中学校の非常勤教師をしている青地(つぐみ)は、このごろ学校に行くのがおっくうになり、いくら寝ても寝不足の感じが抜けない。長く付き合い過ぎた彼氏(山本浩司)との会話は上滑りし、好きだという気持ちも、既ににおぼろになっている。繰り返し見続けるのは、記憶とも妄想ともつかぬ、奇妙な夢。どうも、何かが変だ。職員室で面長の同僚教師・野口(西島秀俊)が、自分の顔のことは棚に上げて、青地の顔を「だんだん膨らんでいる」と笑い出し、帰宅すれば、トイレに貼った猫の写真が、何か言いたげにこちらを見ている。そこはかとない現実への違和感が、次第に青地の心を占め始める…。冬の淡くうつろう光を狙い、足掛け2年の歳月をかけて撮影された映像詩。恐ろしいほどに美しい心象風景が、人の孤独や情感といった心象風景を浮き彫りにする。
七里圭