坂の上の団地に住む長崎大学3年生の門田清水は、父母と平凡だが幸福な日々を過ごしている。ある日、母とケンカしたその夜、母が心臓発作で亡くなった。あまりの突然の出来事に、清水はその死を受け入れられない。母からの電話を無視した罪悪感に押しつぶされそうで、言いそびれた「ごめん」を言葉にすることもできなかった。一方、高森砂織はまもなく娘の一周忌をむかえるが、一人娘を失った悲しみを癒せないでいる。ある日、砂織の妊娠が発覚する。また子供を失うのではないかという恐怖と、生みたいという思いで混乱する砂織。2人は共に大切な人を亡くしたことを知り、互いに欠けたものを求めるように心を通わせるーー。
日向寺太郎