ベストセラー小説を映画化した『爆弾』よりメイキング写真と撮影レポートが到着した。
本作は、日本最大級のミステリーランキング「このミステリーがすごい! 2023年版」で堂々の1位を獲得した呉勝浩の同名小説の映画化。物語は酔った勢いで暴行を働き警察に連行された謎の中年男「スズキタゴサク」(佐藤二朗)が都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告し、山田裕貴演じる交渉人・類家ら警察との息詰まる攻防が繰り広げられる。

この度解禁されたメイキング写真では、取調室での交渉人・類家を演じる山田裕貴と謎の男・スズキタゴサク役の佐藤二朗の緊迫した対峙シーンが捉えられている。
取調室で真正面から激突する二人。火花を散らすような心理戦の果てに起きたシビれるほどの化学反応、リアルな熱気と緊張が交錯する現場の裏側が明かされた。
取調室の撮影は、都内ビルの一室に作られたセットで、脚本の冒頭から順を追って撮影を進める「順撮り」によって行われた。伊勢(寛一郎)や清宮(渡部篤郎)がタゴサクに振り回されるのを後ろから見ていた類家と同じように、今か今かとタゴサクと対決する瞬間を待ち侘びていた山田。ついに類家とタゴサクが対面するシーンの撮影は、「よーい、スタート!」という監督の掛け声に続いてその興奮や激情がぶつかり合う、とてつもない集中力と爆発力に満ちたひと時となった。

佐藤は声のトーンやスピード、表情をコロコロと変え、指を立てる仕草といった一挙手一投足に不気味さをにじませていく。おどけた顔を見せていたかと思いきや、狂気や怒りをギラリと目に宿すなど、邦画史に残るようなヴィランの登場に圧倒されること必至だ。
対する山田は、真正面からタゴサクと相まみえる力強さと自信を放ちつつ、類家の本心はどこにあるのだろうかと思わせる、決して一色では括れない人間の多面性までを体現。次第に牙を剥き始めるタゴサクに対して、刑事としての正義を静かに表出させていく過程に心を奪われる。永井聡監督は、彼が演じる類家には「どこかチャーミングさがある」と分析。それは山田が演じたからこそ際立つものでもあり、「山田裕貴の新たな代表作が生まれた」と確信するに十分な熱演を見せている。
とんでもない長セリフの応酬にも関わらず、山田と佐藤は完璧に身体に染み込ませ、セリフ間違いによるNGは一切見られない。彼らの緊張感に満ちた駆け引きを見て、永井監督は「いいですね」とニヤリ。類家とタゴサクが「自分たちは似たもの同士だ」と共鳴するシーンでは、2人が思わず笑い合うというアドリブも炸裂。これは脚本にはないもので、「二朗さんに本気でぶつかっていけた」という山田は、「現場のセッションで生まれたもの。決め込んでやっていたら、あの笑顔は生まれなかった。2人にしかわからない世界があった」としみじみと語っている。

生の反応に加えて、ディスカッションが活発に行われたのも本作の現場の特徴だ。カットがかかると山田が相談を持ちかけ、「いいよ」と応じる佐藤。またある人物が取調室に乗り込んでくるシーンでは、興奮したタゴサクが立ち上がるのか、座ったままでいるのか。それに対して刑事たちはどう動くのか、濃密な意見交換が繰り広げられた。
「立ち上がるつもりで、考えてきた」という佐藤に、「座ってやってみてください」と演出する永井監督。山田も「相手がそう動くなら、類家はこうするはず」とアイデアを練るなど、役者陣は納得するまでそれぞれのキャラクターらしさやテンション、リアリティを追求し、永井監督はじっくりと耳を傾けつつ自らの考えを提案していく。
佐藤は、「僕もプレゼンをして、永井監督もプレゼンをする。すごくいい関係が築けた」と充実の表情。永井監督は、原作に人間の持つ複雑性が描かれているからこそ「このセリフを笑顔で言うのか、シリアスな顔で言うのか。それだけで届き方もまったく違うものになるので、俳優さんとはかなり細かくディスカッションを重ねた」と意図を明かし、「僕自身こんなにも役者たちと話し合い、掘り下げたのは初めてのこと」だと明かす。

タゴサク役として刑事役の実力派キャスト陣と対峙することとなった佐藤は、「いずれも超一線級の俳優さん」と彼らに敬意を表し、「そういう人たちとセッションをできているというのが、本当に楽しくて。しかもその人たちの芝居を特等席で見られる。(撮影期間は)忘れられない3か月」と俳優としてのキャリアにおいても特別な体験をしたと感無量の面持ち。

山田は、「類家はキャラクターとしてとても難しい役柄。来る日も来る日も考えて、悩んで苦しみました」と苦労を口にしながらも、「今の集大成として、全身全霊を賭けて臨んだ」と断言している。

そして等々力役の染谷将太、清宮役の渡部篤郎、伊勢役の寛一郎が映し出す刑事としての揺らぎや矜持も圧巻。映画館が一瞬にして取調室に変わる緊迫の戦い、そしてその先に何が浮かび上がるのか。実力派キャスト陣とスタッフの熱意が一体となったシーンの数々をスクリーンで体感して欲しい。
『爆弾』は10月31日(金)より全国にて公開。



