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鍵は「砂漠」にあり? 口コミで話題の『シラート』、その魅力をロケ地から紐解く

公開早々、満席回が続出するなど大きな話題を集めているオリヴァー・ラクセ監督作『シラート』。6月19日(金)からは上映館が拡大し、ますますその動向が注目されている。今回はその魅力をロケ地から紐解いていきたい。

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公開早々、満席回が続出するなど大きな話題を集めているオリヴァー・ラクセ監督作『シラート』。6月12日(金)からは上映館が拡大し、ますますその動向が注目されている。今回は本作の魅力をロケ地から紐解いていきたい。

映画は、「シラートは天国と地獄の架け橋で、それを越える者は警告を受ける。道は髪の毛よりも細く、どんな剣よりも鋭い」との文言で幕を開ける。タイトルにもなっている「シラート」とは、アラビア語で一般的には「道」を差し、イスラム教の言葉では「神へと向かう道」との意味合いもある。

つまり、すでにタイトルで示唆されているように、本作はある一行が「道(シラート)」を辿るロードムービーという体裁をとっている。

まず最初の舞台は砂漠で開催されているレイブパーティー。爆音が轟くなか、その場には不釣り合いな父子がレイバーたちに「娘を探している」と聞いて回るところから物語は始まる。

『シラート』

※以下、一部物語の展開に言及する表現がございます。ご注意ください。

自然の円形劇場

最初のレイブ会場となるロケ地は、「ランバラ・デ・バラチーナ(Rambla de Barrachina)」。スペインはテルエル地方トゥリア川沿いの景勝地だ。雨風にさらされ赤みがかった岩が浸食したこの場所は、自然が生み出した円形劇場とも呼べるだろう。荒々しく悠然たる佇まいは、父子が辿る過酷な物語の幕開けにふさわしいと言える。

また、本作では撮影のために実際にレイブパーティーを開催し、登場するのは本物のレイバーたちである。父子と旅をともにする登場人物も現地オーディションで見出したというから驚きだ。人種も性別もバラバラな仲間たちは、ある意味で多文化が融合したコミュニティとも言え、父子が異文化に触れるきっかけともなっていく。

ちなみに父ルイス役を演じているのは、ギレルモ・デル・トロ監督作『パンズ・ラビリンス』で主人公・オフェリアの冷酷非道な義父、ビダル大尉を演じた名優セルジ・ロペス。切れ味鋭いカミソリのようなキャラクターだったビダル大尉とは打って変わり、本作ではふくよかな体躯を揺らしながらレイブ会場を右往左往する父親を見事に好演している。

『シラート』

過酷な旅を決定づける崖の道

パーティーが盛り上がりをみせる最中、軍が介入しレイブは一時中断、レイバーたちは撤退を余儀なくされる。だが娘の行方を追う父子は、次のレイブ会場に向かうという一団に続いて、モロッコ南部から西サハラを経由し、モーリタニア方面へと向かうことになる。

途中の川で立往生したところをレイバー一行が助けてくれるなどし、次第に打ち解け合っていく父子とレイバーたち。

だが続く道はさらに険しくなる一方。さらには、いまにも踏みはずしてしまいそうな、車が通るにもスレスレの崖の道を進むことになる。

この重要な舞台は、モロッコのタゴウンツァ(タグンツァ、タゴウンスタ)峠(Tagounsta/Tagountza)で撮影された。モロッコのハイアトラス山脈の奥深くにあり、1930年代、フランス軍がベルベル人との戦いのため、軍事目的で建設された歴史的なルートで、渓谷の崖をくり抜いて造られた螺旋状のトンネルがある。

自然に人間の手が加えられたこの場所で起きるある悲劇は、一行を待ち受けるその後の衝撃的な展開を予期させる。

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衝撃のクライマックス…「砂漠」が意味するものとは

やがて一行は目的地を見失い、さらに父ルイスがある出来事によって絶望に暮れ、導かれるように砂漠へと辿り着く。

撮影されたのはモロッコのハルーン砂漠(Desert of Haroun)。観光地からはほど遠いそこは、モロッコ南東部、サハラ砂漠の玄関口であるエルフード近郊に広がる。一般的なオレンジ色の砂丘とは異なり、塩のように白い砂に覆われているのも特徴的だ。

一面砂が広がるその場所で、食料も水も底をついた彼らは、スピーカーを設置し、まるで恍惚に浸るかのように即席レイブを行う。ルイスも自然に委ねるように音楽に身を任せ、当初は受け入れ難かった「レイブ文化」の本質へと肉薄することになるのだ。

だが、劇中「第三次世界大戦」という不穏なセリフがあるように、西サハラは「ノーマンズランド」と呼ばれる高度な軍事境界線が広がる危険地帯。度々戦争の舞台ともなり、今も不安定な情勢が続く。結末の核心に触れるため詳細な言及は避けるが、ここで一行は死と隣り合わせの試練に直面することになる。

これまでの作品でも、山岳地帯など過酷な自然環境を舞台にしてきたオリヴァー・ラクセ監督。本作で、砂漠を舞台にしたことについてこうコメントしている。

「砂漠は語ります。砂漠はあなたを試しています。試しながらあなたを守っています。(中略)砂漠は自分を隠すことができない場所です。気を散らすことができません。内面を見つめることを強いられます。そこで死ぬ可能性があることを知ります。死と繋がっているのです」
「Interview Magazine」How Sirât Director Oliver Laxe Found God at a Raveより

『シラート』

生と死が混在し、美しさだけでなく厳しさも兼ね備えた砂漠。さらに本作では、人間が犯してきた愚かな歴史も相まって、ただの「舞台装置」に留まらない役割を果たしているのだ。

旅の一行が辿りつく「道(シラート)」は天国に繋がるのか。それとも地獄へと落ちるのか…。その最終地点は、ぜひ劇場で確かめて欲しい。

『シラート』は新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国にて公開中。

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《深山名生》

人にやさしく映画はたのしく 深山名生

子どもの頃から映画が大好きで、縁あってライターの道へ。web媒体への執筆やTwitterで映画の感想などを書いています。好きなジャンルはホラーコメディとSF。何事も深掘りして調べるのが趣味。ビデオスルー映画ウォッチャー。

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