“小さなヴェネチア”と呼ばれる、ラグーナ(潟)に浮かぶ美しい漁師町キオッジャ。中世さながらの建物が並び、石橋、石畳、様々な漁船が行き交う運河、漁具を担ぐ男たちの姿など、素朴な雰囲気をもった漁港の町である。そこに佇む小さな酒場“オステリア”には毎晩のように地元の男たちが集まり、町で生きる人々の心の拠りどころになっていた。そんなオステリアで出会った、シュン・リーとべーピ。異国の地からやってきた二人はお互いの孤独を美しい詩を通して分かち合い、次第にかけがいのない大切な存在となっていく。しかし、二人の交流は小さな町にさざ波を立て、シュン・リーは自身の未来のためにある決断をするのであった―。
アンドレア・セグレ