分断や排斥、抑圧が日に日に深刻さを増し、不安と閉塞感が渦巻くいま。そんなときだからこそ観たい、自由と希望を求め、過酷な現実に抗いながら生き抜く人々を描いたヒューマンドラマ映画を4作紹介。
ベルリン国際映画祭アムネスティ国際映画賞受賞など世界的な映画祭で41冠の快挙を成し遂げた群像ヒューマンドラマ『アイ・ワズ・ア・ストレンジャー』から、31年の生涯を革命に捧げた女性の壮絶な軌跡を描いた『OXANA 裸の革命家・オクサナ』まで、様々な歴史的背景や社会構造のもとで生じる苦難を真正面から映し出し、観る者に自由や共生のあり方を問いかける映画に迫った。
『オールド・オーク』公開中
名匠ケン・ローチが地元住民とシリア難民たちの関係を眼差し
“希望を持つこと”の難しさと尊さを描いたヒューマンドラマ
『わたしは、ダニエル・ブレイク』をはじめ、労働階級の現実を見つめ続け、市井の人々の生活、政治と社会の矛盾や格差を追及してきたイギリスの巨匠、ケン・ローチ監督による「イギリス北東部3部作」の最終章。
脚本は、長年タッグを組んできた、数多くの名作を共に世に送り出してきたポール・ラヴァティが手掛ける。

地元の人々が安らぎを見出し集う場が、政権の弾圧や戦禍を逃れてきたシリア難民の受け入れをきっかけに諍いの場に変貌してしてしまった元パブの「オールド・オーク」が舞台。

店主TJを演じるのは、実際にパブ経営の経験をもち、これまでケン・ローチ作品に出演してきたデイヴ・ターナー。シリア難民の女性ヤラを、シリア出身の新星エブラ・マリが演じる。実際に地域で暮らす人々や難民が起用された本作は、社会と人々への温かくもリアリズム溢れる眼差しが映し出され、受容と共存への希望について考察を促してくれる。
『ザ・コラール 希望を紡ぐ歌』公開中
第一次世界大戦下のイギリスを舞台に、戦争が影を落とすなか
“歌うこと”を通して失われた希望を紡ぎなおすヒューマンドラマ
主演は『教皇選挙』のレイフ・ファインズ。厳格だが偏屈な合唱団の指揮者を務めることになる医師を体現する。監督は『英国万歳!』など英国アカデミー賞・トニー賞受賞の演出家ニコラス・ハイトナー。

第一次大戦下に徴兵で多くの団員を失い存続の危機に陥ったアマチュア合唱団は、“歌うこと”を通して再び人々の心をつなごうと、新たな指揮者と団員たちを向かい入れる。合唱を通してそれぞれが胸に秘めてきた痛みに触れ、やがてひとつの“声”へと溶け合い、失われた希望を紡ぎなおす。

“芸術が人を支える瞬間”と、戦争という現実の恐怖に直面しながら、なお人間としてどう生きるのか――その問いに向き合う人々の姿を描く。
『OXANA 裸の革命家・オクサナ』公開中
情熱と芸術を武器に世界に抗い、
31年の生涯を革命に捧げた女性の壮絶な軌跡を辿る物語
トップレスによる抗議活動で知られるフェミニスト団体「FEMEN」の共同創設者オクサナ・シャチコ。本作は、社会不安と政治的緊張を抱えるウクライナに生まれ、花冠とメッセージを記した裸身で闘い続け、31年の短い生涯を革命に捧げた彼女の人生に着想を得た物語。

ロシアによる侵攻が始まる十数年前、2008年のウクライナを舞台に、社会の体制に抗い、自由と尊厳を求めて声を上げた女性たちの闘いが描かれる。

主演は、本作が映画初主演となるウクライナ出身のアルビーナ・コルジ。ロシアによる侵攻下、Zoomオーディションで抜擢された。監督は『スラローム 少女の凍てつく心』で注目を集め、国際的に高い評価を得たシャルレーヌ・ファヴィエ。
© 2024 - Rectangle Productions - 2.4.7. Films - Hero Squared - France 3 Cinéma - Tabor Ltd
『アイ・ワズ・ア・ストレンジャー』6月19日全国順次公開
シリア内戦から逃れるために、命を懸けて国外避難を決行する
人々の絶望と希望を痛烈に描き出した群像ヒューマンドラマ
2011年から2024年にわたり続いたシリア内戦を背景に、戦禍から逃れるために国外避難を余儀なくされる人々の現実から着想を得て、紛争によって引き裂かれる家族と、彼らを取り巻く人々の姿を多角的に描き出すスリリングな群像ヒューマンドラマ。国籍も職業も立場も異なる人々が戦争という悲劇の中で交差していく様を、リアリティと緊迫感をもって映し出し、善悪では語り尽くせない現実の核心を突く。
本作の監督・脚本・製作を務めたのは、映画プロデューサーで人道支援活動家でもあるブラント・アンダーセン。実際にシリアやトルコ、ギリシャでの人道支援活動を通して出会った実話を基に、紛争によって引き裂かれる家族と、彼らを取り巻く人々や運命と葛藤を痛烈に描き出す。

危機的状況下でも冷静さを失わない医師のアミラをレバノン出身の国際的女優ヤスミン・アル・マスリーが、悪辣な仕事に就きながら愛情深い父でもある複雑な人物像をもつ密航業者のマルワンをオマール・シーが、政府と現実の狭間で苦悩する兵士のムスタファをシリア人俳優ヤヤ・マヘイニが演じ、国境を超えて活躍する実力派俳優が集結した。
『アイ・ワズ・ア・ストレンジャー』は6月19日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開。




