今回の切り口は「からくち」。いつもは、映画にまつわる気になる点を、ちょっと厳しくツツいています。でも、「春を待ちながら…幸せになる映画」というテーマを掲げた今月。このテーマで、どうして辛口のことなど言えるでしょう。幸せな気分にさせてくれる映画なら、ちょっとぐらいの「?」や「!」なんて、どうでもいいや。今回は、そんな姿勢で行きたいと思います。
女は強い。仕事や子育てを平然とこなしながら、実は彼女たちの中ではとてつもない嫉妬や不安や憎悪が うずまいていたりするものです。この映画に登場する3人の女性たちの美しく可憐な佇まいからもやはり、 それぞれが抱える深い悩みは決して想像できません。不倫、裏切り、孤独…。それでもどん底から這い上がり、 幸せを自らの手でつかみとる根性を持った女性になりたい、そう力強い印象を残してくれる映画です。 ところで、『トリコロール』3部作では3つの愛の物語が青、白、赤(トリコロール)で表されているように、 『美しき運命の傷痕』の3姉妹にもまた青、赤、黄という3つのイメージカラーが使われています。 ぜひ注目してください。
2005年、一大旋風を巻き起こした『私の頭の中の消しゴム』。本作で日本中の女性を魅了した人気俳優チョン・ウソンが主演する待望の最新作が『デイジー』だ。共演は『猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』を大ヒットに導いたチョン・ジヒョン。3月22日には三角関係のもう一角を演じるイ・ソンジェ、監督のアンドリュー・ラウとともに来日した2人迎え、記者会見が開かれた。
『エレファント』で銃社会アメリカにおける死を描いたガス・ヴァン・サント監督が、1994年に命を絶ったニルヴァーナのボーカル、カート・コバーンに捧げた美しき映像叙事詩『ラストデイズ』。本作でカートの分身ともいえるミュージシャン、ブレイク役に抜擢された24歳のマイケル・ピットがインタビューに応じてくれた。
アカデミー賞、ついに発表となりました! 相変わらず華やかでしたね…。その結果にはいろいろ思うところはありますが、お気に入りの『クラッシュ』が作品賞を受賞したことは、なんともめでたい。残念ながら作品賞を逃した『ブロークバック・マウンテン』ではありますが、保守的と言われる“アカデミー”で、あそこまで評価されたことは輝かしいことかもしれません。
第78回アカデミー賞で助演男優賞、脚色賞にノミネートされたデイヴィッド・クローネンバーグ監督の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』。惜しくも受賞は逃したものの、作品の質に変わりはない。ヴィゴ・モーテンセン演じる隠された夫の過去と対面する妻の苦悩を演じたのは、「ER」の女医役でも有名なマリア・ベロだ。来日前にアメリカの雑誌で“東京お買い物特集”をチェックしてきたというお買い物好きのマリア。この日は買ったばかり40年代のヴィンテージのワンピースをキュートに着こなしてのインタビューとなった。
生きていると、「知らなければよかった」と思うことがあります。そしてその「知ってしまった」という現実を後悔してしまうのは、もはや知らなかったときの自分に戻れないから。ましてや知りたくなかったことが、愛する人の“隠された過去”だったら、私はいったいどう受け止めるのだろう? うーん、愛と暴力で自分の歴史を築いてしまった夫と、その歴史の渦に巻き込まれる家族の葛藤……愛する人の過去を知ったとき、彼の歴史も含めて変わらぬ愛で包むことなんて果たして私にできるかなぁ。映画を観てだいぶ経つ今でも、この答えを見つけられずにいます。「愛があれば過去なんて関係ないさ!」などと簡単にいかないことを、深く、そしてジワジワと感じさせる作品です。
