市子が少女の頃に想いを寄せていた人は、今では国際的な画家となっていた。彼の個展の記事を目にした市子は、秋深まる軽井沢へと旅立つ。思い出の一枚の絵を求めて…。一方、旅に出た母を気にかけ、後を追う息子の進。だが進はまだ知らない、着物の仕立てをしながら、戦後の貧しさの中で、心に封印した若き日の母の想いを…。軽井沢で人のぬくもりに触れ、やさしくほどけてゆく市子の心。そんな市子に思いがけない出逢いが訪れる…。
中みね子