100年前、単身ニューヨークへ渡り、コロンビア大学大学院で日本人女性初の心理学博士号を受けた女性がいた。彼女の名は、原口鶴子。帰国し、これからというときに志半ばの29歳という若さでこの世を去るも、彼女が残した精神疲労の研究、国際性、自立の精神、新しい夫婦像は、その後、日本で起こった女権運動に影響を与えた。帰国後、死を迎えるまで前向きに活動を続けた鶴子は、「楽しき思い出」という一冊の留学記を残した。鋭い観察眼と自己実現に燃える女性の瑞々しい感性で、100年前の留学の様子を細かく記したその留学記を基に、原口鶴子の残した足跡を辿る。
泉悦子