コロナ「禍」が徐々に現実のものとなり、まだ非常事態宣言が出されていなかったころ。壮年の舞台俳優の大谷は、役者仲間である良太と草野を伴ってある川原へと稽古に来ていた。「三密」を避けて練習できる場所が他になかったからだ。いつもと違う勝手にとまどう三人の会話はどこか滑稽ではあるが、内心これからへの不安と焦燥が隠し切れない。大谷が苦悩しつつも生み出した新たな演劇の形「ドクゲキ」。待ちに待った劇場での公開に合わせるかのように発令された「非常事態宣言」。『果たして自分たちは役者であることを続けられるのかーー』
沖正人