雄大なパタゴニアの自然を背景に、クライミング界の“若き天才”デビッド・ラマが、世界一登頂が困難とされる“セロ・トーレ”の悪名高き南東稜に挑む。この花崗岩の尖塔をフリークライミングで登頂した者は、未だかつて存在しない。そして今、その第一人者に名乗りを上げたのが、デビッド・ラマとそのパートナー、ペーター・オルトナー。自然の条件やロジスティカルな面での困難に直面しながら、デビッドは自らの挑戦における真の本質を見出すようになり、山頂に辿り着く為に不可欠なものに気付き始める。山を登る行為、仲間との絆、そして変化をテーマとした本作は、一人の人間が成長していく姿を映しながらも、ロッククライミングとアルピニズムの在り方を捉え、それらが持つ多くの哲学及び倫理的問題に迫っていく。
トーマス・ディルンホーファー