しゃきっと腰のある江戸前木綿豆腐と、柔らかい上方豆腐。京で修行を積んだ永吉と江戸っ子のおふみ。若い2人が出会い、深川の長屋に豆腐屋・京やを開く。初めは売れなかった永吉の豆腐だが明るく気丈なおふみの努力で次第に客もついてくる。やがて栄太郎、悟郎、おきみという3人の子供にも恵まれ、小さいながらも京やには幸せが満ちていた…。 原作は、いまや平成の時代小説界の第一人者となった山本一力の直木賞受賞作品。市井に生きる名もない人たちの様々な生き方を通して慈愛と人情、家族の絆と再生をテーマに描いて多くのファンを集めている山本一力。映画化に全力を注いだのは、2003年映画監督業からの引退を宣言した『梟の城』『少年時代』などの名匠篠田正浩。荒々しい事柄が日々重なり続く現代に失ってはならない大切なものを描いた、永遠に心に刻まれる本物の感動作。
浜本正機