京都郊外にある正倫女子大学は、校母大友女史の奉ずるいわゆる良妻賢母型女子育成を教育の理想とし、徹底した束縛主義で学生たちに臨んでいた。七つの寮に起居する学生たちは、補導監平戸喜平、寮母五条真弓などのきびしい干渉をうけていた。姫路の瀬戸物屋の娘である新入生の出石芳江は、三年程銀行勤めをしたのちに入学したせいか、消燈時間の禁を破ってまで勉強しなければほかの学生たちについて行くことが出来ず、その上、同郷の青年で東京の大学に学ぶ恋人下田参吉との自由な文通も許されぬ寮生活に苦痛を感じていた。
木下恵介