『ヴィデオドローム』『ザ・フライ』など、人間生理を逆なでする性や暴力を描かせたら右に出る者のいないD・クローネンバーグ監督ですが、今回は彼らしい過剰さやグロテスクさはなりを潜め、バイオレンス・シーンにありがちな派手なアクションや劇的な効果はほとんどありません。強盗に襲われたヴィゴ・モーテンセンは、あたかもご飯を目の前にして箸を持つように、人間を前にして銃を撃ちます。しかし、正当防衛だろうが犯行だろうが暴力は暴力です。クローネンバーグの乾いた描写は暴力の本質を淡々と見せつけます。ラストの問いかけるようなヴィゴの目、それを受けるマリア・ベロの顔…。責めることはできない、でも許すこともできない。その正直さこそが愛なのではないでしょうか。
『LOTR』三部作での英雄的イメージが色濃く残るヴィゴ・モンテーセンだが、本作で彼は苦悩と悲哀に満ちた過去を秘める主人公を、怪演とも言うべき表情、存在感で演じきっている。家庭的な父親として片田舎のダイナーを切り盛りする姿は、一見幸せの理想像に見えるが、その横顔に一寸の闇を感じさせるのは、鬼才と呼ばれる監督の演出を超え彼の演技がシーンに溶け込んだ結果だろう。作品のテーマはとても深い。観賞を終えると僕は少し悩んだ。暴力がえぐり出す本当の痛みとは? 銃弾、返り血、強盗、殺人…ひどく明らかに描かれた風景に惑わされてはいけない。たとえば、許し難い罪を隠し続けるということ。あなたのなかに在る歴史が、この映画に暴力を感じさせるだろう。
いい。この映画はとってもいい! 『君とボクの虹色の世界』は、人と人との直接的な関わりが希薄になってく現代だけれど、実はパソコン、携帯電話、TVの向こう側にも、必ず人間がいる…そんな希望を抱かせてくれる、とってもキュートな作品です。カラフルで華やかなヴィジュアルいっぱい、かわいいシモネタも満載で、なかなかアート系の根性を感じさてくれているこの作品。どんな人が作ったのかと思いきや、監督はデザイン、映像、執筆など、ユニークなクリエイティブ活動が話題の女性アーティスト、ミランダ・ジュライ。ポスト・ソフィア・コッポラと呼ばれている彼女だけれど、“キミボク”で長編監督デビューを果たしたおかげで、ますますその呼び声が高まっています。
オスカー女優のシャーリーズ・セロンが、新作『イーオン・フラックス』を引っさげて来日した。セロンの来日は『ミニミニ大作戦』以来3年ぶり。本年度のオスカー(日本時間6日)でプレゼンターをつとめたセロンはその翌朝には来日の途につき、自身のアカデミー賞受賞(『モンスター』)後としても初の来日となった。
『マトリックス』シリーズで世界を驚愕させたアンディ&ラリー・ウォシャウスキー兄弟とジョエル・シルバーが再び手を組み世界に放つ、『V フォー・ヴェンデッタ』。恐怖政治に支配された近未来の英国を舞台に、独裁者から人々を解放しようとする仮面の革命家“V”と、彼に共感し行動を共にしていくヒロインが、壮絶な戦いを繰り広げる様を描いたサスペンス超大作だ。待望の日本公開は4月29日。それにさきがけ、2月半ばには主演のナタリー・ポートマンが来日し、都内のホテルで記者会見を行った。
最近はニュースを憂鬱になるような話題ばかり。もうすぐ春が来るというのに、こんなことじゃいけません! そこで、3月のコラムでは、元気を運んで来るような“幸せになれる映画”をご紹介。満開の桜を待つように、心をうきうきさせてくれる取って置きの作品、その1本目は、『プリティ・ウーマン』『プリティ・ブライド』のゲイリー・マーシャル監督が、新ロマンティック・コメディの女王ケイト・ハドソンを迎えて完成させた『プリティ・ヘレン』。ファッション業界で活躍する敏腕モデル・エージェントのヘレンが主人公です。華やかな業界で忙しい毎日を送っていた彼女が突然直面した姉の死。そして、子育てとは無縁だった彼女が、姉が遺した3人の子供たちと共に、新しい生活の中で成長していく姿を追っていきます。