど幅広い質問が飛ぶ。

この作品を作るきっかけについて尋ねられると細田監督は、「“復讐劇”の映画を作りたいと思いました。世界中の人が“復讐劇”(が描かれた作品)が好きだと思ったので、皆が見たいと思ってもらえる作品を作ろうと思ったんです。ただ“復讐”だけではなく、もう一つの要素として“赦し”という部分を同時に含めて、今までにない映画を作ろうと思いました」とコメント。制作のきっかけについて話すと同時に、本作を構成する重要な要素を明かした。
また、本作を制作するにあたり、特に難しかった点を聞かれると「主人公のスカーレット(芦田)と聖(岡田)をどんな風に設定し、魅力的な人物にしていくのかという部分が難しかったです。“対比”ということに重きを置いて考えました」という。
「1人は王女、1人は看護師。その立場の違いを描くことによって、どちらも魅力的(な人物)に見えるように作っていきました」と答えた。

なお、今回の主人公像については「これまでのプリンセス像のような、王子様に守られるプリンセスではなく、もっと新しい、自分自身で道を切り開いていくようなプリンセス像をこの映画では表現しました」と監督。
さらに、現在の世界情勢を踏まえ、この作品にどんなメッセージを込めたのか、という質問には、「いま、この瞬間でも苦しい思いをしている子どもが世界中にたくさんいると思います。そういう子どもたちに、この世界に絶望しないでいてもらいたい。この世界が希望に満ちた世界であってほしいという願いが、1人の親として、1人の社会を構成する大人としてあります。子どもたちを勇気づけるような世界になってほしいという願いを込めました」と切実な想いと願いが込められていることを語った。

そして、昨今のアニメーション作品と未来について聞かれると、「アニメーションの世界は非常に自由で何を表現してもいいと思います」と回答。
「今回“シェイクスピア”や“ダンテ”の作品を(モチーフに)映画を作るとは思っていませんでしたが、そのくらいアニメーション映画というのは新しい可能性があるということです。可能性が無限大なので、これからも面白い作品ができると思います」と語った。

芦田愛菜&岡田将生、役作りを明かす
監督と共に登壇した芦田と岡田が、本作での役作りについて問われると、芦田は「スカーレットは中世の王女という役なので、王女として生きる使命感だったり、心構えをどう表現するか悩みました。中世の動乱の時代を生きたジャンヌ・ダルクやエリザベス1世などの作品や映像を見て、イメージを膨らませていきました」と回答。
岡田は「(過去に)演劇でシェイクスピアをやったり、看護師の役を演じていたので、“聖”という役に関しては、自分の体に染み込んでいる状態でした。スカーレットに対する気持ちであったり、時間であったり、そういう部分を大切にしようと演じました」と話した。

また、この作品でどんなことを観る人に伝えたいかと聞かれた芦田は、「スカーレットは、混沌とした世界を一生懸命生き抜こうとし、そして、自分の想いを遂げようとする女の子なので、その一生懸命さが現代を生きる(この作品を観た)皆さんの生きる活力になっていただければいいなと思います」とコメントした。

会見後に行われたフォトコールでは、多くの海外メディアに対して3人は笑顔で手を振るなど、穏やかな雰囲気でメディアの撮影に対応。
公式上映を前にプレスカンファレンスに参加して、細田監督は「(会見に集まってくださった)プレスの皆さんがこの映画を気に入ってくださって、すごくいい質問を情熱的にたくさん投げかけてもらえて、この映画についてたくさん話すことができましたし、芦田さんと岡田さんが、スカーレットとして、聖として、いい回答をしてくれているのを横で聞いていて、とても感激しました」と、会見で手ごたえを感じた様子。

一緒に登壇した芦田も「少し緊張しましたが、監督の素敵なお話を横で聞かせていただき、『そうだったんだ!』という気付きがあり、楽しい時間を過ごせました」と会見に参加した感想を述べ、岡田も「映画を気に入ってくださったからこその愛のある質問が多かったと思いましたし、監督のお話を聞けて僕も嬉しかったです。とてもいい時間だったと思います」と海外メディアの熱量の高さに触れた。
『果てしなきスカーレット』は11月21日(金)より全国にて公開。



