重い持病を抱え、ただ“生きていること”だけを求められて生きてきた高校2年生の由希は、ある日、海岸で麻希と運命的に出会う。男がらみの悪い噂に包まれた麻希は周囲に疎まれ、嫌われていたが、世間のすべてを敵に回しても構わないというその勝気なふるまいは由希にとっての生きるよすがとなり、ふたりはいつしか行動を共にする。ふと口ずさんだ麻希の美しい歌声に、由希はその声で世界を見返すべくバンドの結成を試みる。一方で由希を秘かに慕う軽音部の祐介は、由希を麻希から引き離そうとやっきになるが、結局は彼女たちの音楽作りに荷担する。しかし由希、麻希、祐介、それぞれの関係、それぞれの想いが交錯し、惹かれて近づくほどに、その関係性は脆く崩れ去る予感を高まらせ――。
塩田明彦
塩田明彦